●異常現象が温暖化によるものとは言えない
今年の夏は、前半暑かったのですが、お盆を過ぎると途端に涼しくなり、残暑もないまま今日に至っています。それにしても、どうも毎年夏がおかしい。激しい豪雨があり、強い台風がいくつもやって来る。多くの人が、やはり何か最近の気候はおかしいのではないかと思っていることでしょう。事実、毎年日本や世界のどこかで極端で非常に激しい現象が起こっています。
私は毎回、この異常気象が温暖化によるのかどうかを聞かれるのですが、実はこれに対してはいろいろと研究が進んでいます。その結果、ある現象が温暖化によるかよらないかは一概に言えないことが分かってきました。さまざまなことが起こりえるため、全体を統計的に考えていく必要があるのです。それぞれの天気現象はある変動の幅を持っており、地球の温暖化とはその変動幅、確率分布が変わっていくことだと考えられます。つまり温暖化が進むと、変動幅の平均値が少し上昇する、あるいは確率分布が少し広がってくるのです。例えば、35度以上の暑い日になる確率が高くなる。現在、専門家の間では、温暖化の影響はそのような形で出てくると考えられています。
●イベントアトリビューションで計測する
地球温暖化の影響を計測する手法として、最近行われるようになってきたのが「イベントアトリビューション」です。ある極端な現象に温暖化の影響がどの程度出ているかを推定する方法で、基本的に統計分布をします。それは、いまのところ、温暖化予測は「気候モデル」という数値モデルを使うのですが、そのとき、一方は温暖化の影響を含めた状態で計算し、他方では温暖化の影響を取り除いた状態で計算します。その二つを比較して、温暖化の影響を見積もるのです。基本的に温暖化の影響は海面水温などに徐々に表れてくると考えられていますから、観測された海面水温から少しずつ上がっている温暖化の影響を除去した場合と、温暖化の影響を入れた場合の計算を比べて、異常気象が起こる確率の変化を研究するのです。
天気の変化は決まっているものではありません。初期状態のちょっとした変化が、何日か後に非常に大きな変化を生む可能性がある。いわゆるローレンツの「バタフライ効果」が働いています。天気には本質的に「ゆらぎ」をもっていて揺れ動いています。ですから、将来の予測といっても確定的な将来があ...