テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.11.12

都道府県別「年金受給額ランキング」

 都道府県によって年金に格差がある?と驚かれるかもしれません。公的年金受給者が受け取る年金額は人によって違います。まずは年金支給の基本的な仕組みから、一体どのぐらいの差が生じるのか、どの県が高く、どの県が低いのか、その原因は、といったことを、厚生労働省年金局が令和4年12月に発表した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」から読み取っていきましょう。
 

1位と47位では、年間52万円もの格差?

 日本の公的年金は「2階建て」とよく言われます。1階部分は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」、2階部分は会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」によるものです。

 令和3年度時点で老齢年金を受給しているのは、厚生年金保険(第1号)受給者が約1562万人、国民年金受給者が約3304万人、のべ4866万人となります。

 厚生年金保険(第1号)の平均年金月額は145,665円、国民年金の平均年金月額は56,479円。ところが、支給されている厚生年金保険(第1号)の平均月額を都道府県別にみると、最も多い県と最も少ない県では43,210円、年間では518,524円もの差が出ています。

 国民年金の方はそこまでの差ではありませんが、最多の県は60,034円、最少の県は52,112円。月額で7,922円、年額で95,064円の差があります。

 では、47都道府県の年金平均受給額トップ10とワースト10のリストをご覧ください。

受給額トップとワーストは?

(厚生年金受給額トップ10)
順位:都道府県:厚生年金保険(第1号)受給額
1位:神奈川:165,321
2位:千葉:160,017
3位:東京:158,661
4位:奈良:157,601
5位:埼玉:156,319
6位:愛知:154,984
7位:兵庫:154,247
8位:大阪:151,568
9位:滋賀:148,822
10位:茨城:147,004

(厚生年金受給額ワースト10)
順位:都道府県:厚生年金保険(第1号)受給額
1位:青森:122,111
2位:秋田:122,914
3位:宮崎:123,220
4位:沖縄:123,755
5位:山形:124,517
6位:岩手:126,262
7位:熊本:126,589
8位:高知:126,784
9位:鳥取:127,450
10位:島根:127,819

(国民年金受給額トップ10)
順位:都道府県:国民年金受給額
1位:富山:60,034
2位:福井:59,339
3位:島根:59,276
4位:長野:59,050
5位:石川:58,997
6位:香川:58,950
7位:岡山:58,836
8位:新潟:58,725
9位:鳥取:58,585
10位:三重:58,493

(国民年金受給額ワースト10)
順位:都道府県:国民年金受給額
1位:沖縄:52,112
2位:青森:53,933
3位:大阪:54,335
4位:和歌山:54,794
5位:高知:55,129
6位:東京:55,381
7位:京都:55,395
8位:大分:55,448
9位:福岡:55,472
10位:北海道:55,509

年金受給額に「格差」が生じる理由は?

 リストはあくまで平均ですから、厚生年金に加入していた人が同じように年金保険料を納めてきた場合、もらえる年金は受給時にどこに住んでいようと差はありません。

 格差が生じるのは、現役時代の雇用形態や収入の差によるものです。厚生年金保険料は標準報酬額によって割り出されるので、生涯収入が多く収めた保険料の高かった人ほど、多くの年金を支給されることになります。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、雇用形態別の賃金は、正社員で約323,400円、それ以外では約216,700円。これまで厚生年金に加入しにくかった非正規労働者への門戸は段階的に開いていますが、同額の年金が保障されるわけではありません。

 これらを考えあわせると、厚生年金受給額の高い都道府県は、比較的大きな企業で生涯勤務してきた人(主に男性)が多いことが分かります。

 国民年金の保険料は原則として全員が定額を支払っていますが、受給額に都道府県差が生じる理由については、県別納付率の差があることが日本年金機構から発表されています。

 平成30年度の調査では、納付率トップ3県が島根、新潟、富山、ワースト3県は沖縄、大阪、東京です。

 今後もらえるようになる年金と、従来支払われてきた年金の間に「世代間格差」があることも大きな問題になっており、もう年金保険料は払わない、という人もいますが、受給資格がなくなってしまうと、老後に大きな悔いを残します。

<参考サイト>
・厚生労働省年金局:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(p24)
https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf
・太陽生命:生命保険とは?仕組みや役割、種類などの基礎知識をわかりやすく解説!
https://www.taiyo-seimei.co.jp/net_lineup/colum/basic/008.html
・日本年金機構(令和元年12月):国民年金保険料納付率の地域差について
https://www.nenkin.go.jp/info/johokokai/uneihyogikai/kako/r01/39.files/02.pdf
https://dime.jp/genre/963642/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは

「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念

今も明治政府による国家モデルが生きている現代社会では、日本は中央集権の国と捉えられがちだが、歴史を振り返ればどうだったのかを「集権と分権」という切り口から考えてみるのが本講義の趣旨である。7世紀に起こった「大化の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/08/18
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

スターリンクや宇宙旅行の課題とは?…民間企業の宇宙開発

スターリンクや宇宙旅行の課題とは?…民間企業の宇宙開発

未来を知るための宇宙開発の歴史(6)技術の確立、そして民間企業が参入へ

宇宙事業には民間企業が参入し始めている。有名なのはイーロン・マスク率いるスペースX社で、次々とロケット(衛星)を打ち上げている。だが、そこには懸念もあるという。はたして、どのようなことだろうか。さらに近い将来、宇...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/08/26
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長
4

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
5

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授