ウズベキスタン訪問に学ぶ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ウズベキスタン通貨「スム」の交換レートの不透明性
ウズベキスタン訪問に学ぶ(3)通貨、貿易、対日感情
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
肌で感じた現地経済の実態は、どこかモヤモヤした不透明性を持っていた。あってないがごとき公定為替レート。語られない本音。外国企業にとっての数々のリスクと魅力を多面的にレポートし、ウズベキスタンの政治・経済の将来を論じる。千葉商科大学学長・島田晴雄氏によるシリーズ「ウズベキスタン訪問に学ぶ」第3回。(全3話中最終話)
時間:14分09秒
収録日:2015年8月20日
追加日:2015年10月5日
≪全文≫

●通貨「スム」の交換レート問題


 われわれがウズベキスタンへ来て、「これは何なのだろう?」と感じたことがありました。それは何かというと、通貨レートのことです。ウズベキスタンの通貨単位は「スム(通貨コード:UZS)」といって、今のレートだと、1ドルはおよそ2500スムです。

 ウズベキスタンに入国するときは、どういう通貨を持っているか、いくら持っているか、紙幣か小銭かと、非常に詳しく、全て所定の書類に書かなければいけません。そして出国するときにも、今いくら何を持っているか、その書類を併せて提出しないと出国できません。なぜ、こんなに厳しく通貨管理をしているのかというと、どうやら背景はこういうことのようです。

 通貨レートの実勢価格がどのぐらいか、ということです。これは実は町で分かってしまいます。オフィシャルな通貨の交換レートは2500スムが1ドルですが、どうやら町のレートは、4500スムが1ドルぐらい。つまり、通貨の価値が、実は実勢では半分も評価されていないということです。

 15年ほど前まで、中国には、兌換券と非兌換券とがありました。外国人は兌換券が手にできるので中国元を米ドルと交換できますが、中国人は絶対にできませんでした。中国は、そういう形で維持したのだと思いますが、ウズベキスタンではなぜかできてしまったのです。


●見えてきた二重為替の実態


 だから、例えば、こういうことが起きました。スムは、出国のときにドルに両替できません。ですから、あまり多くスムに換えると、使い切れなかったときに両替できませんから、たくさんスムに換えるのは、あまり得策ではありません。だから、わずかしか換えない方がいい。だけど、町でわれわれがレストランに入ると、ワインなどはとても高価ですから、気持ちよく飲んでいると、もうたちまち足りなくなります。ワインはものすごく高くて、日本で3000円ほどのワインが、1万円ほどもするものですから。そうすると、莫大にスムを払わなければならない。それで手持ちが足りなくなると、通訳さんが「いいですよ、いいですよ」と言って、その場で両替してくれるのです。オフィシャルレートの2500ドルです。そして、おそらく合法的なのですが、この通訳さんは、われわれが帰ってから、町へ出て、おそらく4500スムで両替するのでしょう。

 あまり言うと気の毒ですが、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政