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DATE/ 2017.02.09

女性同士の醜い「格付け争い」の実態とは?

 「マウンティング」という言葉をご存知ですか?

 もともとは、「サルがほかのサルの尻に乗り、交尾の姿勢をとること。霊長類に見られ、雌雄に関係なく行われる。動物社会における順序確認の行為で、一方は優位を誇示し他方は無抵抗を示して、攻撃を抑止したり社会的関係を調停したりする。馬乗り行為。」(『広辞林』より)のこと。要するに、「わたしの方が上!」と上下関係を相手に認識させる格付け行為のことともいえます。

 最近、この「マウンティング」は、特に女性同士の格付け争いのことを指して使われるようになり、そんな行為にいそしむ女性たちは「マウンティング女子」とも呼ばれるようになりました。ちなみに、「マウンティング女子」は、『女は笑顔で殴りあう:マウンティング女子の実態』の著者でもある漫画家の瀧波ユカリさんが名付けた言葉とのことです。

なぜ女性間でマウンティングが頻発しがちなの?

 もちろん男性間でもマウンティングはあると思いますが、なぜ女性間のほうが頻繁に起こるのかというと、女性にはさまざまなマウンティングフィールドがあるからです。

 男性なら地位や年収といった、わかりやすい部分での社会的な格付けが存在しますが、女性はそれだけではありません。容姿やモテ度、また結婚相手や子どもや裕福度など、そのひとつひとつが格付けの対象に。自己評価も他人からの評価も、その基準が多いのです。自分自身の仕事の功績や成功だけでなく、アクセサリーのように自分についてまわる細部までが競争の場、格付けの場となってしまうのです。

実例:マウンティング女子にこんなことをされました!

 そこで、10人の女性たちに「マウンティングされているなと感じたことはある?」と聞いてみたところ、全員から「ある」との回答が。それは実際にどんな言動なのか、具体的に聞いてみました。

・友人より「旅行に行ってくる」と空港からラインが。ベビーカーの足下のチェックインマットに”ビジネスクラス”の文字があり、その偶然を装った、わざとらしい金持ちアピールにイラっとした。

・子どもの誕生日パーティーのインスタ投稿に、”六本木ヒルズ”とか”パレスホテル”とか、セレブな雰囲気のする位置情報をわざわざ付けるママ友。しかもドンペリ越しの子ども写真。その必要ある?と思ってしまう。

・「持ち家もあるし、子どもも2人いて、旦那も理解があって、仕事も順調。人からはうらやましいとか言われるけど、私も大変だよ~」と、独身の私にグチる友だち。めぐまれている自分を見せつけたいのね、とドン引き。

・予約の取りにくいレストランに行けたので友人に話したら、「私も3回行ったけど、まあまあよね」の返事。結局、「そんなに行ったんだ、すごいね」と答えたが、もうそれ以上話す気がなくなった。

 ということで、どの例も他人ごとと思うと笑える話かも知れませんが、実際に「こんなマウンティング女子が私の周りにもいる!」と思った方も多いのでは。マウンティング女子は、明確にアピールしたり自慢するのではなく、さりげなく、オブラートに包んで、自分の優位性を見せつけるのがいやらしい特徴のようです。

マウンティングしてしまう女性の心理とは?

 そんなマウンティング女子にも弱みはあります。それは、実は自分自身に自信がないこと。たとえば、当スタッフの友人で、自家用ジェットを所有する実業家の夫と可愛い娘を持つ本物のセレブの女性は、決してマウンティングなどしてきませんし、他人と自分を比べることもありません。本当に満たされている人は、わざわざ「自分が上だ」と相対的に幸せアピールする必要はないのです。

 そう考えると、マウンティング女子は、幸せの条件を陳列することによって、他人に幸せだと認めてもらわないと幸せになれないという傾向が見えてきます。

 もしもあなたが、マウンティングされる側だけなく、する側にもなっていたかも…という意識がどこかにあるのなら、「羨ましがられたいんだな」「幸せじゃないのかも」と見透かされてしまう可能性もあるので、注意が必要ですね。

<参考文献>
『女は笑顔で殴りあう:マウンティング女子の実態』(瀧波ユカリ、犬上紙子著、筑摩書房)
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授