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DATE/ 2017.01.15

海外ではありえない?「マスク大国」日本のなぜ

 今では日常的にするようになったマスクですが、かつて海外から見た日本は「マスク大国」だったことをご存知ですか?コロナウイルスが流行る以前から、日本では特に冬になると、歩いていても、電車に乗っても、とにかくマスクをしている人によく会いました。海外の人は日本でこの光景を目にすると、どう感じたのでしょうか。

 欧米では、マスクをして街に出ると、「強盗をするのでは?」「やましいことがあるのでは?」「感染性の高い、重い病気なのでは?」と過度の心配や警戒をされてしまうそうです。また、顔を隠すことは悪人のすることだという考えもあり、日本人がよくマスクをすることに対して、海外の人は異様だと感じるといいます。

 ではなぜ、こうも日本人はマスクをするのでしょうか。

風邪菌やウイルスをふせぐ、広めない

 インフルエンザが流行すると、咳をする人も増えてきます。インフルエンザでなくとも、風邪をひいたとき、仕事を休めないという人が無理をして出社する、ということもあるかもしれません。近くにいる人に風邪をうつすことがないよう、マスクをする。これはみなさん、考えることですよね。東京は人口密集地。満員電車では隣の人と密着することになりますし、そんななか、咳が出るのにマスクをしていないと、風邪をうつしてしまうかもしれません。もちろん無理せずゆっくりと自宅で安静にするのがベターだと思いますが、そんなときのマスクは、周りの人への配慮であり、最低限のマナーではないでしょうか。

 また、自分が健康でも、予防のためにマスクをつけている人もいます。インフルエンザが流行しているときなどは特に、外出する場合、注意が必要です。自分の健康は自分で守らなくてはなりませんからね。ちなみに、厚生労働省ではインフルエンザの予防や周囲の人への感染を防ぐため、ホームページで<正しいマスクの着用>について解説しています。

・鼻と口の両方を覆う
・ゴムひもを耳にかける
・隙間がないよう鼻まで覆う

 以上の順でマスクをするといいそうですが、ときどき見かけるのは鼻を覆わずにマスクをしている人。ホームページによると、「マスクを着用していても、鼻の部分に隙間があったり、あごの部分が出たりしていると、効果がありません」とのこと。気をつけたいですね。

花粉症

 日本にはスギの木が多くあります。スギ花粉による花粉症にかかった人の数は世界から見ても多いようです。アレルギー性鼻炎の人も多く、だるさや咳で悩まされる人もいます。マスクはアレルギーを引き起こす花粉から体を守ってくれます。鼻から入る量が減るというだけで、大きな意味を持つのですね。

安心を得る「だてマスク」

 さて、風邪や花粉症から身を守ることのほかに、マスクをつける理由として挙げられるのが、「だてマスク」と呼ばれるものです。

 なぜ病気に関係なくマスクをつけようとするのでしょうか。聞き上手倶楽部代表・菊本裕三氏の著書『[だてマスク]依存症 ~無縁社会の入り口に立つ人々~』には、「2010年の後半あたりから、首都圏の都市などで〔だてマスク〕をつけた中高生の姿を見かけられるようになった」とあり、2011年からは、だてマスクをつけた大人たちも目立つようになったとのこと。同書によると、理由は、「なんとなく落ち着くから」(高校生)「誰とも話したくない気分だから」(大学生)「表情をつくるのが面倒くさくて」(高校生)「眠いのを隠すため、バイト中はいつもする」(ショップ店員)など。内と外をきっちりと分ける傾向がある日本人にとって、あまり素の部分をさらけだしたくないという意識が働いたとき、マスクを心強いツールだと感じて、使っているのかもしれませんね。

 このように、マスクをつけると安心感が増す一方、マスクをつけないと不安になってしまうという人もいるとか。こうなってくると、会話も滞り、内向的になっていってしまう恐れがあるそうです。誰にとっても安心というものは大切でしょう。しかし、そもそも健康面とは関係のないことでマスクをつけることが精神的な健康を損なうことにつながるなら、それは考え直したほうがいいということでしょうね。

 こうして見ていくと、マスクをつける理由はさまざまですね。いずれにしても、必要なときにしっかりつける、ということが大事ではないでしょうか。

<参考文献・参考サイト>
・『[だてマスク]依存症 ~無縁社会の入り口に立つ人々~』(菊本裕三[聞き上手倶楽部 代表]著、扶桑社)
・厚生労働省ホームページ(暮らしのお役立ち情報:インフルエンザの感染を防ぐポイント)
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200909/6.html
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授