テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.10.03

外国人に日本のコンビニが絶賛される理由

 東京五輪期間中、外国人選手や外国人記者が日本のコンビニについて「日本のコンビニはすごい!」「また来たい!」などと絶賛するSNSが次々と投稿されたことが話題となりました。外国人にとって、日本のコンビニは自国のそれにはない魅力があるようです。

 外国人は日本のコンビニのどんなところに驚き、そして惹かれるのでしょうか?

外国人から見た日本のコンビニのスゴイところ

【1】24時間営業

 なんといっても「いつ行っても空いている」というところに外国人は驚くようです。海外にも24時間営業のお店はありますがごく少数。日本のコンビニのように、昼夜問わず営業しているお店が街のあちこちにあるというのは、非常に珍しいそうです。

 そもそもコンビニの先駆けであるセブン-イレブンも最初から24時間営業だったわけではなく、“朝7時に開店し、夜11時に閉店する”というコンセプトにちなんで名づけられています。24時間営業はセブン-イレブンの発祥地であるアメリカで始まりましたが、治安面などの問題から日本ほど普及はしなかったのです。(※米国セブンは2019年から24時間毎日営業する新ブランド「24/7 LIFE by 7-Eleven」を発表)

【2】高品質

 外国人が日本のコンビニを評価する大きなポイントが、商品のクオリティの高さ。特におにぎりやお惣菜、スイーツといった各社オリジナルのプライベートブランドのフード類は、いずれも安く、おいしく、種類も豊富。「低糖質」「季節限定」といった付加価値のついた商品も増え、「毎回新商品が出るのが楽しみ!」という日本在住の外国人も多いようです。

【3】多様性

 日用品から食品、ホットスナック、お酒まで、日本のコンビニはとにかく品揃えが豊富。それに加え電子レンジやコピー機、宅配、公共料金の支払い、証明書の発行など、サービスも充実しています。「おにぎりを温めてくれるなんて嬉しい!」「突然の雨にも傘やレインコートが売っていて安心」「母国ではコピー屋さんに行かないとコピーできないから便利!」「チケットなど高額の支払いのやりとりができるなんて信じられない」などと、安心かつ配慮の行き届いたサービスに舌を巻く外国人は多数いるようです。

【4】普遍性

 日本のコンビニは日本中どこへ、いつ行っても(地域限定品をのぞけば)おおむね同じ商品、同じサービスを受けられるうえ、スペースがないほど棚に商品が並んでいます。しかも深夜でも安心して利用できるのも魅力。この普遍性こそ、日本のコンビニならでは。カナダの放送局CBCの東京五輪記者が「18時間のオリンピック報道が終わった午前2時10分の東京でもお店が開いている!棚の在庫は充分だよ。何て素敵な場所だ!」と驚きをもってTwitterに投稿し、7000以上リツイートされて話題となりました。

 このように、海外から見ると日本のコンビニはいいことずくめのようですね。

“日本流”のコンビニ、海外では難しい?

 これほどまでに絶賛される日本のコンビニ。しかし海外でそのまま“日本流”のコンビニを出店しようとしても、一筋縄ではいかないとされています。その大きな要因は、文化や商習慣、就労意識の違いです。

 たとえば車社会のアメリカやオーストラリアでは、コンビニといえばたいていガソリンスタンドに併設されるコンパクトなもの。酒類の販売はもちろん、日本ほど品揃えを充実させるのは困難だといわれています。

 ヨーロッパでは24時間営業そのものが禁止されている国が多いほか、キリスト教の「安息日」である日曜日は休むという文化が根付いているため、日本のコンビニらしい「いつでも買い物できる」という利便性はあまり求められません。

 中国やタイなどのアジア圏では徐々に日本でもなじみのあるコンビニが増えてきましたが、現地の商店や地場チェーンの勢いが強いほか、ターゲットとなる若者が住む場所は賃料がかさむため、体力のない店舗はうまくいきづらいというのが現状。コンビニ大手ローソンも、中国へ進出してから実に25年かけてようやく黒字化したというほどです。

 また日本は先進国の中でもとりわけ労働賃金が低く、そのぶん低価格の商品や無料のサービスが成り立っているという側面から、賃金の高い欧米で日本流をそのまま輸出するのはほぼ不可能だという意見もあります。

 コンビニは日本ではすでに寡占状態。それゆえ各社海外出店を目指すのは当然の流れといえますが苦戦は必至で、安定して利益を出すための打開策を各社模索しているというのが現状のようです。そのような中でコンビニ最大手のセブン-イレブンは、海外を含めた店舗数が2020年12月に世界で7万店を突破したと発表。同じく大手のファミリーマートやローソンも海外出店の目標数を設定しており、今後も積極的に海外へ打って出る方針です。

 日本と海外のコンビニ事情、今後も注視していきたいところですね。

<参考サイト>
東京五輪、日本のコンビニが外国人から絶賛される―台湾メディア│Record China
https://www.recordchina.co.jp/b880369-s25-c30-d0052.html
世界のコンビニが日本と違うって本当?コンビニ文化と役立つ英語フレーズ│レアジョブ英会話「English Lab」
https://www.rarejob.com/englishlab/column/20210707/
日系コンビニ苦戦 インドネシアで「3つの壁」│日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDX22H3B_U6A220C1FFE000/

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味

国民に求められる外交感覚とは?陸奥宗光の臥薪嘗胆の意味

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(3)「内政と外交」と持つべき外交感覚

「内政と外交」――これはまさに切っても切れない大事な関係にある。外交とは、国際関係ばかりに気を遣っていればいいのではなく、海外の声をききながら国内の声にも耳を傾けることが重要だと小原氏は述べる。まさに内政が大事で...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/19
小原雅博
東京大学名誉教授
3

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ

トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン

アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
4

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
5

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授