●アゼルバイジャン独立の際に悲劇が起きた
前回からたびたび、カリモフ大統領と言っていますが、本名はイスラム・カリモフという方です。1991年にいわゆるゴルバチョフ革命があり、旧ソ連が崩壊します。14の民族共和国が手を挙げ、いち早く独立に走りましたが、この時に悲劇が起きています。この10MTVでも、一度アゼルバイジャンの話をしたことがあると思いますが、アゼルバイジャンでは社会学の大学教授が手を挙げ、大変な人気ですぐさま大統領となって「反ソ連」を打ち出したために、とんでもないことが起きてしまいました。
この時はミハイル・ゴルバチョフなのです。ウラジーミル・プーチンではありません。ゴルバチョフは温厚な人といわれており、ノーベル平和賞も受賞しましたが、実はこの時はたちどころに恐ろしいことをしました。アゼルバイジャンにナゴルノ・カラバフという地域があります。日本でいうと近畿地方のようなところで、近畿地方に韓国の方が多いように、ナゴルノ・カラバフにはアルメニア人がたくさん住んでいます。彼らは何百年も前から、ここはアルメニアの土地だから独立したいと言ってきたのですが、アゼルバイジャンが抑えてきた経緯があります。
しかし、この時、ソ連軍がバックアップして、彼らを事実上独立させてしまったのです。そのため、100万人ほどのアゼルバイジャン人がナゴルノ・カラバフから逃避しなくてはならなくなりました。アゼルバイジャン人にとっては心臓を取られるようなつらい思いだったそうで、そのトラウマはいまも続いています。
●オレンジ革命やバラ革命を避けたい
いま中央アジア地域の政府が一番気にしているのは情報で、民衆がいわゆる「言論の自由」を求めてくることを最も恐れています。彼らは、とにかくオレンジ革命やバラ革命のような事態を避けたいのです。
オレンジ革命とは、2004年のウクライナで起きた一連の政治運動のこと。ご存知のとおり、ウクライナは新進の若手政治家がタッグを組んで、「自由を」「民主主義を」と叫び、ロシアから派遣された大統領を争乱で倒してしまいました。それが今日のウクライナ問題につながっています。プーチンが手を突っ込んできて、クリミアを独立させ、東ウクライナを制圧しました。ロシアは、実行しているのは親ソ派だと主張していますが、親ソ派がなぜ戦車や爆撃機を持っているのか。ロシアのマークが付いていないとプーチンはうそぶいていますが、ロシアの武器に違いありません。おそらくは赤軍も入っていると思います。だから、西欧世界は怒っているわけです。
このようにして、民主主義を唱えた途端、プーチンが介入してきて、国は悲惨なことになる。それを絶対に避けなくてはならないのです。アゼルバイジャンの場合は、二人の大統領が失脚させられ、ナゴルノ・カラバフを奪い取られました。その後、国民はイルハム・アリエフ大統領を選ぶのです。アリエフ大統領はもともとアゼルバイジャン共産党のトップで、KGBで鍛えられたわけですから、「ソ連そのもの」なのです。プーチンさんの先輩で、ソ連の副首相にまで上り詰めた人です。彼がロシアとの関係をしっかりと落ち着かせて、息子さんを大統領にさせ、一種の王朝をつくるのです。それから今日まで、政治的には安定した国になっています。
●カリモフ大統領は25年目に入った
ところが、カリモフ大統領はさらにすごい。1991年の革命のときに共産党第一書記だった方で、ウズベキスタン共和国の初代大統領に選ばれ、今日まで続けています。2015年3月に4期目を達成しました。最初、憲法では大統領は5年しか続けてはならないということになっていましたが、二度も憲法を改正し、とうとう25年目に入っています。
政治的にはものすごく安定しています。おそらく情報をコントロールしているのでしょう。カリモフ大統領を批判するような情報は、国内では絶対に流れないようになっていると思います。カリモフさんが大統領職を延長していることに対して、西欧世界はかなり批判的です。当のカリモフさんは「正当に選挙をして選ばれている」と言うのですが、投票率98パーセントで、圧倒的に選挙に勝つようになっているわけです。そういうことが背景にあり、1991年に独立を宣言して、国をスタートさせました。
●皆が「安全」と「安定」を主張する国
ウズベキスタンでは、とにかく皆が強力に、「安全」と「安定」を主張します。何が重要ですかというと、多くの方が「セキュリティー」「セーフティー」と言いました。セーフティーとは何か。2011年に大地震がありましたが、そういう話ではありません。アフガニスタンが隣国にあり、タリバンなどの勢力が入ってくるため、さまざまな事件が起こるのです。以前は特にテロが多かった。ある...