テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.06.02

突然の退去勧告?介護施設の退去要件とは

 年々進む高齢化にともない、介護施設のトラブルも増えている昨今。特に多いものに退去の問題があります。双方納得できる形であればよいですが、「突然、退去勧告があって戸惑っている」「退去しようにも行き場がなく、どうすればいいかわからない」などといった声もあるようです。

 そこで今回は、介護施設の退去要件についてまとめてみました。

退去要件とは何か

 退去要件とは、入居者の退去を求めるための介護施設が定めた一定の条件のことです。介護施設は終身契約(死亡するまでの入居を保証)ではないので、施設または入居者になんらかの問題が発生した場合、施設には入居者に退去を求める権利が認められています。とはいえ退去要件は病状の悪化など、やむを得ない事情によるパターンがほとんどで、入居者に不利になるような退去要件は原則認められません。

 以下に、主な退去要件についてご紹介します。退去要件は施設によって異なりますので、入居前に必ず確認しておきましょう。

施設側から退去を求められる事例とは

【case.1】入居者が死亡した場合
 当然ですが、入居者本人が亡くなった場合は退去となります。

【case.2】体調が悪化し、日常的に医療行為が必要となった場合
 もっともよくあるケースです。基本的に介護施設は「介護を主体とした」生活の場なので、医療の依存度が高くなりすぎると通常の介護ではカバーしきれなくなり、退去要件に相当する場合があります。医療スタッフが常駐している施設もありますが、それでも日中のみで夜間は非対応、といったパターンもありますので注意が必要です。

 たとえ入居時に健康状態が良かったとしても、入居後に体調が急変する可能性はあります。どの程度まで医療依存が認められるかは施設によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

【case.3】体調が良くなり、介護の必要がなくなった場合
 case.2の逆です。特別養護老人ホームの場合「要介護度1以上」が入居条件となりますが、介護認定の更新時に「要支援」程度になれば退去を求められる可能性が高くなります。

【case.4】長期入院を余儀なくされた場合
 短期の入院であればまず大丈夫ですが、90日~3ヶ月以上の長期入院となった場合は退去要件に相当するでしょう。ただし、月額利用料を支払えば退去しなくてもいい場合があります。

【case.5】入居条件で有利になるよう、契約書に虚偽の記載をした場合
 特に多いのが、健康状態や認知症の進行の程度を正しく申告しなかったケースです。虚偽が判明すると契約違反となりますので、強制退去は避けられないでしょう。

【case.6】利用料を滞納した場合
 入居する場合はあらかじめ、本人の経済状態のチェックがなされますが、当然入居後に経済状態が悪化する可能性があります。滞納したからといってすぐに退去させられるわけではありませんが、何度督促されても支払われない場合は退去勧告となります。

【case.7】スタッフやほかの入居者に対する迷惑行為、危険行為があった場合
 暴力をふるう、暴言を発する、奇声を上げる……など、スタッフやほかの入居者に危害を加える、またはその危険性がある場合は、たとえ認知症の進行によるものだとしても介護の範疇を超えてしまうため、退去勧告となる可能性が高くなります。

 この場合、環境の変化によるストレスや、本人の気質や性格の問題も考えられます。不安な場合は入居前に事前に相談したほうが、何かあった時に施設側も対処しやすくなります。

【case.8】倒産など、施設側の運営に問題が発生した場合
 たとえ健康状態がよく、生活態度に問題がなくても、倒産や経営縮小、経営譲渡など、施設側の運営に問題が発生した場合は退去を求められるケースがあります。

 もし退去勧告に納得がいかない場合、施設への説明を求めた上で、正当な理由かどうかをきちんと見極めましょう。不明な点は行政や専門家に相談し、必要であれば第三者として間に入ってもらうことも検討しておくべきでしょう。

