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日本の「タクシー」でよく使われる車種とは
ここ数年タクシーの車種に変動が起こっています。「ジャパンタクシー」と呼ばれる新車種は2017年の終わり頃から少しずつ増えてきました。これまで一般的だったセダンタイプとは異なり、背が高めで丸っこい車です。いったいどういう変化が起きているのでしょうか。ここではタクシーの車種をめぐる状況を整理してみます。
あの「クラウンに乗れる」ということもタクシーに乗る価値の一つだったかもしれません。現在でもクラウンタクシーはたくさん走っています。またタクシー会社も最後のクラウンをストックしているところも多いようなので、もうしばらくクラウンタクシーに乗ることはできそうです。
ではなぜこうした安定した需要のあったクラウンは生産を停止するのでしょうか。大きくは世の需要の変化という他ないようです。現代ではSUVが大人気です。SUVは広い居住空間や車高が高いことによる運転のしやすさといった、実用性が評価されています。さらに、スポーティなデザイン性もあって、軒並み売り上げを伸ばしています。対してセダン市場は縮小傾向です。
クラウンを求めてきた世代は高齢化しています。国内自動車市場は需要の方向性が変わる時期と言えるでしょう。また世界的に展開している車種であれば話は変わってきますが、クラウンは日本市場がメイン。もちろん高級車としてのステイタスや、タクシー車両としての独自の訴求ポイントはありますが、セダン全体が人気を落としている現状では売り続けることはできなかったと考えていいようです。
車両価格が標準グレードで338万5000円とやや高く、車高が高くなった割には、ラゲッジスペースの積載性能は従来のクラウンと変わりません。この点でタクシー会社の中には導入に慎重なところも多いようです。また、ガソリンよりもLPガスの方が安いことからタクシーはこれまでもLPガスを燃料としてきました。しかし、皮肉なことに燃費がよくなり過ぎたことでLPガススタンドの数が減っています。こうした不便があることから、ジャパンタクシーではなくベース車両であるシエンタそのものを、LPガス・ガソリンの両方が使える仕様(バイフューエル仕様)に改造して、タクシーとして使用する会社もあるようです。
それでもタクシー市場はほぼトヨタ車が占めてきました。これはなぜかといえば、市場規模が小さいという点に尽きるようです。さらに、タクシーには一般的ではないLPガスハイブリッドエンジンが求められます。わざわざコストをかけて他社がこのドメスティックな市場に参入するメリットはないといえます。
トヨタクラウンは豊かさの象徴だった
タクシーといえばトヨタクラウン(クラウンコンフォート)というのが定番でした。しかし、2020年11月にクラウンは生産停止が発表されます。クラウンといえば今から65年以上前、1955年(昭和30年)に販売開始されて以来、庶民にとって憧れの高級セダンでした。「いつかはクラウン」のキャッチコピーのもと、豊かになっていく日本の象徴的な車と言ってもいいでしょう。あの「クラウンに乗れる」ということもタクシーに乗る価値の一つだったかもしれません。現在でもクラウンタクシーはたくさん走っています。またタクシー会社も最後のクラウンをストックしているところも多いようなので、もうしばらくクラウンタクシーに乗ることはできそうです。
セダンからSUVへ
クラウンがタクシーとして長年利用されてきた背景には、タクシーとしての改造をディーラーがバックアップしていた点が大きいようです。タクシーは燃料がLPガスであったり、自動ドアを整備していたりといった特別仕様です。また同じ車種であればパーツの在庫も揃えやすいといった事情もあります。また利用者も、クラウンの高級感を感じながら安心して乗ることができました。いわばこれまでは、ある程度需要と供給の体制が一致していたと考えられます。ではなぜこうした安定した需要のあったクラウンは生産を停止するのでしょうか。大きくは世の需要の変化という他ないようです。現代ではSUVが大人気です。SUVは広い居住空間や車高が高いことによる運転のしやすさといった、実用性が評価されています。さらに、スポーティなデザイン性もあって、軒並み売り上げを伸ばしています。対してセダン市場は縮小傾向です。
クラウンを求めてきた世代は高齢化しています。国内自動車市場は需要の方向性が変わる時期と言えるでしょう。また世界的に展開している車種であれば話は変わってきますが、クラウンは日本市場がメイン。もちろん高級車としてのステイタスや、タクシー車両としての独自の訴求ポイントはありますが、セダン全体が人気を落としている現状では売り続けることはできなかったと考えていいようです。
ジャパンタクシー
このクラウンの後継を担う車種としてトヨタが投入しているのが、ジャパンタクシーです。車高が高めのシエンタをベースとして開発され、2017年の終わりに発売されました。車椅子やベビーカーのまま乗降できるスロープがあるなど、乗降のしやすさは特筆すべきポイントです。またブレーキアシストを装備して安全性にも配慮されています。LPガスハイブリッドエンジンを搭載し、燃費性能もJC08モードで19.4km/L、WLTCモードで16.8km/Lとなかなかの低燃費。このように、ジャパンタクシーはこの先のタクシー車両としての筆頭格ですが、ことはそう簡単ではなさそうです。車両価格が標準グレードで338万5000円とやや高く、車高が高くなった割には、ラゲッジスペースの積載性能は従来のクラウンと変わりません。この点でタクシー会社の中には導入に慎重なところも多いようです。また、ガソリンよりもLPガスの方が安いことからタクシーはこれまでもLPガスを燃料としてきました。しかし、皮肉なことに燃費がよくなり過ぎたことでLPガススタンドの数が減っています。こうした不便があることから、ジャパンタクシーではなくベース車両であるシエンタそのものを、LPガス・ガソリンの両方が使える仕様(バイフューエル仕様)に改造して、タクシーとして使用する会社もあるようです。
他のメーカーは参入に消極的
こういったさまざまな理由から現在のタクシー車両には、ややバラエティが生まれてきたと言えるかもしれません。トヨタ車以外にも日産は、数は少ないながらも以前からクルーやセドリックなどの車種をタクシー車両として販売しています。また、2015年(平成27年)には法令が変わり、現在ではどのような車種でもタクシーとして使えるようになっています。それでもタクシー市場はほぼトヨタ車が占めてきました。これはなぜかといえば、市場規模が小さいという点に尽きるようです。さらに、タクシーには一般的ではないLPガスハイブリッドエンジンが求められます。わざわざコストをかけて他社がこのドメスティックな市場に参入するメリットはないといえます。
<参考サイト>
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由|PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/43552
ジャパンタクシー|TOYOTA
https://toyota.jp/jpntaxi/
なぜトヨタばかり? 日産やホンダがタクシー車両に本格再参入しないワケ|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2020/06/539795/
名車「クラウン」があっという間に売れなくなった本当の理由|PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/43552
ジャパンタクシー|TOYOTA
https://toyota.jp/jpntaxi/
なぜトヨタばかり? 日産やホンダがタクシー車両に本格再参入しないワケ|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2020/06/539795/
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