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地球以外に居住できる「惑星」は存在するのか
人類が他の惑星に住む設定は、さまざまなSF物語で描かれてきました。現代は以前SFの話だったものが次々に実現しています。では実際に人類が居住可能な地球外惑星は存在するのでしょうか。また、私たちが住むためには、どういった環境が必須なのなのでしょうか。最近の研究を参考にしながら考えてみましょう。
太陽系でこのハビタブルゾーンに存在する惑星は地球だけです。地球の内側を公転している金星では、水は太陽の紫外線で水素と酸素に分解されてしまいます。さらに分解された後、とても軽い水素は金星の重力から逃れて宇宙に放出され、残された酸素は地上の物質と結合しているそうです。一方、外側の火星では温度が低すぎて水は地中で凍り、二酸化炭素も極で凍っているそうです。また火星の大気圧は地球の1000分の6、つまり0.6%とたいへん低い上に、その96%は二酸化炭素です。地球の大気は2割が酸素であることから考えると、かなり過酷な環境であることがわかります。
さらに、磁場があることも大事です。磁場は中心の恒星からやってくる強烈な風から惑星の大気を守る大事な役割があります。また磁場は惑星内部で液体金属が対流することによって生まれるのですが、小さい惑星はすぐに冷えて、内部の金属も固まってしまうようです。ほかにも、ハビタブル(居住可能)な環境には公転軌道や自転軸の適度な傾きといったものも大事です。
「ケプラー1649c」の平衡温度(大気の影響を考えずに計算された温度)は摂氏マイナス59度~19度とのこと。地球の平衡温度は摂氏マイナス18度なのでかなり近いです。地球は大気の影響で実際の平均気温は摂氏15度。「ケプラー1649c」に同様の大気があったとすれば、地球と同じような環境である可能性があります。
また「こと座」の方向およそ3100光年先にある「ケプラー160」という恒星には、「KOI-456.04」と呼ばれる惑星があり、これがハビタブルゾーンにあるようです。主星である「ケプラー160」は太陽に似た恒星で、現在までに4つの惑星が発見されています。「KOI-456.04」の直径は地球の約1.9倍、約378.4日で公転しており、地球が太陽から受け取る光の約93%と同量の光を受け取っているとのこと。大気があって温室効果が穏やかだった場合、表面の平均気温は摂氏5度と推定されています(ただし、今回の研究では「KOI-456.04」を系外惑星と確認するまでには至っていません)。
さらに「ケプラー」の後継として2018年4月に打ち上げられたNASAの「TESS」も、活躍しています。2020年1月の発見では、かじき座の方向に約100光年先の恒星「TOI 700」を回る系外惑星がおそらくハビタブルな環境にあるようです。こうした研究は、まだ始まったばかり。今後どれだけの新たな発見が生まれてくるか、楽しみに待ちましょう。
人類が居住するために必要な要素
人類が居住できる惑星があるかどうかといったテーマは、現代では科学の研究領域となっています。研究によると、人類が移住可能な惑星には「適切な温度」「気体の酸素」「液体の水」の3つの要素が必須です。こういった要素が全て揃う領域を「ハビタブルゾーン」と言います。これは中心となる恒星(主星、太陽系では太陽)によって距離や範囲が変わります。太陽系でこのハビタブルゾーンに存在する惑星は地球だけです。地球の内側を公転している金星では、水は太陽の紫外線で水素と酸素に分解されてしまいます。さらに分解された後、とても軽い水素は金星の重力から逃れて宇宙に放出され、残された酸素は地上の物質と結合しているそうです。一方、外側の火星では温度が低すぎて水は地中で凍り、二酸化炭素も極で凍っているそうです。また火星の大気圧は地球の1000分の6、つまり0.6%とたいへん低い上に、その96%は二酸化炭素です。地球の大気は2割が酸素であることから考えると、かなり過酷な環境であることがわかります。
さらに、磁場があることも大事です。磁場は中心の恒星からやってくる強烈な風から惑星の大気を守る大事な役割があります。また磁場は惑星内部で液体金属が対流することによって生まれるのですが、小さい惑星はすぐに冷えて、内部の金属も固まってしまうようです。ほかにも、ハビタブル(居住可能)な環境には公転軌道や自転軸の適度な傾きといったものも大事です。
居住に適した惑星は実は見つかっている
