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なぜ日本人はマスクを外さないのか?
新型コロナの世界的なパンデミックによって、マスク着用は広く社会に浸透しました。ただし今はもう世界的にはマスクを外す人が大多数となっています。
また日本でも、2022年5月の時点で「屋外でほとんど会話をしない場合マスクは不要」とした基本的対処方針を正式に決定し、厚生労働省を中心に「屋外ではマスクの着用は原則不要」と告知しています。
しかし、多くの日本人は屋外でもマスクを外さない人が大多数です。なぜ日本人はマスクを外さないのでしょうか。
【日本人を「マスク信仰」に駆り立てる「6つの要因」】
(1)日本人の徹底したリスク回避志向
(2)日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する
(3)日本語の「周波数」により、英語ほどには発声も聞き取りも難しくない
(4)アメリカと日本での「マスクの象徴」の違い
(5)花粉症や感染症対策における「慣れ」と「信頼感」
(6)「過剰な自意識」が働く、日本の“お家芸”「ザ・同調圧力」
「6つの要因」をより具体的に見ていきましょう。まず、「(1)日本人の徹底したリスク回避志向」は、日本人は世界的にみてもリスクを極端に恐れる“ゼロリスク志向”の人が多いといわれています。
次の「(2)日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する」は、日本人と欧米人のコミュニケーションのスタイルの違いに起因し、日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する傾向から、マスクを外さなくても日本人は欧米人ほどコミュニケーションに困らないと考えられています。
続く「(3)日本語の「周波数」により、英語ほどには発声も聞き取りも難しくない」も、(2)と同様にコミュニケーションに与える影響です。英語の多くの子音の周波数はマスクをしていると発生しにくく聞き取りづらい反面、日本語の子音の周波数は英語よりは聞き取りやすくマスク着用の影響も受けにくいといわれています。
一方、「(4)アメリカと日本での「マスクの象徴」の違い」は、マスクの「シンボリックなとらえ方」の違いといえます。欧米では「マスク=重病」「マスク=不気味」として警戒されたり、とくに保守派を中心に秘密主義・不信感・貴族的な変装を連想させることから「自由への抑圧の象徴」ととらえられたりしているなど、マスクをふだん使いすることへの抵抗感が大きいと考えられています。
そして「(5)花粉症や感染症対策における「慣れ」と「信頼感」」は、日本人は新型コロナ禍以前から花粉症や風邪などの季節性の疾患や感染症の対策としてマスクを活用していました。そのため、日本人はマスクに「慣れ」と「信頼感」があり、マスクと親和性が高い国民性があるように思われます。
極めつけは「(6)「過剰な自意識」が働く、日本の“お家芸”「ザ・同調圧力」」です。マスクの着用は原則不要とされている屋外であってもマスクを外せない理由に、他者の目を気にする日本人の「過剰な自意識」が働いていることが予想されます。ただし、現代における日本人の「過剰な自意識」は単なる自己防衛といった消極的意志からではなく、不要なトラブルを避けたいという積極的意志も多いに含まれているのではないでしょうか。
マスクを外さない日本人も、個々人にはそれぞれの意思や意見があり、例えば、自身の体調や体質を考慮し、身近な人が重症化リスクの高い人であることなどの現状から、感染予防として有効と考え外さない人もいるでしょう。
反面、感染リスク対策のためではなく、同調圧力による対人関係のリスク対策としての「忖度マスク」によって外せない人も多いように思われます。
つまり、日本人がマスクを外さない理由は、単に医学的・科学的なリスク軽減の観点や感染との因果関係で語られるものではなく、すでに文化的・儀礼的なリスク軽減のツールでありアイテムへと変化しているといえます。このように、不安を行動へと昇華するための便利なツール兼アイテムとなったマスクに対して、秀明大学教授で社会学者の堀井光俊氏は、「マスクは現代の“お守り”」と称しています。
もちろん、マスクが医学的・科学的に感染リスクを軽減させるのであれば、マスクは外さない方がよいでしょう。
しかし、大多数の日本人がマスクを外さない現状が世界的にみても異質であることやコミュニケーションを取りにくいといった現時点でのデメリットやコストパフォーマンスの問題ではなく、マスクを外さない社会がより深刻なリスクをもたらす危険性について、警鐘を鳴らす人々もいます。
例えば、京都大学大学院教育学研究科教授で比較認知発達科学を専門とする明和政子氏は、脳科学的な観点から、マスク社会がもたらす子どもの発達への負の影響は大きく、今後ますます甚大になると懸念し、“マスクを外さない”ことによる医学的・科学的なリスクを増大させうる危険性を示しています。
「マスクを付ける」もしくは「外す」という行為は、個人的であればささやかな行為です。しかし、「日本人」という大きな主語となり、さらに日本人の長期的な集団行動になったとき、将来的なリスクが発生するのかもしくはリスクは発生しないのかなども未知数です。多角的な視野に立った意見交換や話し合い、そして文化的・儀礼的な心情を十分に考慮した、未来志向の科学的・医学的な検証が求められています。
また日本でも、2022年5月の時点で「屋外でほとんど会話をしない場合マスクは不要」とした基本的対処方針を正式に決定し、厚生労働省を中心に「屋外ではマスクの着用は原則不要」と告知しています。
しかし、多くの日本人は屋外でもマスクを外さない人が大多数です。なぜ日本人はマスクを外さないのでしょうか。
日本人がマスクを外さない「6つの要因」
大企業のリーダー・官僚・政治家といったトップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチングに携わり、劇的に話し方を改善させた実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる、コミュニケーション戦略研究家の岡本純子氏は、日本人を「マスク信仰」に駆り立てる「6つの要因」を以下のように挙げています。【日本人を「マスク信仰」に駆り立てる「6つの要因」】
(1)日本人の徹底したリスク回避志向
(2)日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する
