テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.05.03

「おばさん構文」の特徴とは?

 LINEやSNSなどで使われ、しばしば話題にのぼる「おじさん構文」。おもに中年男性が使うとされ、独得の言い回しや、ノリツッコミと絵文字満載の長め文章。そこはかとない下心が垣間見える顔文字や連絡の催促などなど、近年のネットスラングにもなっています。

 とくにセクハラまがいのメッセージを若い女の子に送り、それがTwitterなどで拡散され、意図せぬデジタルタトゥーを生み出す一連の流れは、もはや「おじさん構文」の様式美。文章を入れると「おじさん構文」が作れる「おじさん構文メーカー」や、「おじさん構文bot」など、ネタとして扱われる一方、自覚せずに「おじさん構文」を使っていてショックを感じる中年層もいるようです。

 そんな「おじさん構文」が話題になる一方、最近は「おばさん構文」なるものも出現していることをご存じですか?

「おばさん構文」の特徴は「○○よん」?

「おばさん構文」の特徴も、「おじさん構文」と同じく絵文字が多いことがあげられるようです。たとえば、【ハートマーク】や【キラキラ】、【泣く絵文字】、【赤いビックリマーク】などがその代表格。また、これらを連続で使うというのも「おばさん構文」っぽさを醸し出しているとされています。

 ほかにも「―」ではなく「~」を使う、一文が長くくどいといった印象もあるようです。冒頭に「ヤッホー」などの片仮名挨拶や、文頭に「あらら」「あらっ」「あら~」を使うこともあげられています。現実世界でも「あらあら」といった感嘆詞を口にする方は、少し年上の女性というイメージがあるかもしれません。逆に語尾に、「〇〇よん」「〇〇だわ」「〇〇だヨ」「○○かしら?」「!!」「!?」を多用するなども、「おばさん構文」の特徴と言われています。

おじさん・おばさんも、昔は〝若い世代〟だった

 こうした独得の言い回しや文章構成は、どのように形成されたのでしょう? そもそも、今の中年層が青春時代を送っていたころは、まだスマートフォンは登場しておらずガラケー全盛期でした。絵文字を言葉に合わせて装飾したり、「あいうえお」「やゆよ」といった小文字にできる文字を、わざと小文字にして使ったりといった当時の流行もありました。現代のZ世代が、比較的シンプルで短い文章構成を好むのに対して、一昔前の〝若い世代〟の常識は文字を装飾することでもあったのです。

 また、いまとは違いLINEのようなリアルタイムで連絡を取れる手段が少なく、交流方法はメールが主流でした。そのため、送信する一回のメールのなかで、自分の気持ちや相手への配慮など、すべて詰め込まなくてはならなかったため、自然と文章は長めになり、長い文章をなるべく重くしないように演出した結果、絵文字と顔文字が並ぶといった構図ができあがったのかもしれません。

 そのため、〝おじさん・おばさん〟にとっては、絵文字の多用は交流のない若い世代への気づかいのつもりでもあるのです。楽しい話にしたい、話を重くしたくないといった気持ちが、そのまま「おじさん構文」「おばさん構文」と呼ばれるのは、いかにもジェネレーション間で起こるディスコミュニケーションというわけです。自分は気遣っているつもりでも、送られた相手にとってはその配慮が違和感になるということもあるのですね。

それぞれの世代が培っていく文化

 とはいえ、「おじさん・おばさん構文」が〝悪いこと〟というわけではありません。コミュニケーションにもそれぞれの世代で培ってきた文化があり、それは「おじさん・おばさん」よりも年齢が上の世代も同じはずです。今の若い世代も、10年・20年経ったとき、そのあとに続く世代から見れば、よくわからない文化を持ち合わせているように見えるのかもしれません。

 けれど、自分が当たり前だと思っている常識が、別の世代には大きな違和感になるということは頭に置いておかなくてはならないでしょう。会話はキャッチーボールといいますが、それは文章によるコミュニケーションも同じこと。相手が取りやすいように投げてあげること、ボールをしっかり見てキャッチしてあげること、両方が大切なことです。

「おじさん・おばさん構文」に怪訝な反応をされても、「これだから若いやつは!」とは思わず、彼らがどうしてそう思うのかを考えてみるのもいいかもしれません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
2

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
3

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生

ChatGPTを生みだしたOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの進化・発展によって急速に変化している世界の情報環境だが、今その中心にいる人物といっていいだろう。今回のシリーズでは、サム・アルトマンの才能や彼をとりまくアメ...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/19
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

新宿の歴史…かつては馬糞臭い宿場町だった「内藤新宿」

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(1)内藤新宿の誕生と役割

江戸時代後期に書かれた地誌『江戸名所図会』(えどめいしょずえ)をひもとくと、江戸時代の街の様子や人々の暮らしぶりが見えてくる。今回は、五街道の宿場町として重要な役割を果たした「内藤新宿」を取り上げ、新宿のかつて...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/21
堀口茉純
歴史作家
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授