●現大統領支持派が圧勝したイランの国会選挙
皆さん、こんにちは。
イランでは、2月26日に国会議員選挙と、イラン独特のものである専門家会議の選挙が行われました。そして、イラン政府から2月28日に国会選挙の中間開票状況が発表されています。
イランの国会は非常に独特な制度を持っているため、選挙後一カ月ほど経てからでないと最終的な議員数が確定しません。その理由は後ほど説明しますが、定員は290人で、そのうち最終的な議席数としてどれほどを保守強硬派が取り、どれほどを改革穏健派が取るのかについては、その後の経緯を待たなければならないということになります。
しかし、首都テヘランにおいては、ハッサン・ローハニ大統領支持派である改革穏健派連合(穏健改革派)が30議席の全てを独占したことが判明しています。また、地方をはじめ、他の選挙区においても、改革穏健派が議席を大きく伸ばす見通しです。
昨年来、米欧との間で核開発の一時停止を定めたウィーン最終合意。それによる経済制裁解除によって外の国々との通商貿易を再開するオープン・ドア・ポリシー。こうしたイラン国政の流れを大きく評価する姿勢が、大統領支持派につながる改革穏健派連合を今回躍進させた理由ではないか。一般的には、このように報じられています。
他方、反大統領派ともいうべき保守強硬派が、これまで3分の2を占めてきた議席を失うことが確実になりました。現在、国会において、わずかに16議席しか持っていない改革派系がテヘラン選出の国会議員数だけで30を独占したことから、今後のイラン政治や外交において、改革派系が影響力を強めることは確実かと思われます。
私は、この1月にイランに行き、テヘラン、エスファハーン、シーラーズを訪ねました。そこで今日は、こうしたイランの直近の国会議員選挙の動向について、現地でつぶさに見てきた状況への印象なども含め、国際政治との関係の中で触れることができればと思っています。
●「専門家会議」の選挙でも改革穏健派が票を伸ばす
日本ではほとんど報道されていませんが、国会選挙と同時にもう一つ重要な選挙が行われています。それは、88人の議席数を持つ「専門家会議」の選挙です。
イラン・イスラム共和国憲法第1条によって、最高指導者すなわちシーア派12イマーム派の最高指導者は、同時にイラン・イスラム共和国の最高指導者になるという構図を持ちます。現在はハメネイ師と呼ばれているアーヤトッラー・ハメネイという人が、その元首の地位にあります。
専門家会議が最高指導者の選出権限を持つため、一般国民が国家の元首を直接選ぶことはできません。この会議に入る資格を厳しく審査された者たちが専門家会議の選挙に立候補し、その中から最高指導者が選ばれるという仕組みなのです。それが今回、国会選挙と同時に行われ、現在判明しているテヘラン地区だけでも、改革穏健派連合が票を伸ばしています。
この連合勢力で主導的な立場を取る人物として一般的に挙げられているのが、元大統領であったハシェミ・ラフサンジャニ氏の名前で、彼はトップで当選しています。また、現大統領のローハニ氏自身ですが、彼はもともと宗教者で、シーア派の職位としてはアーヤトッラーの次にあるホジャトル・イスラームの職階にある人なのですが、やはり上位当選をしていることが確認されています。
いずれにせよ、強硬派候補は劣勢を強いられているというのが、今回の選挙のおおよその大勢です。
●二項対立よりも重要な問題があるのではないか
私は、こうした結果それ自体に対して異議を差し挟むつもりは毛頭ありません。しかし、このように「保守強硬派対改革穏健派」という二項対立の見方を取るだけでいいのかどうか。日本をはじめ、国際的なメディアのほとんどがそのような見方を取っていますが、そのことについても今日は議論してみたいと思っています。
イラン人自身の中で、選挙そのものの仕組みはあらかじめ先述のように設定されている。その中では、イラン・イスラム政治体制についての是非が問われるわけではない。また、最高指導者であるハメネイ氏のこの間の政治的な業績や彼の元首としての資格を審判するわけでもない。そのような選挙というものに参加する意味は、いったいどこにあるのでしょうか。
そして、このように枠組みがあらかじめ設定された選挙において、保守強硬派対改革穏健派という二項対立よりもはるかに重要な問題があるのではないか、ということも言われるわけです。この選挙そのものに参加するかしないか、投票するかしないか、そのことこそが、実は問題の焦点ではないかという意見もあるということです。
●2009年の大統領選挙はイスラム政治体制に対する挑戦だったが
例えば、...