社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.07.17

光ってるのに音を出していないパトカーは何?

 パトカーが走っているときにはおおよそ3つの状態があります。ひとつは赤色灯を点灯させサイレンを鳴らして走っている状態。この時は何かしらの事情で現場に急行している状態で、緊急車両の扱いとなります。つまり、信号の停止義務が免除されたり、周囲の車は道を譲る義務が生まれたりします。2つ目はサイレンを鳴らさず赤色灯もつけていない状態。この時のパトカーは一般車と同様の扱いです。3つ目の状況としてあり得るのが、「赤色灯だけつけてサイレンを鳴らしていない状態」です。この時のパトカーはいったい何をしていて、どういう扱いになるのでしょうか。また周囲の運転者はどういう対応をとればいいのでしょうか。

基本的には緊急車両扱いではないが、例外の状況も多い

 「道路交通法」の第七節(第39条から41条の2)あたりには、緊急自動車に関するルールが記載されています。この第39条では緊急自動車について「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。」と示されています。さらに「道路交通法施行令」第14条では「緊急の用務のため運転するときは、(中略)サイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。」としています。つまり「赤色灯をつけた上でサイレンを鳴らして運転しているもの」が緊急車両と考えられます。

 一方、以下のような文言もこの後に続いています。「ただし、警察用自動車が法第二十二条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。」つまり、速度超過している車などを取り締まる場合には、必ずしもサイレンを鳴らす必要はないようです。これがなぜなのかと言えば、速度違反をしている車両を取り締まる際には、警察車両はいったんその車両と同じ速度で走り、その速度を確認する、という措置を取るからです。このときには赤色灯だけを点灯させてサイレンは鳴らさないようです。

流れに乗って走っていればそのままで

 ここまで見た通り「赤色灯だけを点灯させ、サイレンを鳴らさずに走っているとき」は、基本的には緊急車両としての扱いではないのですが、違反車両を追跡したり取り締まったりしている時には「緊急車両と同様の扱いとなる」ということです。「赤色灯をつけてサイレンを鳴らしていない場合」基本的には防犯パトロール中と考えていいでしょう。この時には特に道を譲る必要はありません。しかし、いつでもこの対応でいいかというと、そうとも限りません。

 サイレンの音はかなり大きいので、必要性が低い場合にはサイレンを切っていることも多いようです。たとえば周囲が渋滞している場合や、住宅街などを走るといった場合が想定されます。また犯人などを刺激するのを避けるために、あえてサイレンを切っている場合もあるようです。もちろん流れに沿って走っている場合、赤色灯だけの点灯であれば、道を譲る必要はないと言えます。しかし、もし追い越そうとしていたりそれなりに速いスピードで走っていたりした場合、違反車を追跡していたり、現場に急行したりしている可能性はあります。そういった状況では、サイレンはなっていなくても安全に気を配りながら道を譲りましょう。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動

国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
中西輝政
京都大学名誉教授 歴史学者 国際政治学者
2

2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る

2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力

「織田家中一の武略者」――今までの大河ドラマでは見たことがない秀吉の姿が見られるという2026年NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』。いったいどういうことなのか。日本史の中でもファンの多い戦国時代だが、特に「天下一統」に向かう...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/17
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
3

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由

かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
4

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために

「腸脳相関」という言葉がある。健康には腸内環境が大切といわれるが、腸で重要な役割をしている物質が脳にも存在することが分かっている。「バランスの良い食事」が健康ひいては睡眠にも大切なのは、このためだ。人生は寝るた...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授