テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.05.24

貯金箱はなぜ「豚」なのか

貯金箱の定番といえば豚ですが…

 昭和に連載が始まり、令和の現在も子どもたちに人気のギャグ漫画「あさりちゃん」。この作品を読んで育ち、今でもお気に入りという方も多いのではないでしょうか。そんなあさりちゃんは公式ツイッターで作品のお知らせやあさりちゃんの日常を発信しており、2023年2月6日に「トルコ・シリア地震」が発生したときには、無駄遣いばかりするあさりちゃんが寄付をするためにお金を貯めたことをツイートしています。

 このツイートには小さな豚を手に乗せたあさりちゃんのイラストが添えられているのですが、一体なにを意味しているのでしょうか……と疑問を挟むまでもなく、豚が貯金箱だということはすぐにわかりますよね。そう、日本では「貯金箱=豚」というイメージが、定番として広く根づいているのです。

 そして実は、豚が貯金箱の定番になっている国は日本だけではありません。むしろ世界中でメジャーな存在です。そもそも、豚の貯金箱発祥の国は海外なのです。

豚の貯金箱誕生の経緯とは

 豚の貯金箱は14世紀のイギリスで誕生したとされています。もともとイギリスには、ちょっとした小銭を赤土でできた壺に入れておく習慣があり、この壺が発展して貯金箱になりました。ではなぜモチーフが豚になったのかについては諸説ありますが、貯金箱をつくる職人が発注を聞き間違えたという説が第一に上げられます。貯金箱の素材である赤土の粘土の名前は「pygg」といい、豚を意味する「pig」と発音がほぼ同じなので、「赤土(pygg)の貯金箱」を「豚(pig)の貯金箱」だと思ってつくってしまった……というわけです。

 つまり、できあがった貯金箱は欠陥品だったのですが、職人が試しに販売してみるとかわいらしい見た目が人気を呼び、イギリスからヨーロッパ全土にも広がっていきました。19世紀ごろにはヨーロッパでも豚の貯金箱が定番になったといわれます。

 また、豚は一度に10頭近く出産することから子孫繁栄の象徴であり、「子どもがどんどん生まれる=財産がどんどん増える」とも考えられている縁起がいい動物です。貯金箱にはぴったりといえるでしょう。お肉だけでなく、皮や骨も利用できる無駄のない動物であることから、「無駄遣いを避けられる」と考えられる点も貯金箱にぴったり。豚はまさに、見た目も縁起も貯金箱にふさわしいモチーフなのです。

日本にはいつごろ上陸したのか

 イギリスからヨーロッパに渡った豚の貯金箱が、日本にやってきたのは20世紀に入ってから。1961(昭和36)年に、三菱銀行が口座を開設した預金者へのノベルティとして配った「ブーちゃん貯金箱」がはじまりといわれます。この貯金箱はなんと140万個も配布されたのだとか。無料のサービス品だったとはいえ、当時大人気だったダッコちゃん人形の販売数が40万個だったことと比較しても、その人気ぶりがうかがえます。ブーちゃん貯金箱は現在でもネットオークションやフリマアプリに出品されており、人気のレトロアイテムになっています。

 昭和に人気を呼んだ豚の貯金箱が今でも定番として愛され、令和の時代になっても昭和から続く人気漫画のキャラクターといっしょに描かれている姿を見られると、どんなに時代が流れても色褪せない文化があることを改めて感じさせられますね。

<参考サイト>
・レタスクラブ 聞き間違えが誕生のきっかけ? 世界中で最も多い動物の貯金箱は“豚”だった!
https://www.lettuceclub.net/news/article/190150/
・FUNDO 貯金箱のデザインはなぜブタが定番なの?その理由を解説!!
https://fundo.jp/328403
・LIMIA 世界中で愛される貯金箱の定番!ブタの貯金箱おすすめ10選!
https://limia.jp/article/119138/
・介護のみらいラボ 【今日は何の日?】12月1日=三菱銀行が「ディズニー預金」をスタート(1962年) / 雑学ネタ帳
https://kaigoshoku.mynavi.jp/contents/kaigonomirailab/news/today/20221201_00/
・あさりちゃん公式ツイッター
https://twitter.com/asarichan927/status/1628574362604560386

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
4

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授