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ウズベキスタン通貨「スム」の交換レートの不透明性

ウズベキスタン訪問に学ぶ(3)通貨、貿易、対日感情

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
肌で感じた現地経済の実態は、どこかモヤモヤした不透明性を持っていた。あってないがごとき公定為替レート。語られない本音。外国企業にとっての数々のリスクと魅力を多面的にレポートし、ウズベキスタンの政治・経済の将来を論じる。千葉商科大学学長・島田晴雄氏によるシリーズ「ウズベキスタン訪問に学ぶ」第3回。(全3話中最終話)
時間:14:09
収録日:2015/08/20
追加日:2015/10/05
タグ:
≪全文≫

●通貨「スム」の交換レート問題


 われわれがウズベキスタンへ来て、「これは何なのだろう?」と感じたことがありました。それは何かというと、通貨レートのことです。ウズベキスタンの通貨単位は「スム(通貨コード:UZS)」といって、今のレートだと、1ドルはおよそ2500スムです。

 ウズベキスタンに入国するときは、どういう通貨を持っているか、いくら持っているか、紙幣か小銭かと、非常に詳しく、全て所定の書類に書かなければいけません。そして出国するときにも、今いくら何を持っているか、その書類を併せて提出しないと出国できません。なぜ、こんなに厳しく通貨管理をしているのかというと、どうやら背景はこういうことのようです。

 通貨レートの実勢価格がどのぐらいか、ということです。これは実は町で分かってしまいます。オフィシャルな通貨の交換レートは2500スムが1ドルですが、どうやら町のレートは、4500スムが1ドルぐらい。つまり、通貨の価値が、実は実勢では半分も評価されていないということです。

 15年ほど前まで、中国には、兌換券と非兌換券とがありました。外国人は兌換券が手にできるので中国元を米ドルと交換できますが、中国人は絶対にできませんでした。中国は、そういう形で維持したのだと思いますが、ウズベキスタンではなぜかできてしまったのです。


●見えてきた二重為替の実態


 だから、例えば、こういうことが起きました。スムは、出国のときにドルに両替できません。ですから、あまり多くスムに換えると、使い切れなかったときに両替できませんから、たくさんスムに換えるのは、あまり得策ではありません。だから、わずかしか換えない方がいい。だけど、町でわれわれがレストランに入ると、ワインなどはとても高価ですから、気持ちよく飲んでいると、もうたちまち足りなくなります。ワインはものすごく高くて、日本で3000円ほどのワインが、1万円ほどもするものですから。そうすると、莫大にスムを払わなければならない。それで手持ちが足りなくなると、通訳さんが「いいですよ、いいですよ」と言って、その場で両替してくれるのです。オフィシャルレートの2500ドルです。そして、おそらく合法的なのですが、この通訳さんは、われわれが帰ってから、町へ出て、おそらく4500スムで両替するのでしょう。

 あまり言うと気の毒ですが、...
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