●適応策への注目が高まってきた
それでは、温暖化に対してどうしたらいいかというと、従来は、いわゆる排出削減を中心とした緩和策が中心でした。基本的にはCO2を出さないようにする。そのためにはどうしたらいいか、ということが中心でした。
それに対して、最近では、適応策をもっと考えるべきだという意見がどんどん強くなってきましたし、現に今回のCOP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)でも、その話が非常に大きな課題になると思います。
では、なぜ適応策が従来あまり議論されなかったかというと、「適応で対処できるのなら、何も削減などしなくていい」という声が上がるのではないかという危惧からでした。これはいわゆるモラル・ハザード(倫理の欠如)と言いますが、「適応できるのなら別にもう何でもいいじゃないか」となってしまうのではないかという懸念があって、あまりそういうこと(適応策の議論)は言わないでおこうという雰囲気でした。
ところが、ここに至って、そんなに簡単に削減は進みませんし、皆、頑張ってはいるものの、「やはり温暖化は避け難い」と、多くの人が考えるようになってきました。そうなると、実際に起きてから、「さあ、どうしましょうか」では間に合わないことが結構ありますので、今の時点から、将来の温暖化に対応してどうすべきか、今のうちから手段を練っておく必要があるという時代になったと言えます。
●緩和策と適応策は車の両輪
また、もう一方、温暖化の問題は、すでに発展をした日本を含む先進国と、これから国づくりをしていく発展途上国との立場の違い、対立だと言われています。発展途上国に発展をやめろとは言えませんので、世界中の全ての国がちゃんとそれなりに新しい国づくりに向かえるような手立てを考える必要があります。そうすると、何はともあれ、やはり開発は避けがたいのです。ですから、国連などでもそうですが、現在では、サステイナブル・ディベロップメント・ゴールズ(持続可能な発展目標)というように、基本的に持続可能な発展をどう展開するかと考えるのが、現在の世界の潮流になっています。そういう持続可能な発展を考える際に、温暖化適応、気候変動に十分考慮して発展性を考えましょうという意味で考えられています。
適応策だけやれば緩和策はしなくていいというわけではなく、当然、緩和策も頑張って...