テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

冷戦は終わったのに基地負担コストをいつまで背負うのか

日本政治の俗説に反論する(3)外交の全体像を描く時だ

星浩
TBSスペシャルコメンテーター
情報・テキスト
戦後日本の歴史は、日米同盟と安保条約抜きには語れない。だが、そのコストとリスクを分かつ関係は時代とともに変質し、抜本的な見直しが求められている。日米同盟の現状と今後の見通しを、星浩氏が明快に解説する。
時間:13:55
収録日:2014/02/14
追加日:2014/04/03
カテゴリー:
≪全文≫

●日米同盟の最初の節目、日米安保改定


今回は少し趣向を変えて、外交問題で、日米同盟の現状と今後の見通しについての話をしてみましょう。
日米同盟には、戦後いくつかの節目がありました。第一に挙げられるのはもちろん、1960年の日米安保改定です。これは現安倍総理の祖父、岸信介首相が実現したものです。
ここではっきりと、日本とアメリカの役割分担がなされました。日本は米軍の基地を提供する。そして、日本が実際に攻められたときには、アメリカが反撃をする。言い換えれば、日本は基地というコストを払い、アメリカは実際の戦闘行為を仕切っていくというかたちでリスクを払う。コストとリスクをお互いに分担し合うということで、日米同盟は成り立ってきたわけです。
とりわけ冷戦時代、アメリカとソ連が角を突き合わせているときは、この日米同盟は非常にうまく機能しました。アメリカは近代兵器をどんどん開発して、ソ連と向き合う。日本は、それをアメリカの後方で支える。最終的には、アメリカはSDIという宇宙兵器の開発にまで乗り出し、ソ連のミサイルシステムを無力化します。結果としては、冷戦という一種の戦いでソ連が敗れ、アメリカが勝利したということになったのです。

●冷戦のもたらした経済的繁栄と政治的腐敗


この冷戦構造は、実は日本に非常な繁栄をもたらしました。つまり、日本は防衛費をGDPの1パーセント以下という非常に少ない額に抑えて、その分を経済発展に費やすことができたからです。そういう意味で、冷戦構造は日本の繁栄を築いた一つの要素でもあるわけです。
しかしまた、この冷戦下の日米安保体制は、ある意味で日本に一つのゆがみのようなものももたらしてきました。
どういうことかと言いますと、アメリカの世界戦略の中で、最優先事項はとにかくソ連と向き合うことだったということです。その典型的な例として、中南米などの諸国に対して、反共国家であればアメリカがテコ入れしたということがあります。
つまり、反共であれば多少の独裁や腐敗は大目に見て援助するというやり方を、アメリカは国益としてやってきたわけです。日本の場合も、ソ連と向き合うことを優先するために、アメリカは日本の反共・自民党体制を支援しました。これは遠い遠い昔ではありますが、CIAの資金が自民党に流れていたということも、一部暴露されております。
亡くなった梶山静六代議士がよく言っていた言葉ですが、「アメリカは、アカ(共産主義)にならなければ腐敗でもいいんだ」と。それがアメリカの基本的な姿勢なのだとよく言われていました。そのような中で、自民党という政権がずっと続いてきたわけです。

●冷戦終了後のグローバル化と基地問題


しかし、冷戦が終わって20年が過ぎた頃、何が起きてきたかというと、グローバル化です。国家間のボーダーが低くなり、いろいろな安いものが日本に入ってきます。共産主義国家がなくなりましたから、いろいろな所のモノと人の交流も進んできます。そうすると、安いモノが入ってきた日本の中では、勢いデフレが起きてきます。
次に生じたのは「なぜ最大の敵であるソ連が崩壊したのに、日本にはアメリカ軍の基地が残っているのか?」という疑問です。とりわけ日本の米軍基地の4分の3が集中する沖縄が焦点となりました。
沖縄の面積は、日本の国土の0.6パーセントだそうです。47都道府県の中でも小さくて、0.6パーセントしかない沖縄に、在日米軍の74パーセントが集中しています。そんな場所で、普天間の飛行場を利用してオスプレイが飛び立ったり、嘉手納ではもうジェット戦闘機が飛び交っているという日常が続いているのです。

●沖縄は基地負担のコストをいつまで背負うのか


「冷戦は終わったのに、なぜこういう基地負担だけが残っているのか?」という疑問がある。さらに、米軍兵による少女暴行事件が起きたりもした。その事態に対する回答を、日本政治はなかなか示していけませんでした。
例えば「北朝鮮が何をするか分からないから」という答えがあります。同国は核開発をしている。ミサイル開発もしているから、北朝鮮をきちんと警戒するために日米同盟が必要なのだという議論がありました。しかし、どう見ても北朝鮮という国にソ連と匹敵するような軍事力があるわけではありません。それにこれは、アメリカがきちんと対応さえすればそれほど脅威ではないわけです。ですから、北朝鮮がソ連に変わる脅威には、どうしてもなり得ない。
現在は「中国が脅威だ」というので、アメリカも日本も警戒の手をゆるめられない、沖縄の基地も必要なのだと言っています。しかし、中国という国の場合は、日本との平和友好条約がありますから、ソ連とは違います。それに、中国の人民解放軍というものは、ソ連がアフガニスタンに進出したような強力なレベルの武力を...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。