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DATE/ 2015.08.04

ちょっと待って!正しいと信じているソレって本当??

 安保法制、TPPイスラム国、新国立競技場、中国株の下落、ギリシャ危機戦後70年談話など、話題の尽きない日々が過ぎていく。ただ漫然とニュースに触れているだけでは本当のことは見えてこない。

 昨日まで、自分が信じていたことが覆されることも少なく無い。新聞各社の報道をみても、一つの話題に対してさまざな立場をとっていることがわかる。一体どれが正しくて、どれが間違っているのか、疑問に思うことはないだろうか?

 慶應義塾大学大学院教授で政治学者の曽根泰教氏に「正しさ」の根拠について語っていただいた。

 真偽を議論するのが科学の基本だが、一般的にわたしたちは「正しさ」というものをもっと表面的なところで判断している。あまりにも簡単な理由で「正しい」と思ってしまいがちである。

・教科書に書いてあるから「正しい」
・新聞に書いてあるから「正しい」
・偉い人が言っていたから「正しい」
 こんなふうに、意外と簡単に信じてしていないだろうか?

 これはとても危険なことでもある。

 自分で実験したわけではないし、たくさんの意見に触れてそこから自分なりの結論を出したわけでもない。それなのに簡単に信じてしまっていたりする。

 「正しさ」を信じている状態とは、その実証性よりも「その理論を使うと世界はこのように見える」という状態を指していると考えてはいかがだろうか。

 「あくまでもひとつの見方なのだ」と、みんなが認識しておくことで、トラブルを未然に防いだり新しい発展につなげていくことができるだろう。

 しかし「正しさ」に対しての態度が、信仰、宗教の世界に及ぶケースは簡単にはいかない。「自分の信じる神の言うことが正しく、信じていないことは一切を否定する」というような極端な価値体系におちいってしまうこともあるからだ。

 近代の歴史の歩みは、政治(国家)と宗教を分ける、いわゆる「政教分離」を根本におき、他者を認め尊重する、という解決方法を見出してきた。

 そこに至るには多くの困難がともない、長い時間を要してきた。宗教的理念に基づく「正しさ」と世俗の「正しさ」とは、もともと大きく異なっているからだ。

 今、この問題がまた浮き彫りになってきている。

 イスラム世界ではコーランの正しさを教える宗教教育が復活し、他の世界と間で「正しさ」が対立するような状態になっている。非常に根深い問題だ。

 われわれが今するべきことは、<自分が「正しい」と考えていることは、実は根拠が薄いかもしれない>と疑う姿勢を持つことである。

 また違う考え方に触れたとき、すぐさま拒絶するのではなく、そういう「見方」もあるのだと、認識しておくことが大事だ。

 これが民主主義や科学論の前提であり、よりよい未来につながっていくことになるからだ。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授