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DATE/ 2024.08.02

日本の通貨単位はなぜ「円」なのか

 日本の通貨は「円」と呼びますが、そもそもなぜ「円」というのでしょうか。あまりに馴染みすぎて、考えたこともなかったという人は多いと思います。

 今回は、知っているようで知らない「円」という通貨単位の歴史について、深掘りしていきたいと思います。

「円」の通貨が生まれるまで

 現在の貨幣制度のおおもとが整備されたのは明治時代のことです。江戸時代までは、金でつくられた大判や小判、また銀や銅でつくられた銀貨や銅貨が通貨として使われ、単位は「両」や「分」「朱」「文」と呼ばれました。江戸幕府が発行した天保小判、寛永通宝などは、みなさんも教科書で見たことがあるでしょう。

 これら江戸時代の通貨の大きな特徴として、貴金属の素材の価値=通貨の価値だったこと、現在の10進法ではなく4進法(1両=4分など)で計算されていたことなどが挙げられます。これは日本独自の、いわばガラパゴス化した貨幣制度でした。

 江戸末期に黒船が来航し外国との貿易が開始されると、日本通貨と外国通貨との交換も行われるようになりました。しかし成り立ちや計算方法が違う貨幣同士の交換は簡単ではなく、交換の過程で日本の貨幣は海外へ大量流出する事態に。結果、日本経済は大きく混乱してしまったのです。

 列強諸国に追いつくべく富国強兵を掲げていた明治新政府は、こうした経緯から一刻も早い、世界基準の貨幣制度を打ち出す必要に迫られました。

 政府は香港(当時はイギリスの植民地)の造幣局から硬貨の製造機を買いつけたり、経済政策に詳しい外国人を呼んで監修にあたらせたりと、外国資本に頼りつつも新たな貨幣制度の制定に腐心しました。

 紆余曲折ありつつも1871年(明治4年)『新貨条例』が制定。新しい貨幣がつくられるとともに換算方法も10進法に改定。通貨単位も「円」に統一されたのです。

「円」という名称の由来

 それではなぜ「円」という名称になったのでしょうか。

 実はこれについては当時の資料が残っていないため詳細ははっきりとしない、というのが実情です。とはいえ、いくつか有力とされる説があります。

【説1】硬貨の形を「円形」に統一したから

 江戸時代の通貨は、大判小判のような楕円形ほか、一分金、一朱銀のような方形もあり、形は不統一でした。しかし外国通貨は円形が主流であること、方形よりも円形は摩耗しづらいなどの理由から円形に統一されることになりました。それにあわせて通貨単位もわかりやすく「円」とした、という説です。

【説2】中国の通貨単位「圓(えん)」に由来する

 一足先に外国通貨が流通していた中国(香港)では、円形の貨幣のことを「銀圓」「洋圓」などと呼んでいたため、それにならったという説です。造幣機の購入先だった香港造幣局で「圓」が使われていたことが影響していると考えられています。

 ちなみに現在中国の通貨単位である「元」は「圓」の略字で、中国の人民元紙幣をよく見ると「圓」の字が使われています。「円」という単位の決定についてわずかに残されている資料からは、通貨の単位を「元」にする案も出ていた、という記録があるそうです。

 現在、日本の「円」は偽造も少なく、世界的に最も信用度の高い通貨と見られています。それも、近世まで混沌としていた貨幣経済の流れを整理し進展させた、先人たちの努力あってこそといえるでしょう。真相はわからずとも「円」という単位には、日本発展への強い思いがこめられているのかもしれませんね。

<参考サイト>
・日本の通貨はなぜ「円」なのか 大隈重信と新1万円札・渋沢栄一【前編】(「早稲田ウィークリー」早稲田大学)
https://www.waseda.jp/inst/weekly/feature/2019/10/21/67340/
・日本のお金は、どうして「円」というのですか(財務省)
https://www.mof.go.jp/faq/currency/07aa.htm
・貨幣Q&A-日本の貨幣単位である「円」の由来は何ですか?(独立行政法人 造幣局)
https://www.mint.go.jp/faq-list/faq_coin#faq1
・お金はなぜ「円」なの?(毎日小学生新聞「疑問氷解」)
https://mainichi.jp/maisho/articles/20170814/kei/00s/00s/013000c
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