(3)日本語の「周波数」により、英語ほどには発声も聞き取りも難しくない
(4)アメリカと日本での「マスクの象徴」の違い
(5)花粉症や感染症対策における「慣れ」と「信頼感」
(6)「過剰な自意識」が働く、日本の“お家芸”「ザ・同調圧力」
「6つの要因」をより具体的に見ていきましょう。まず、「(1)日本人の徹底したリスク回避志向」は、日本人は世界的にみてもリスクを極端に恐れる“ゼロリスク志向”の人が多いといわれています。
次の「(2)日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する」は、日本人と欧米人のコミュニケーションのスタイルの違いに起因し、日本人は「目」で、欧米人は「口」で表情を判断する傾向から、マスクを外さなくても日本人は欧米人ほどコミュニケーションに困らないと考えられています。
続く「(3)日本語の「周波数」により、英語ほどには発声も聞き取りも難しくない」も、(2)と同様にコミュニケーションに与える影響です。英語の多くの子音の周波数はマスクをしていると発生しにくく聞き取りづらい反面、日本語の子音の周波数は英語よりは聞き取りやすくマスク着用の影響も受けにくいといわれています。
一方、「(4)アメリカと日本での「マスクの象徴」の違い」は、マスクの「シンボリックなとらえ方」の違いといえます。欧米では「マスク=重病」「マスク=不気味」として警戒されたり、とくに保守派を中心に秘密主義・不信感・貴族的な変装を連想させることから「自由への抑圧の象徴」ととらえられたりしているなど、マスクをふだん使いすることへの抵抗感が大きいと考えられています。
そして「(5)花粉症や感染症対策における「慣れ」と「信頼感」」は、日本人は新型コロナ禍以前から花粉症や風邪などの季節性の疾患や感染症の対策としてマスクを活用していました。そのため、日本人はマスクに「慣れ」と「信頼感」があり、マスクと親和性が高い国民性があるように思われます。
極めつけは「(6)「過剰な自意識」が働く、日本の“お家芸”「ザ・同調圧力」」です。マスクの着用は原則不要とされている屋外であってもマスクを外せない理由に、他者の目を気にする日本人の「過剰な自意識」が働いていることが予想されます。ただし、現代における日本人の「過剰な自意識」は単なる自己防衛といった消極的意志からではなく、不要なトラブルを避けたいという積極的意志も多いに含まれているのではないでしょうか。
マスクが防ぐリスクの変化
以上から、マスクは日本人にとって新型コロナの世界的なパンデミック以前からそれほど抵抗なく利用され社会的にも受け入れられていたが、さらに日本人の徹底したリスク回避志向によって、大多数が外さない状況になっているといった状況がうかがえてきます。マスクを外さない日本人も、個々人にはそれぞれの意思や意見があり、例えば、自身の体調や体質を考慮し、身近な人が重症化リスクの高い人であることなどの現状から、感染予防として有効と考え外さない人もいるでしょう。
反面、感染リスク対策のためではなく、同調圧力による対人関係のリスク対策としての「忖度マスク」によって外せない人も多いように思われます。
つまり、日本人がマスクを外さない理由は、単に医学的・科学的なリスク軽減の観点や感染との因果関係で語られるものではなく、すでに文化的・儀礼的なリスク軽減のツールでありアイテムへと変化しているといえます。このように、不安を行動へと昇華するための便利なツール兼アイテムとなったマスクに対して、秀明大学教授で社会学者の堀井光俊氏は、「マスクは現代の“お守り”」と称しています。
もちろん、マスクが医学的・科学的に感染リスクを軽減させるのであれば、マスクは外さない方がよいでしょう。
しかし、大多数の日本人がマスクを外さない現状が世界的にみても異質であることやコミュニケーションを取りにくいといった現時点でのデメリットやコストパフォーマンスの問題ではなく、マスクを外さない社会がより深刻なリスクをもたらす危険性について、警鐘を鳴らす人々もいます。
例えば、京都大学大学院教育学研究科教授で比較認知発達科学を専門とする明和政子氏は、脳科学的な観点から、マスク社会がもたらす子どもの発達への負の影響は大きく、今後ますます甚大になると懸念し、“マスクを外さない”ことによる医学的・科学的なリスクを増大させうる危険性を示しています。
「マスクを付ける」もしくは「外す」という行為は、個人的であればささやかな行為です。しかし、「日本人」という大きな主語となり、さらに日本人の長期的な集団行動になったとき、将来的なリスクが発生するのかもしくはリスクは発生しないのかなども未知数です。多角的な視野に立った意見交換や話し合い、そして文化的・儀礼的な心情を十分に考慮した、未来志向の科学的・医学的な検証が求められています。
<参考文献・参考サイト>
・『マスクと日本人』(堀井光俊著、秀明出版会)
・『マスク社会が危ない』(明和政子著、宝島社)
・新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(2022年5月23日変更)- 内閣官房内閣広報室
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kihon_r_040523.pdf
・マスクの着用について - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00001.html
・日本人「マスク外す日」、永遠に来そうにない6理由 - 東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/621095
・『マスクと日本人』(堀井光俊著、秀明出版会)
・『マスク社会が危ない』(明和政子著、宝島社)
・新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(2022年5月23日変更)- 内閣官房内閣広報室
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/kihon_r_040523.pdf
・マスクの着用について - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00001.html
・日本人「マスク外す日」、永遠に来そうにない6理由 - 東洋経済
https://toyokeizai.net/articles/-/621095
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