このように、ハビタブルな環境の条件はかなり厳しいです。しかし、2018年に運用を終えたNASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」の観測データの検証により、地球に似た惑星が見つかったとする発表も出てきています。「ケプラー1649c」という惑星は、「はくちょう座」の方向およそ300光年先にあり、直径は地球の約1.06倍、主星である赤色矮星「ケプラー1649」を約19.5日周期で公転しています。この惑星はハビタブルゾーンにあるとのことです。「ケプラー1649c」の平衡温度(大気の影響を考えずに計算された温度)は摂氏マイナス59度~19度とのこと。地球の平衡温度は摂氏マイナス18度なのでかなり近いです。地球は大気の影響で実際の平均気温は摂氏15度。「ケプラー1649c」に同様の大気があったとすれば、地球と同じような環境である可能性があります。
また「こと座」の方向およそ3100光年先にある「ケプラー160」という恒星には、「KOI-456.04」と呼ばれる惑星があり、これがハビタブルゾーンにあるようです。主星である「ケプラー160」は太陽に似た恒星で、現在までに4つの惑星が発見されています。「KOI-456.04」の直径は地球の約1.9倍、約378.4日で公転しており、地球が太陽から受け取る光の約93%と同量の光を受け取っているとのこと。大気があって温室効果が穏やかだった場合、表面の平均気温は摂氏5度と推定されています(ただし、今回の研究では「KOI-456.04」を系外惑星と確認するまでには至っていません)。
推定では銀河系に3億個のハビタブル惑星
他にもNASAなどの研究チームが、宇宙望遠鏡「ケプラー」の観測データをもとに2020年10月に行った発表によると、銀河系にある太陽と似た恒星の約半数には、表面に液体の水をもった岩石惑星が存在する可能性があるとのこと。この推定で行けば、銀河系には3億個のハビタブルな系外惑星が存在することになります。またそのうちのいくつかは、太陽から30光年以内にある可能性もあるそうです。さらに「ケプラー」の後継として2018年4月に打ち上げられたNASAの「TESS」も、活躍しています。2020年1月の発見では、かじき座の方向に約100光年先の恒星「TOI 700」を回る系外惑星がおそらくハビタブルな環境にあるようです。こうした研究は、まだ始まったばかり。今後どれだけの新たな発見が生まれてくるか、楽しみに待ちましょう。
<参考サイト>
ハビタブルゾーンってどこなの?|公益財団法人 日本科学協会
https://www.jss.or.jp/fukyu/cubicearth/glossary/07.html
生命がすめる条件ってなんだろう?太陽系の外の恒星、トラピスト-1の惑星から考えてみる|日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20170414-1.html
授業に潜入! おもしろ学問|京都大学広報誌『紅萠』
https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201709/gakumon/
ケプラー160に新たな系外惑星、居住可能な惑星の最良候補か|MIT Technology Review
https://www.technologyreview.jp/s/208414/
ハビタブルゾーンってどこなの?|公益財団法人 日本科学協会
https://www.jss.or.jp/fukyu/cubicearth/glossary/07.html
生命がすめる条件ってなんだろう?太陽系の外の恒星、トラピスト-1の惑星から考えてみる|日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20170414-1.html
授業に潜入! おもしろ学問|京都大学広報誌『紅萠』
https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201709/gakumon/
ケプラー160に新たな系外惑星、居住可能な惑星の最良候補か|MIT Technology Review
https://www.technologyreview.jp/s/208414/
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