為末大氏に聞くキャリア転換成功の秘訣とは
「人生100年時代」といわれる現在、55才から64才まで、つまり「定年」という現実問題にもっとも近い、いわゆるミドルシニア層の意識調査では、「定年後も働きたい」と回答した人が約6割になるそうです。一方、近年は「一度入社したら、そこで定年まで勤め上げる」という考え方が薄れてきました。また、長い人生をより充実したものにするためにも、40才、あるいは50才でうまくキャリア転換したいという意識も高まっていると聞きます。
そこで今回、キャリア転換という観点から参考にしたいのがアスリートです。肉体を酷使するアスリートは種目にもよりますが、人生の比較的早い段階で選手としての現役生活を退き、その先の「第二の人生」にキャリア転換しなければならないケースがほとんど。ではその後の人生を豊かにするためにどうすればいいのか。キャリア転換のポイントを、男子400メートルハードルの日本記録保持者(2020年11月現在)で、オリンピックにも3大会連続出場を果たした為末大氏(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事)のお話から探ってみます。
そこで為末氏がすすめているのは、異分野の友人を持つことです。普段から自分の専門領域のことを異分野の友人にも分かるように「それはたとえば、こういうことだよね」と具体的に言語化して説明するトレーニングになるからです。これはスポーツの人だけに限りません。ビジネスマンの場合、社外の人、他の業界で働いている人などとのつきあいを広げてみるとよいでしょう。
営業マンなら、例えば自分が営業のなかで関わってきたのはどんな局面なのか、あるいは自分はどんな状況や局面が得意なのかなど、会社名や製品名、専門用語などを使わず、一般的な言葉で表現してみる。そうすると、自分の具体的な特徴が浮かび上がってくるという利点もあります。それは、そもそも自分がどんな仕事に向いているのか、本当にしたいことは何なのか、といった本質的なことを見つめる良いきっかけにもなります。そうなると、セカンドキャリアの選択肢も増え、自分の可能性を広げていくことにもつながってくるのです。
スポーツ選手でもオリンピックに行くようなレベルにあった選手は、キャリア転換において、このプライドの面で大分苦労するといわれています。「外から見られている自分の姿」を意識してしまうからです。絶頂期にあった過去の自分と現在の自分とのギャップを受け止めきれず、落ち込んでしまうこともあるといいます。
為末氏は、プライドのコントロールのためには「自分が今までやってきたことをなかったことにする」という思いきったリセットをすすめています。そのとき「ゼロから始めるのだ」と肚をくくるわけですが、たとえゼロからの再出発でも、実はそこから上昇するスピードや角度はかつての新人時代と比べても格段に上がっているはず。この点が「キャリア」の強みなのです。
ちなみに、高齢者のサークルや施設の利用者のなかで、もっとも嫌われて誰からも相手にされないのは、昔の仕事の自慢話しかしない人だとか。キャリア転換も、より充実した人生を送るためにも、言葉の使い方はとても重要ということですね。
そこで今回、キャリア転換という観点から参考にしたいのがアスリートです。肉体を酷使するアスリートは種目にもよりますが、人生の比較的早い段階で選手としての現役生活を退き、その先の「第二の人生」にキャリア転換しなければならないケースがほとんど。ではその後の人生を豊かにするためにどうすればいいのか。キャリア転換のポイントを、男子400メートルハードルの日本記録保持者(2020年11月現在)で、オリンピックにも3大会連続出場を果たした為末大氏(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事)のお話から探ってみます。
自分のキャリアを言語化することから始めよう
為末氏は、キャリア転換に踏み出す前段階としてまず「言語化する」ことを挙げています。「言語化する」とはどういうことかというと、自分のキャリアや能力、仕事内容について、仲間や同分野に詳しい人ではなく、異分野、専門外の人にも分かるような言葉にして伝えるということです。そのためには、自分のやってきたことを一旦整理して抽象化し、普遍的な言葉に言い換える必要があります。キャリア転換する場合、今までと全く同じ業界、関連の職種に再就職できるとは限りません。これまで積み上げてきたキャリアが他の業界でどう通用するのか、そこをアピールできるようにするといいということですね。そこで為末氏がすすめているのは、異分野の友人を持つことです。普段から自分の専門領域のことを異分野の友人にも分かるように「それはたとえば、こういうことだよね」と具体的に言語化して説明するトレーニングになるからです。これはスポーツの人だけに限りません。ビジネスマンの場合、社外の人、他の業界で働いている人などとのつきあいを広げてみるとよいでしょう。
「言語化」によって広がる自分の可能性
先述の「言語化」に関して補足すると、できる限り自分のやってきた領域の言葉を使わないように意識するのも重要だと為末氏は言います。営業マンなら、例えば自分が営業のなかで関わってきたのはどんな局面なのか、あるいは自分はどんな状況や局面が得意なのかなど、会社名や製品名、専門用語などを使わず、一般的な言葉で表現してみる。そうすると、自分の具体的な特徴が浮かび上がってくるという利点もあります。それは、そもそも自分がどんな仕事に向いているのか、本当にしたいことは何なのか、といった本質的なことを見つめる良いきっかけにもなります。そうなると、セカンドキャリアの選択肢も増え、自分の可能性を広げていくことにもつながってくるのです。
プライドをうまくコントロールすることの重要性
もう一点、キャリア転換のポイントがあります。それはプライドをうまくコントロールすることです。新しい仕事に就いたら誰もが新人。年下の上司のもとで働くといったことも大いにあり得ます。前職の肩書きや名刺にこだわるようなプライドとは決別することが大事だということです。スポーツ選手でもオリンピックに行くようなレベルにあった選手は、キャリア転換において、このプライドの面で大分苦労するといわれています。「外から見られている自分の姿」を意識してしまうからです。絶頂期にあった過去の自分と現在の自分とのギャップを受け止めきれず、落ち込んでしまうこともあるといいます。
為末氏は、プライドのコントロールのためには「自分が今までやってきたことをなかったことにする」という思いきったリセットをすすめています。そのとき「ゼロから始めるのだ」と肚をくくるわけですが、たとえゼロからの再出発でも、実はそこから上昇するスピードや角度はかつての新人時代と比べても格段に上がっているはず。この点が「キャリア」の強みなのです。
ちなみに、高齢者のサークルや施設の利用者のなかで、もっとも嫌われて誰からも相手にされないのは、昔の仕事の自慢話しかしない人だとか。キャリア転換も、より充実した人生を送るためにも、言葉の使い方はとても重要ということですね。