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DATE/ 2023.01.03

高速道路に「照明がない区間」がある理由

 高速道路を走る時には、基本的に自車のヘッドライトが頼りです。このことから、サービスエリアや料金所の明かりが見えてほっとしたという経験のある人も多いのではないでしょうか。道路自体がもっと明るければ運転しやすいのに、と感じる人もいるかもしれません。しかし、実は高速道路の明るさは、安全のためにしっかり管理された上で暗いのです。ということで、ここでは高速道路での夜間の明るさはどのように管理されているのかという点についてみてみましょう。

本線の照明は眩惑(目眩し)への対策の意味合いもある

 高速道路の照明は「局部照明」と「連続照明」に分かれます。「局部照明」とはインターチェンジやジャンクション、SA、PAなどにおける照明、「連続照明」とは本線上の照明です。こちらは、基本的には霧など気象条件に影響を受ける場所や、道路の線形などが特殊な区間、分岐・合流地点、橋、バス停、トンネルなどに設置されています。さらに特に都市部では、道路上にはなにもない場所であっても連続照明がある場所があります。これは周囲のビルなどの建物や広告灯の照明などが眩しい場合といった条件があるようです。

 またトンネルでは照明が必須ですが、その色はオレンジが多いです。これは旧来からの水銀ランプに比べて消費電力が2分の1から3分の1の「低圧ナトリウムランプ」と呼ばれるものが使われているからです。このランプは排ガスや塵といったものの影響を受けにくい点でもトンネルに適していることもあり、1960年台から普及してきました。

夜間道路は安全のために暗い

 日本の一般的な高速道路での夜間走行は、基本的には車のヘッドライトだけで安全な運転ができるように作られています。むしろ照明がある場所は、特に気をつけなければならない場所や、他の光に目が眩惑されて運転しづらくなる場所です。この点は特にトンネルを考えると顕著です。トンネルでは入り口付近は明るく、奥へ行くほど照明が暗くなります。これは人間の目が明るい場所から暗い場所に移動した際、光量調節に時間がかかるからです。トンネルは目が少しずつ暗さに順応できるような仕組みになっています。

 もっと幅広い範囲で明るくしてもらえれば、夜間運転も楽になるかもしれません。しかし、見えづらいということも安全対策の一つです。ヘッドライトのみであれば先が見えづらいことから、速度を落として運転することになります。このことが結果的に事故防止に役立っています。もっと言えば、明るくする範囲を広げれば、多大な設置コストや維持するための電気代、さらに定期的な改修コストがかかります。明るくするのは安全のために必要最低限の範囲とするのが最も合理的です。

街灯は低位置照明に、トンネルはLEDに変化してきている

 最近では高い位置の街灯ではなく、道路の側面など1mほどの高さから道路を照らす、低位置照明も増えているようです。東京湾アクアラインではこれが採用されていますが、これであれば、周囲に光が漏れることも少なく光害を抑制できることがメリットです。また高所作業にならないのでメンテナンスも楽で、安全です。ただし、設計の難度が上がることもあり、導入コストが高くなる点はやや欠点かもしれません。

 また昨今ではトンネルの照明でもLEDが増えているようです。LEDであれば消費電力は低圧ナトリウムランプの30%程度、耐用年数も低圧ナトリウムランプが約1年であるのに対して、およそ10倍の10年弱となります。初期費用はLEDの方が若干高いようですが、ランニングコストが安いことで長いトンネルであればあるほど、コストの縮減効果は大きいと考えられます。

<参考サイト>
よくあるご質問|NEXCO西日本
https://www.w-nexco.co.jp/faq/13/
道路照明施設設置基準|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/pdf/20070905syoumei.pdf
白色のLEDが主流? トンネル内のオレンジ色の照明はなぜ減っているのか?|ベストカーWeb
https://bestcarweb.jp/feature/column/169211
LEDトンネル照明導入によるコスト縮減効果について―北海道横断自動車道トンネル群への導入事例―|国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所
https://thesis.ceri.go.jp/db/files/374929213567389cf4be53.pdf
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