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DATE/ 2018.09.23

カジノができるとパチンコはなくなるのか?

 カジノ法案が2018年7月20日に成立しました。これまでカジノ法案によってパチンコ業界のダメージが予測されていたりしましたが、実際にはどのようにみるべきでしょうか。カジノ法案とパチンコについて調べてみました。

カジノ法案って?

 カジノ法案とは、カジノを中核とする統合型リゾート実施法のことで、カジノから連想されるような、ギャンブルをどのように扱うかといった狭い範囲の法案ではありません。

 別名、IR法案とも言われ、Integrated Resort=統合型リゾートの略称になります。具体的には、地方自治体の申請に基づいて、カジノの併設を認める区域を指定して設置され、国際会議場・展示施設などのMICE施設、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場・映画館、アミューズメントパーク、スポーツ施設、温浴施設を統合した複合観光集客施設に関する法案になります。

 成立したIR法案のポイントとしては、

・全国で三か所に制限
・設置施設については7年後に見直し
・入場料は、日本人を対象に1回6000円
・入場回数についても、日本人を対象に7日間で3回、28日間で10回までに制限
・本人確認は、マイナンバーを活用
・カジノ収入の30%を納付金として国と立地自治体へ

 政府は、いくつかの制限を設けて、カジノによるマネーロンダリングや、ギャンブル依存症の対策を講じつつ、高まるインバウンド需要を視野に、IR=統合型リゾート施設を「観光先進国」実現の切り札として位置づけていることがうかがえます。

パチンコ業界はどうなる?

 パチンコが問題となるのは、パチンコホール、景品交換所、景品問屋のあいだで、特殊景品を回す三店方式による換金性において、その実態が紛れもなくギャンブルでありながらも刑法で禁止されている賭博行為にはあたらないという解釈で容認もしくは黙認されてきた経緯にあります。また、競馬や競輪といった賭博についても、国や地方自治体が関わる公営ギャンブルとして特別法で認可されているという実態もあります。

 IR法案は、競馬や競輪と同様に、観光や地域経済の振興に寄与するという「公益性」において、例外的に民営カジノを特殊ケースとして合法化しました。よって、この法案は、賭博行為そのものが対象とする内容ではないことから、パチンコ業界への直接的な影響は大きくはありません。また、全国に展開されているパチンコホールの数と、全国3か所に制限されたカジノ併設によるリゾート施設は競合関係になることもないでしょう。
 

カジノとパチンコ、棲み分けできる?

 2017年のパチンコホール倒産が前年比2.4倍と急増していることも視野に、パチンコ主要メーカーはむしろIR法案をチャンスとみて、海外カジノ施設に積極的に出資を行っており、カジノ運営のノウハウを蓄積し、カジノリゾート施設開発の主要なプレイヤーとなるべく準備をすすめています。

 見通しとしては、環境条件から一般庶民のためのパチンコホールは減衰しながらも存在しつづけ、カジノリゾートは富裕層+インバウンド層ねらいとして棲み分けすることでしょう。ただし、この構図はあくまでも見込みに過ぎず、インバウンド層がそうした日本のカジノリゾートに魅力を感じ、お金を落としていくかは、今後のブランディング次第といえるかもしれません。
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