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DATE/ 2021.01.17

意外と知らない日本発祥の商品とは?

 世界三大発明といえば、「活版印刷技術」「火薬」「羅針盤」、いずれも源流は中国ですがルネサンス期にヨーロッパで改良・実用化され、世界地図を塗り替えるほどの影響があったと言わしめたものです。

 それでは日本生まれの発明品で世界中に伝播したものはなんでしょう? と、尋ねられると、意外と答えに詰まってしまう方も多いのではないでしょうか。あの食べ物からこんな日用品、電子機器まで広がるフロムジャパンをご紹介します。

日本発信の世界を席巻する「食」といえば

 今や世界中で食べられている「カップヌードル」は日清で作られました。パッケージ、調理器具、食器の役割をひとつではたせる機能性は天晴れの一言、見事世界に受け入れられ、その土地の食文化に合わせた御当地カップヌードルは今日も愛されています。ちなみに日本でカップヌードルがヒットしたきっかけのひとつが浅間山荘事件。立て籠もった連合赤軍のメンバーと戦う機動隊員たちがカップヌードルを食べている姿が全国中継されて問い合わせが殺到、今風にいえばバズったとか……何が幸いするかわからないものです。

 同じく調理器具要らずの「パンの缶詰」は焼きたての美味しさがキープされている非常食として名を馳せています。株式会社パン・アキモト社長の秋元義彦氏が開発し、最長3年間の保存を可能にしました。きっかけとなったのは阪神淡路大震災、被災地にパンを届けたところ日持ちしないために傷んでしまい処分されてしまったことを端に、長期保存できるパンを作ろうと着手されたそうです。なるほど「必要は発明の母」、自然災害大国である日本ならではの発明ですね。

 実に日本の食文化は奥が深い、リッチなものからリーズナブル、非常食まで美味しいね、なんて暴飲暴食を重ねていると弱ってしまうのが胃腸です。そんな人がお世話になる「胃カメラ」は1952年オリンパスが開発・実用化に成功しました。人体の中を直接覗いて治療したいという希望は古代ローマの頃から考えられていたそうです。実用に至るまで長い道のりと各国の多くの研究者の努力があったのですね。

世界中で使われているIT文化の先駆けとなった「写メ」

 ノマドワーカーならずとも手放せないオフィスの必須アイテム、ノートパソコンは東芝が世界に先駆け1989年に発明、完成させていました。うーん、現在の日本のIT業界の立ち遅れからはちょっと想像し難いレベルの先見性ですね。
 
 また、世界中で使われている携帯電話に当たり前についているカメラ機能、こちらもスタートさせたのは日本です。2000年にJ-PHONE(現ソフトバンク・モバイル)が搭載させ「写メール」を開始、現代のインスタグラムにつながる新たな文化を生み出しました。

 そんな携帯電話を動かすのに欠かすことのできないリチウムイオン電池は1985年旭化成の吉野彰氏が発明し、1991年にSONYが携帯電話に利用できるよう実用化しています。その電池の先祖ともいえる乾電池は1887年、明治の頃に在野の発明家、屋井先蔵氏が発明、当時一般的だった液体電池を改良したのが始まりです。しかし残念なことに、屋井氏は資金不足から特許を得ることが叶わず、世界初の乾電池の発明者の栄誉を得ることができなかったのです……

日本発の遊び、「オセロ」から「ボーカロイド」まで

 日本で生まれた遊びというとファミコンを想像してしまう人も多いかもしれませんが、元祖テレビゲームの発祥の地はアメリカです。それでは日本発案のゲームは何かといえば、お年寄りから子供まで白黒つけて楽しめる「オセロ」になります。名前からしていかにも海外っぽいと思われがちですが、こちらを考案したのは長谷川五郎氏、1973年に発表して以来大ヒットしました。名前の由来はシェイクスピア劇の『オセロ』だそうで、状況や人間関係が目まぐるしくひっくり返ることから名付けられたとか。

 コロナが流行ってからはすっかり足を向けにくくなってしまった「カラオケ」も日本スタートの遊び文化です。が、詳しい発生起源がわかっておらず、音楽業界では「伴奏だけを録音したテープ」を「空のオーケストラ」すなわち「カラオケ」と呼んでいたことまではわかっています。 
 屋外型のカラオケボックスは1985年岡山県にて誕生、なんと船舶用のコンテナを改造して作られており、音漏れがしないところが受けたとか。

 そして時代が進むと歌うのは人間ばかりではなく、機械の歌手に作詞・作曲・プロデュースして世界中に大ヒットを飛ばすことさえ、夢物語ではなくなってきました。そんな誰もがプロデューサーになれるのを可能にしたのが歌声合成技術、「VOCALOID(ボーカロイド)」です。ヤマハが2004年に製品化しました。誰もが知っている「初音ミク」はデジタルの歌姫として人気を博し、彼女の楽曲をプロデュースして名をあげた人の中には『パプリカ』で御存知米津玄師氏などがいます。デジタル歌姫たちの楽曲は国境を超えて新しい共通言語のように今日も世界のどこかで楽しまれていることでしょう。

 ご覧いただいたように、身の回りにある欠かせない品々のルーツは日本というのは多岐に広がっています。願わくば、このような新しい発明が、日本ならず世界の文化・経済を元気にしてくれる日が来て欲しいものですね。

<参考サイト・参考文献>
『日本の発明・くふう図鑑』発明図書編集委員会編著 岩崎書店
『30の発明から読む日本史』池内了監修 日経ビジネス文庫
『知ってた? 実は日本発祥だった飲み物、文具、スポーツ』LIVE JAPAN PERFECT GUIDE
https://livejapan.com/ja/article-a0003990/
『【電子産業史】1989年:世界初のノート・パソコン』日経XTECH
https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20080807/156210/?rt=nocnt

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