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DATE/ 2022.07.24

なぜ高速道路の「逆走」は起きるのか

 高速道路の逆走による事故はたいへん危険です。その他の事故と比べて死傷事故となる確率は5倍、さらに死亡事故になる確率は40倍も高くなっています。逆走に関しては高齢者によるものが多いことは事実ですが、実は30歳から65歳でも全体の25%を占めていることも事実です。決して高齢者だけが気をつけるべきものとは言えません。逆走はどういうときに起こるのか、どう対処すれば良いのか、確認しておきましょう。

インターチェンジとジャンクションで全体の60%

 高速道路の逆走事故を起こした運転者のうち、67%は65歳以上の高齢者です。さらにそのうち75歳以上の後期高齢者は全体の45%となっています。また、認知症の疑いがある人の運転による事故は約1割。もちろん逆走事故を起こすのは高齢者とは限りませんが、高齢者の運転リスクは高いと言わざるを得ないでしょう。また飲酒や精神疾患といった状況によっても逆走は起きています。

 事故が起こる場所は、インターチェンジとジャンクションで全体の60%を占め、ついで本線が16%、サービスエリアとパーキングエリアが5%となっています。インターチェンジで間違ってオフランプ(出口)から侵入してしまいそのまま本線を逆走してしまう、サービスエリアやパーキングエリアから誤ってオフランプに侵入してしまうということがあるようです。

原因は認知機能の低下、疲労、眠気

 逆走が認識能力や状況判断能力の欠如に問題があることはすでに述べました。65歳以下に関してこれが起こる状況に「疲れ」や「眠気」によるものがあります。逆走は一瞬の判断ミスからもおきます。また、たとえばインターチェンジでオフランプから侵入してしまう際、つい同乗者とのおしゃべりに集中してしまって標識を見逃すといった要因もあるようです。

 また、途中で行き先を間違っていることに気づいてUターンする、ジャンクションに侵入後、本線に戻ろうとするといったように、意図的な逆走も起こっています。国土交通省の「逆走事案のデータ分析結果」によれば、逆走するという認識があった場合の5割は、行き先を間違えていることに気づいて戻ろうとした意図的な逆走だったとのこと。想定外のことに「パニック」になり、回復措置をとろうとすることで逆走となるようです。

 一方、高速道路の逆走に関する罰則は意外と軽く、違反点数は2点、違反罰則金は9,000円といった程度です。ただし事故を起こしてしまえば、多くの場合死傷事故となり「危険運転致死傷罪」に問われる可能性があります。もし被害者が怪我をした場合は15年以下の懲役、死亡した場合、1年以上(最高20年)の懲役となります。自身が生きていたとしても、重症を追った状態で罪を背負うことになる可能性は高いです。

逆走に気づいたら

 もし前方から逆走してくる車に気づいた場合、可能であれば路肩などの安全な場所に一時避難しましょう。退避できない場合はブレーキとハンドル操作で回避するしか方法はありません。ただし多くの場合、逆走してくる車は追い越し車線を走ってきます。このことから、普段から追い越した後はすぐに走行車線に戻る意識を持っておくことで、予防になります。また、逆走情報は高速道路の電光掲示板やハイウェイラジオで告知されるとのことです。そういった情報があれば、まずはとにかく速度を落として車間距離を取りましょう。

 もし自身が逆走していることに気づいた場合、まずはハザードランプをつけます。それからすぐに車を路肩などの安全な場所に止め、ガードロープの外など車外の安全な場所(自車よりも車線の流れの手前)に避難しましょう。それから非常電話を使うか、110番もしくは#9910から道路管理者に連絡します。

 目的の出口を過ぎてしまっても、決して逆走する必要はありません。そのまま次の出口まで行けば大丈夫。次の出口の料金所で係員に乗り過ごした旨を伝えれば、「特別転回証明書」を受けることができます。この後、反対車線を通行して目的の出口まで戻れば、余分な料金を払う必要はありません。考え事をしていて出口を過ぎてしまったとしても決して焦らず。まずは深呼吸して気持ちを整えましょう。

<参考サイト>
高速道路の逆走事故はなぜ起こる?|ZURICH
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-reverse-run-highway/
高速道路の逆走はなぜ起こる?納得の理由を解説!遭遇した際の対処法も|MOBY
https://car-moby.jp/article/car-life/road-traffic-law-accident/highway-reverse-run-cause/
高齢ドライバーが高速道路を逆走する3つの理由|高齢者安全運転診断サービス
https://kooansin.or.jp/column/cate9/20190820-94/
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