テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.12.27

金箔って本当に食べて大丈夫?体への影響は?

 お正月が近づくとスーパーなどで金箔入りの商品を見かけます。金箔入りのおせち、金箔入りぜんざい、金箔入り最中、金箔カステラなどなど、金箔は和食から甘味までさまざまな食べ物に使われています。こういったものが並ぶと一気に華やかになって目をひきますが、よく考えてみると金箔は金属です。果たして食べても問題ないのでしょうか。

金は体内に吸収されない

 金箔の元となるのはもちろん金属としての金です。金はたいへん安定した性質の物質で、酸性やアルカリ性といった環境の変化にも強く、さびることもありません。こういったことから歯の詰め物としても長く使われてきました。また純度の高い金は胃酸でも溶けず、消化されたり体内に吸収されたりすることもありません。このことから食品添加物としては着色料(着色料製造用剤)に分類されています。

 また金箔にもいくつか種類があるようですが、基本的にはごくわずかな銀や銅が含まれているようです(銅を含まないものもあります)。これにより金箔は加工しやすくなるそうです。ただし食用の金箔の場合、重さの95%程度はデンプン、また2%程度は植物性タンパク質とのこと。つまり、食用金箔の金属質は3%のみとなっています。デンプンでコーティングすることにより、金箔はパラパラと美しく広がりやすくなり、料理で使いやすいものになるようです。

食用の金箔は特に美容効果はない

 ともあれ、この食用金箔はほぼカロリーはありません。さらに無味無臭で味もありません。適量であれば、食べても問題なくすべてそのまま排出されます。また、金箔は肌にいい、美容に効果的、という話もあります。実際に美容マスクなどで使われているものもあるようです。ただし、食べる金箔に関しては体内で吸収されることはないので、特に効果はないと考えていいでしょう。

 金箔はそのほとんどが石川県の金沢市で作られています。もともとは、金が大好きだった豊臣秀吉が、加賀藩祖である前田利家に金箔の製造を命じたことが始まりのようです。また気候や水質といったところでも金沢は製造に適した地でした。このことが、この地で金箔工芸が盛んになったことに関係しています。現代では金箔の使われた食品はSNSでよく見られるようになり、外国人も金沢の地を多く訪れます。金には時代も場所も超える普遍的な力があるということかもしれません。

<参考>
金箔を食べる!なぜ食べても問題ないのか?分かりやすく解説│質乃蔵
https://www.shichinokura.com/gold-kaitoriblog/eat-goldleaf/
食用金箔│箔一
https://www.hakuichi.co.jp/service/food/
食品添加物リスト|公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
https://www.ffcr.or.jp/shokuhin/2014/02/C3F4C591005986D949256FA900252700.html
純度100%ではなかった!食用「金」の謎|CBCラジオ
https://radichubu.jp/kibun/contents/id=37843
金沢箔の歴史|石川県箔商工業協同組合
https://hakukumiai.jp/history/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
2

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
3

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
4

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授