社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.09.11

今すぐクリエイティブになれる方法って?

 今すぐ、驚くほど簡単にクリエイティブになれる方法がある。そのメカニズムが分かったのは、実は50年ほど前、1960年代のことだ。発見したのは、サルノフ・メドニックという心理学者。

 彼は、「創造性とはすばらしくよく働く連想記憶にほかならない」と考えた。つまり、連想がよく働く状態ほど、クリエイティブだと定義したのだ。いまも通用する定義だろう。

楽しいと、ひらめく!

 彼の研究で分かったのは、私たちは楽しい気分だとよくひらめき、クリエイティブになるということだ。

 彼の研究では、検査前に楽しいことを考えてもらった被験者は、直感の正確性を表す「直感指数」が2倍も上がった。反対に、悲しいことを考えた被験者は、直感的な作業をまったく正確にこなせなくなってしまったという。不機嫌なときや不幸なとき、私たちは直感のきらめきを失ってしまうのだ。

 つまり、今すぐ簡単にクリエイティブになれる方法とは、「楽しい気分になること」だ。方法は何でもよい。ウキウキしながら考えれば、きっと良い結果が出るはずだ。

ただし、楽しいとエラーも増える

 しかし、気をつけなくてはならない点もある。それは、上機嫌、直感、創造性、騙されやすさが強くつながっていることだ。ご機嫌だと直感が冴え、創造性が一段と発揮される一方で、警戒心が薄れ、論理エラーを起こしやすくなる。

 昨日、素晴らしいアイデアを思いついたと思ったのに、今日振り返ってみると、実は大きな問題のあるアイデアだった、という経験はないだろうか。それは、創造性が高まっているときに当然起こりえるリスクである。そのリスクを防ぐには、楽しくアイデアを考えた後、時間を置いて、冷静にアイデアを検証するプロセスが欠かせない。

 本当に役立つアイデアを生み出すには、楽しくクリエイティブに考えるだけではダメなのだ。疑い深くなる時間もまた大切なのである。

感情反応が関連性を判断している

 ここから先は少し難しい話になるが、なぜこういった方法に効果があるかといえば、私たちの「感情反応」こそが、関連性の判断の基になっているからだ。

 例えば、「1:眠る/郵便/スイッチ」「2:塩/深い/波頭」の単語群を見た場合、多くは2を見たほうが笑顔になるのだという。なぜなら、意味のつながりが強い(海を連想させる)ためだ。その笑顔の反応から、私たちは「この単語群は関連性が強い」と判断するのである。

 つまり、実は私たちは情報をみると、最初に感情が動き、その感情の動きを見て、私たちの脳が関連性の強弱を判断するのである。「楽しいことを考えて、クリエイティブになる」という方法は、この働きを利用している。楽しいとき、私たちは、目の前や頭のなかにある情報同士の関連性が強いと勝手に勘違いし、積極的に関連性を考えてしまうのだ。結果的に、連想力、クリエイティビティが増すというわけである。

<参考文献>
・『ファスト&スロー(上)』(ダニエル・カーネマン著 早川書房)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
2

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ

編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?

「何回説明しても伝わらない」「こちらの意図とまったく違うように理解されてしまった」……。そんなことは、日常茶飯事です。しかしだからといって、相手を責めるのは大間違いでは? いやむしろ、わが身を振り返って考えないと...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/13
3

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
4

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム

デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム

初めて会った人なのになぜか好意を抱いてしまうことがある。だが、なぜそうした衝動が生じるのかは疑問である。デカルトが友人シャニュに宛てた「愛についての書簡」から話を起こし、愛をめぐる精神と身体の関係について論じる...
収録日:2018/09/27
追加日:2019/03/31
津崎良典
筑波大学人文社会系 教授
5

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13