地球温暖化問題~温室効果と異常気象
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イベントアトリビューションで鬼怒川の災害経験を生かす
地球温暖化問題~温室効果と異常気象(2)イベントアトリビューションとは
科学と技術
住明正(理学博士/東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員)
最近は、毎年日本や世界のどこかで極端な気象が起こっているが、その異常気象は地球温暖化によるものなのか。「イベントアトリビューション」という方法を使えば、地球温暖化の影響を計測できると国立研究開発法人国立環境研究所理事長・住明正氏は語る。イベントアトリビューションとはいったい何か。シリーズ「地球温暖化問題」第2回。(全4話中第2話目)
時間:9分25秒
収録日:2015年9月28日
追加日:2015年11月30日
≪全文≫

●異常現象が温暖化によるものとは言えない


 今年の夏は、前半暑かったのですが、お盆を過ぎると途端に涼しくなり、残暑もないまま今日に至っています。それにしても、どうも毎年夏がおかしい。激しい豪雨があり、強い台風がいくつもやって来る。多くの人が、やはり何か最近の気候はおかしいのではないかと思っていることでしょう。事実、毎年日本や世界のどこかで極端で非常に激しい現象が起こっています。

 私は毎回、この異常気象が温暖化によるのかどうかを聞かれるのですが、実はこれに対してはいろいろと研究が進んでいます。その結果、ある現象が温暖化によるかよらないかは一概に言えないことが分かってきました。さまざまなことが起こりえるため、全体を統計的に考えていく必要があるのです。それぞれの天気現象はある変動の幅を持っており、地球の温暖化とはその変動幅、確率分布が変わっていくことだと考えられます。つまり温暖化が進むと、変動幅の平均値が少し上昇する、あるいは確率分布が少し広がってくるのです。例えば、35度以上の暑い日になる確率が高くなる。現在、専門家の間では、温暖化の影響はそのような形で出てくると考えられています。


●イベントアトリビューションで計測する


 地球温暖化の影響を計測する手法として、最近行われるようになってきたのが「イベントアトリビューション」です。ある極端な現象に温暖化の影響がどの程度出ているかを推定する方法で、基本的に統計分布をします。それは、いまのところ、温暖化予測は「気候モデル」という数値モデルを使うのですが、そのとき、一方は温暖化の影響を含めた状態で計算し、他方では温暖化の影響を取り除いた状態で計算します。その二つを比較して、温暖化の影響を見積もるのです。基本的に温暖化の影響は海面水温などに徐々に表れてくると考えられていますから、観測された海面水温から少しずつ上がっている温暖化の影響を除去した場合と、温暖化の影響を入れた場合の計算を比べて、異常気象が起こる確率の変化を研究するのです。

 天気の変化は決まっているものではありません。初期状態のちょっとした変化が、何日か後に非常に大きな変化を生む可能性がある。いわゆるローレンツの「バタフライ効果」が働いています。天気には本質的に「ゆらぎ」をもっていて揺れ動いています。ですから、将来の予測といっても確定的な将来があ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
50代からの親の介護~その課題と準備(1)突然やってくる介護の問題
「親の介護」の問題…優しさだけでは続かない
太田差惠子
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