退去が決定!確認すべきことは

【1】返還される費用はあるか確認しよう
 たいていの場合、入居時に「入居一時金」として、あらかじめ入居費を支払うことになっています。退去となった場合、入居期間に応じてその残金が返還されます。いくら返還されるのかは契約書や重要事項説明書に計算式がありますので、確認しておきましょう。

【2】転居先を決めよう
 施設から退去を求められたからといって、即刻退去しなければならないということはありません。多くの場合、退去までの猶予期間(通常は90日ほど)が設けられていて、転居先を施設のスタッフと相談することができます。どうしても見つからない場合は、延長が認められる可能性もあるので、家族やスタッフと協力しながら探しましょう。

 ただし退去勧告を受けておきながら正当な理由なく居続けていると、施設から訴えられてしまう場合もあります。せっかく縁があって住んだ場所ですから、最後までスマートに対応したいところです。

【3】居室の原状回復をしよう
 マンションやアパートのような賃貸住宅と同じで、退去の際は部屋の原状回復が必要です。故意や過失が原因で居室が損傷した場合は修繕費用が発生しますが、住み続けることで通常起こりえる損傷や経年劣化については請求されません。

 いかがでしたでしょうか。介護施設は「終の棲家」という表現をされがちですが、実は退去を勧告されるケースもあるということがお分かりいただけたかと思います。トラブルを未然に防ぐためにも退去要件はしっかり確認しておき、また何かあってもすぐに対応できるよう、日頃から施設スタッフと家族の間でコミュニケーションを取っておきたいところです。

<参考サイト>
介護施設から退去を求められる?介護施設の退去要件・施設退去の事例を紹介!│MY介護の広場
https://www.my-kaigo-home.com/column/226/
退去しなければならない場合│ホームメイト・シニア
https://www.homemate-s.com/useful/nursing_home00073/

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

2024年問題は2024年で終わらない…物流業界の厳しい現実

2024年問題は2024年で終わらない…物流業界の厳しい現実

物流「2024年問題」~その実態と打開策~(1)「2024年問題」とは何か

トラックドライバーの労働時間制限によって引き起こされる物流「2024年問題」。トラック業界に訪れる働き方改革は、5年間の猶予措置を経て、さまざまな問題を噴出させる。中でも注目すべきは、時間外労働の上限規制と改善基準告...
収録日:2024/04/30
追加日:2024/06/18
首藤若菜
立教大学経済学部教授
2

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
3

なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る

なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る

メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか

組織のリーダーにとって、メンバーのメンタルヘルスは今や最重要課題になっている。組織として目標達成が大事であることは間違いないが、同時に一人ひとりの個性を見極め、適材適所で割り振っていく「合理的配慮」も求められて...
収録日:2024/04/17
追加日:2024/06/15
斎藤環
精神科医
4

「三種の神器」ブームの後に来た最大の危機…その予兆とは

「三種の神器」ブームの後に来た最大の危機…その予兆とは

松下幸之助の危機克服~熱海会談の真実(2)最大の危機と予兆

佐久間氏は自身の苦境を乗り越えるにあたり、松下幸之助の「最大の危機」を参考にしたという。それは1964年7月、松下関係者と販売会社・代理店のトップ200名を集めて行われた「熱海会談」である。(2023年12月1日開催日本ビジネ...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/06/17
佐久間曻二
元松下電器産業副社長
5

直観型と熟慮型…2つの思考回路を使い分ける人間の特徴

直観型と熟慮型…2つの思考回路を使い分ける人間の特徴

行動経済学とマーケティング(2)行動経済学を構成する「3つの分野」

行動経済学は、3つの分野で構成されている。「現象の描写」「メカニズムの説明と理論」「実社会への適用」の3つだが、それぞれどのようなものなのか。詳しく解説し、従来の経済学との違いを明確にしていく。(全6話中第2話)
収録日:2024/04/08
追加日:2024/06/13
阿部誠
東京大学 大学院経済学研究科・経済学部 教授