●温暖化問題にはいろいろな切り口がある
今日はこれから、「地球温暖化」をめぐる最近の話題を少しお話ししようと思います。最初に、地球温暖化問題とは何かをご説明します。人々が普段話している地球温暖化問題には、実はいろいろな切り口があります。一つは、地表の気候システムに関するエネルギー収支の問題。それから、気候システム内部でエネルギーがどのように分配されるかという問題。そして、地球が温暖化していくことによる社会への影響と、われわれがどのように対応するかという問題の三つがある。これらはしばしば一緒くたに議論されがちですが、分ける必要があります。
気候の問題は、基本的には「気温の問題」です。気温とはエネルギーのことですから、物理法則で考えることができます。多くの物理学にそういった自然法則がありますので、地球全体のエネルギーバランスの問題は、物理的に捉えることができるのです。
●可視光を使うよう、生物の目が進化した
地球全体の気候システムに関するエネルギー構造を考えると、まず全てのエネルギーは太陽から来ています。太陽から入ってくるばかりだと、地球はどんどん温まってしまいます。地球の気候が安定しているのは、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーが釣り合っているからです。一瞬一瞬で釣り合っているのか、それとも1年、10年、100年で釣り合っているのかには議論の余地がありますが、一定の時間の中でバランスしていると考えることができます。
現在、われわれ気象学者が主に考えているのは、地球の表層、地面付近で、地球に入ってくるエネルギーが気候システムの中でどのように分配されるかという問題ですが、それについては後で詳しくお話しします。
太陽はだいたい6000度の物体が対応する黒体放射を出し、そのエネルギーはさまざまな電磁波となって地球に届きます。地球は大気という衣を着ていますが、幸せなことに、太陽光線の大部分は大気の主成分である酸素や窒素に吸収されずに地表に到達します。これは非常に大事なことです。
太陽光線の主な部分を可視光といいます。人の目に見える光という意味ですが、これは逆に、地上に最もたくさん存在する光を使うよう、生物の目が進化してきたと考えるべきです。同じことを海について考えると分かりますが、水蒸気が多くの太陽光を透過させる一方で、液体となった水...