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「ギャンブル依存症」とは?なりやすい人の特徴
今、注目を集めているギャンブル依存症
いけないとわかっていてもやめられない……日常生活にも支障が出てしまう「依存症」は、医学的にきちんと認められている病気です。依存してしまう対象はさまざまで、代表的なものには薬物やアルコールなどがあります。そして、2016年末に「カジノ法案」(正式名称「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」、略称「IR推進法案」)が成立してから注目を集めている依存症が、ギャンブル依存症です。世界保健機構(WHO)では、「病的賭博」という名称になっています。日本では長らく競馬や競輪などの公営ギャンブルのみが許可されており、カジノ設置は禁じられてきました。現状ではまだ日本国内にカジノ設置は実現していませんが、それでもカジノが本当にできたら、ギャンブル依存症の人が増えるのではと心配になる人が多いのは当然ですよね。そこで、2018年に厚生労働省が「ギャンブル等依存症対策基本法」を制定して対策をまとめました。
この法律では実態調査が定められており、2020年に実施されています。無作為抽出した18~74歳の男女1万7955人にアンケートを行い、8223人分の有効回答を分析した結果、ギャンブル依存症などの可能性がある人は全体で2.2%、男性は3.7%、女性は0.7%とわかりました。これを日本の人口に換算すると、約200万人がギャンブル依存症という計算になります。あくまで予想値ですが、少なくはない人がギャンブル依存症になっている可能性があるのです。
ギャンブル依存症の症状となりやすい人
決して他人事ではないギャンブル依存症ですが、なってしまうと具体的にどのような症状が出るのでしょうか。代表的なものを見てみましょう。・ギャンブルのことばかり考えてしまう:
なにをしていてもギャンブルのことが頭から離れなくなってしまいます。このため、仕事や勉強も手につかなくなります。
・負けた分をギャンブルで取り返そうとする:
当然ながらギャンブルは必ず勝てるものではありません。それなのに、ギャンブルで負けた分をギャンブルで取り返そうとしてしまいます。
・より強い刺激を求めて賭け金が増える:
ギャンブルで勝ったときの興奮を忘れられず、より強い興奮を求めてギャンブルに賭ける金額が増えていきます。
・ギャンブルをするために貯金を崩したり借金したりする:
経済的に苦しくなるとわかっていてもギャンブルがやめられず、無理をしてお金をつくってギャンブルに当ててしまいます。
ギャンブル依存症になると、経済的にも精神的にも破滅に向かってしまうことがわかります。しかし、ほとんどの人はギャンブルをほどほどに楽しんでいますよね。それではどのような人が、ギャンブル依存症になりやすいのでしょうか。その特徴も見てみましょう。
・ギャンブルに関する経験がある:
両親などの親族がギャンブルをしていた経験がある人はギャンブルへの抵抗感が少なく、はまってしまいやすい傾向があります。
・自分一人ですべて解決しようとする:
周囲に頼ることが苦手な人は、ギャンブルで負けても自分だけで負けを取り戻そうとして引き返せなくなりやすいです。
・やりたいことがない:
人生の目標がなく、時間を持て余している人はついギャンブルに手を出してしまい、ほかにやることがないためずるずると依存症になってしまいます。
・ギャンブルで大勝ちをしたことがある:
ギャンブルで一度大勝ちをしたことがあると、そのときの興奮を忘れられずに何度もギャンブルを繰り返してしまいます。
また先ほどの厚生労働省の調査でもわかるように、男性のほうがギャンブル依存症になりやすい傾向があることがわかっています。
ギャンブル依存症になりやすい人の特徴を見てみると、単純に本人の問題とはいえない点もあることがうかがえます。両親がギャンブルをする家庭で育ったら、抵抗なくギャンブルに手を出しても不思議はありませんし、厳しく育てられたため他人に頼れなくなった過去を持つ人もいるでしょう。幼少期に家庭内でトラウマ(心的外傷)を負った人を「アダルトチルドレン(AC)」といいますが、ギャンブル依存症になってしまう原因に、ACの問題も関与していると考えられています。
本人だけの問題にとどまらない悪影響
ギャンブルで負けた分をギャンブルで取り返そうと考えるようになったら、もうギャンブル依存症になっているかもしれません。そして、自分の返済能力を超えた借金をするようになったら、大切な人生がギャンブル依存症で崩壊してしまうと自覚しなくては危険です。ギャンブル依存症の症状を放置し続けると、次のような悪影響が現れてきます。・借金をしすぎて取り立てに追われるようになる:
返済できないほど借金をしてしまうと、毎日のように返済を催促されるようになってしまいます。自己破産を申請して借金から逃れることも不可能ではありませんが、ギャンブルによる借金は自己破産を認めてもらえない「免責不許可事由」に当たるため、経緯を説明する申立書類や反省文などの提出が必要になるなど、手続きが厳しくなります。
・犯罪に走ってしまうおそれがある:
ギャンブルで資金が底を尽きると、イライラがつのって公共物や他人の所有物を破損してしまうかもしれません。また、お金欲しさに窃盗や強盗をはたらいてしまう人も少なくありません。盗むときに他人を傷つければさらに罪が重くなります。さらに、職場のお金を横領してしまうケースも見受けられます。
・家庭崩壊や一家離散の可能性が高まる:
ギャンブルのことばかり考えて仕事がまともにできなくなったり、ギャンブルの資金にするために返済できないほどの借金をしたりすれば、近くにいる家族は心配するでしょう。ギャンブルの資金を家族に無心するようになれば、家族は心を病んでしまったり、逃げてしまったりするかもしれません。
ギャンブル依存症は自分自身を苦しめるだけでなく、職場や見ず知らずの人に迷惑をかけたり、大切な家族まで追い詰めてしまったりする可能性がある病気なのです。ギャンブルにのめり込みすぎかもしれないと思ったら自分一人でなんとかしようとせずに、依存症の相談を受け付けている精神科などを受診してすぐに治療をはじめましょう。
<参考サイト>
・依存症対策全国センター ギャンブル依存症ってどんな病気?
https://www.ncasa-japan.jp/understand/gambling/about
・ながはまメンタルクリニック 「ギャンブル依存症」について
https://www.nagahama-mental.com/entry.php?eid=92337
・朝日新聞デジタル ギャンブル依存の疑い2.2% 厚労省が初の実態調査
https://www.asahi.com/sp/articles/ASP8V76CBP8VULBJ017.html
・時事ドットコム 成人の2%、ギャンブルで問題か 依存症対策法で厚労省推計
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082700755&g=soc
・加藤法律事務所 ギャンブルが理由の借金でも自己破産できるのか?
https://kato-lawoffice.com/jikohasan-gambling/
・依存症対策全国センター ギャンブル依存症ってどんな病気?
https://www.ncasa-japan.jp/understand/gambling/about
・ながはまメンタルクリニック 「ギャンブル依存症」について
https://www.nagahama-mental.com/entry.php?eid=92337
・朝日新聞デジタル ギャンブル依存の疑い2.2% 厚労省が初の実態調査
https://www.asahi.com/sp/articles/ASP8V76CBP8VULBJ017.html
・時事ドットコム 成人の2%、ギャンブルで問題か 依存症対策法で厚労省推計
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082700755&g=soc
・加藤法律事務所 ギャンブルが理由の借金でも自己破産できるのか?
https://kato-lawoffice.com/jikohasan-gambling/
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