テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.05.28

世界から「石油」が無くなるとどうなるのか?

 新型コロナの流行やウクライナ侵攻により引き起こされた原油価格の高騰は、世界中に大きな影響を及ぼしました。それは私たちの生活も例外ではなく、相次いだ値上がりに苦しい日々を強いられている人も少なくないでしょう。

 原油価格の高騰が引き起こしたこの状況は、私たちの生活が石油に依存して成り立っていることの表れでもあります。生活のどんなところに石油が関わっているのか、もし石油がなくなったらどうなるのか、考えてみましょう。

身近にある石油製品がなくなったら

 石油製品と一言でいってもさまざまで、自動車や飛行機の燃料となるガソリン、ペットボトルやビニール袋、プラスチック製品、衣料に使われている合成繊維、界面活性剤や合成洗剤、ドライクリーニングや塗料に使われる工業用ガソリン、そして火力発電所の熱源やプロパンガスなど、石油からできた製品は多岐に渡ります。いま顔をあげて周りを見るだけでも、石油由来の製品に囲まれていることがわかるでしょう。

 石油がなくなってしまうことは、これら全てに影響が出るということです。もっとも影響が大きいのは、ガソリンが使えなくなることでしょう。ガソリンを燃料とするトラックやバス、自家用車、飛行機、船舶さえも動かせなくなり、人と物の流れがストップしてしまいます。これは社会活動、経済活動がストップしてしまうことでもあるので、すべての活動が停止してしまうといっても過言ではありません。

 さらに、上記に書いたような石油製品がなくなったらどうなってしまうでしょうか。

 まず考えられるのは、これまでのようにこうした製品は手軽には手に入らなくなる、価格が大幅に高騰する、または代替するものが見つからずに手に入れられなくなる恐れがあります。私たちの生活からプラスチック製品がなくなったら、合成繊維がなくなったら…考えただけでもその影響は大きいことが分かるでしょう。

有限の資源である石油がなくなるまでに

 どれだけ石油製品に囲まれているかを考えれば、石油がない世界を想像できないほど、私たちが石油に依存しているかが分かるでしょう。しかしこれは決してもしもの世界ではなく、有限の資源である石油を使っている以上、やがて訪れる未来の話でもあります。

 現在では石油依存から脱却するために、さまざまな取り組みが進んでいます。化石燃料に代わるエネルギーとして、太陽光発電やバイオマスエネルギーなどの再生可能エネルギーが注目を集めています。また、個人のレベルでも有限の資源を有効に活用するために石油製品の使い方を見直すサステナブルな生活にも高い関心が寄せられています。

 サステナブルな生活、という言葉は今では当たり前の言葉となりましたが、何気なく暮らしている中で身近にある石油製品ひとつひとつが有限の資源であることを忘れてはいけません。やがて訪れる「石油がなくなる世界」のためにも、ひとりひとりがその資源を大切にするよう、心がけていきましょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学

『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学

未来を知るための宇宙開発の歴史(14)宇宙開発は未来をどう変えるか

宇宙開発はわれわれ人間の生活のあらゆる分野に密接に関わっている。具体的に何が、どのように、われわれの暮らしを支えてくれているのだろうか。また、そう遠くない未来に多様な目的地に向けて往復する宇宙飛行も実現するかも...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/10/26
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
2

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直

『書経』を研究する中で発見した真理について理解を深めていく今回。徳は天をも感動させる力を持ち、真の和合は神を動かす。そして、宇宙は人間のように、また人間も宇宙のように構成されており、その根底には「正直」がある。...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/25
3

中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う

中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う

クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か

近年、アフリカで起こったクーデターは、イスラム過激派の台頭だけではその要因を説明できない。ではクーデターはなぜ起こるのか。また、台湾よりも中国のほうがクーデターが起こる可能性はないのか。クーデターは本当に「ラス...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/18
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
4

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは

大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み

大谷翔平選手は今や野球界だけでなく世界中のスポーツ界の象徴的存在だが、本人は「自分も最初からこの体と技術があったわけではない」と努力と練習の成果を強調している。いったいどんな出会いやプロセスが彼を育ててきたのか...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/03
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる

「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる

【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味

書店には数多くの仏教の入門書が並んでいるが、名僧や開祖たちが残した著作は敷居が高く、なかなか手に取れない。名僧の息吹をじかに感じつつ、その教えに触れるのが本シリーズだ。総論の第1回では日本に仏教思想が伝来した当初...
収録日:2020/08/20
追加日:2020/09/24
賴住光子
東京大学名誉教授 駒澤大学仏教学部 教授