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DATE/ 2020.12.20

コロナ禍で業績を落とした企業・伸ばした企業

 新型コロナウイルスの影響はさまざまな方面に波及しています。これまで私たちの日常は大きく変化してきました。また企業にもさまざまな影響が出ています。大ダメージを受けている企業がある一方で、好業績となっている企業もあります。何が明暗を分けているのでしょうか。少し詳しく見てみましょう。

「飲食」「旅行」は大きく減益

 まず、大きな打撃を受けている企業は、「飲食業」「旅行業」や「宿泊業」などがあげられます。「飲食業」ではチェーン店が軒並み閉店しています。たとえばワタミは2021年3月期中に114店を閉店します。当初は65店の閉鎖にとどめる計画でしたが、状況が長引いていることから対象を拡大しています。「旅行業」のエイチ・アイ・エスは、2020年10月期第3四半期(2019年11月1日~2020年7月31日)の連結業績は前年比30.2%減。同社が運営するハウステンボス(長崎県佐世保市)の売上高は47.1%減となっています。

 また社員のボーナスが激減している企業や希望退職を募る企業も出てきました。たとえばANAホールディングスの2020年4月~9月期の売上高は前年同期比72.4%減、営業利益は2809億円の赤字(前年同期は788億円の黒字)となっています。同社は定年退職による自然減や希望退職などとあわせ、2022年度までに3500人程度の要員削減を見込んでいます。さらに400人以上の社員をグループ外の企業に出向させます。実際に家電量販店のノジマは、航空大手2社からの出向を受け入れています。ANAからは32人、JALからは125人が研修に参加しています。これらの出向者は、研修ののちノジマの店舗やコールセンターなどで働くとのことです。

「巣ごもり」と「非接触」は好調

 ノジマは「巣ごもり需要」によって好調です。不調の航空業界から従業員を受け入れることで人材確保につなげる狙いがあります。ほかにも好調の企業はあります。たとえば任天堂。2020年11月5日に発表された4月から9月の中間決算では、売り上げは前年同期比で73%増の7695億円。さらに最終利益は3.4倍の2131億円。中間期として過去最高を記録しています。好調を支えるのは「あつ森」とのこと。「あつ森」とはアバターを使ったシミュレーションゲーム「あつまれどうぶつの森」。自分好みの島をつくって暮らしを楽しむものです。

 これを楽しめるゲーム機「ニンテンドースイッチ」と「ニンテンドースイッチライト」は、4月から9月の半年間で1253万台が販売され。2017年の発売以降、累計販売台数は6830万台となりました。これは1980年代に一世を風靡し、テレビゲームというジャンルを築き上げた「ファミリーコンピュータ」の6191万台を上回っています。最終利益も過去最高が見込まれているようです。

 自転車の部品や釣り竿のリールなどの部品を製造するシマノも好業績です。シマノは自転車部品での世界シェアは7割から8割を占めています。2020年1月から9月末までの決算では最終利益は前年同期比で10.4%増。また、1年間の業績予想もおよそ10%上方修正しています。これは世界的に電車やバスでの通勤・通学を避けて自転車を使う人が増えたことによるものだそうです。

 こういったことから同社の株価は上場以来の最高値を更新し、なんと時価総額で日産自動車を抜いたとのことです。ほかにもGAFAなどIT企業はどこも好調です。人との物理的接触を避けて仕事をしたりするには、IT機器や通信技術といったものは必須ということから理解できます。

マクドナルドの客単価は45.3%増

 意外なのはマクドナルド。外食産業は軒並み業績が悪化していますが、マクドナルドは例外的に好業績となっています。2020年6月にはいって発表された5月の売上高は前年同月比で15.4%増。客数は20.7%減となる一方、客単価は驚きの45.3%増となっています。

 これはほかの外食チェーン店が軒並み開店できなかった状況で、営業を継続できた点にあるようです。感染の拡大を防ぐために非接触が求められていますが、マクドナルドは、ほかの客と接触せずに商品を買うことのできるドライブスルーがあります。また、アプリで注文、キャッシュレス決済、番号で商品を受け取るといったIT化も進めてきました。こういった方策により、非接触が求められた今回の事態にうまく対応できたようです。

カギは「レジリエンス」

 大阪大学准教授の中川功一さんは、現代ビジネスの記事の中で「レジリエンス」という言葉で説明しています。マクドナルドは2010年代に効率化だけを優先させて品質の劣化を招きました。こうして異物混入問題などを引き起こした反省から、効率一辺倒ではなく変化に柔軟に対応する危機対応能力を身に着けたとのことです。

 「レジリエンス」とは危機対応能力のこと。「何か問題が起こった時に立ち直れる精神的なタフさや、気持ちの切り替えの力」と説明されています。このために大事なのは「代替プランの準備」といったことです。マクドナルドは店舗内での飲食が難しくなったとき、それまで維持してきたドライブスルーやモバイルオーダーが生きました。また、余力を残しておくことも大事だと述べられています。「レジリエンス」はウィズコロナ時代の一つのキーワードなのかもしれません。

<参考サイト>
・ワタミ、21年3月期中に居酒屋114店閉店へ 対象を追加|日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66223720T11C20A1TJC000/
・HIS決算、旅行事業の売上高33%減、営業損失は120億円に、エネルギー事業の売上げは増加  ー2020年10月期第3四半期|トラベルボイス
https://www.travelvoice.jp/20200927-147162
・赤字のANA、「人員&航空機削減」でも正念場の訳 旅客数が大幅減少、上期は2809億円の赤字に|東洋経済ONLINE
https://toyokeizai.net/articles/-/388569
・生き残りをかけたANA「400人出向」 左遷でなく“将来有望”のチャンス?|#SHIFT
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2011/13/news013.html
・ノジマ、JAL・ANAからの受け入れ者向けに研修|日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66261080W0A111C2H52A00/
・コロナ禍で好業績のワケとは?│NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20201106.html
・マクドナルドが、コロナ時代に「驚異の一人勝ち」を続けているワケ|現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73440?imp=0

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