天皇陛下のおことば~ご譲位について考える
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「全身全霊」で悲しみに向き合う、という天皇陛下の生き様
天皇陛下のおことば~ご譲位について考える(3)私たち国民が考えるべき時
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
天皇陛下は8月8日、「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」の中で「全身全霊」という表現をお使いになられたが、これは大変に重いおことばであると、歴史学者で皇室制度に関する有識者ヒアリングのメンバーでもある山内昌之氏はいう。私たち日本人は、日々違う「悲しみ」に向かい合うという過酷な旅、そのご負担を、ご高齢の天皇陛下に強いてきたことになる。天皇のおことばが表明された今こそ、敬愛する天皇皇后両陛下に対し、私たちに何ができるか、真摯に考えるべき時である。(全3話中第3話)
時間:11分35秒
収録日:2016年8月9日
追加日:2016年8月12日
≪全文≫

●「全身全霊」という表現の意味


 皆さん、こんにちは。今回も前回に引き続き、8月8日の天皇のおことばについて、私が感じたことを述べていきたいと思います。

 天皇陛下は、昨年の誕生日で82歳になられました。その記者会見の席上で、天皇陛下は象徴としての任務や義務を果たしていく中で、「老い」、つまり年をお取りになられたことを率直に触れられ、そういった義務や責任を全うできるかどうかについてのお考えにつながるおことばを述べられたことがあります。

 今回のおことばの中で、「全身全霊を込めて」という表現を使われましたが、これは大変なおことばです。私たちの言葉でいえば、「心を込めて全てに接しておられる」ということを意味します。もっと下世話な言葉でいえば、「手抜きをする」あるいは「力を塩梅する」といったことはしない、こうしたことを、「全身全霊」というおことばは意味しています。

 身体障害者(ハンディ・キャップのある人)、自然災害や気候変動などによる被災者・被害者の方たちなど、現に今弱い立場にある幅広い人たちに接するとき、「全身全霊」で、そして「御心」を込めて接することができるかできないか。そのことを心配されていたことに、私たちは等しく感動し、感銘を受けました。

 高齢になったから休みたい、あるいは楽に隠居したい、あるいは少しでも体が楽になるような生活がしたい、といった私たちのような市井の人間、あるいは市民ならば普通に持つ感情とは別の次元で、天皇陛下はご自分の生活や義務について考えておられます。

 心を込めて全身全霊で人々に接することができず、ご自分のお仕事ができなくなるのは、象徴としての国事行為の執行や国際親善活動などのご公務、あるいは様々な理由で弱い立場にある国民への労り、ひいては戦争犠牲者の追悼や鎮魂のお仕事をする上で、相手や関係者に対して失礼になるのではないか、非礼になるのではないか、そういう危惧が込められたおことばだったのではないかと、お見受けします。


●それぞれの「悲しみ」に向き合う天皇


 「心を込めて」といってお見舞いなどをされる場合、あるいはサイパンやパラオ、そして今年のフィリピンなどにおいて、戦争で亡くなった人々や現地で戦争に巻き込まれ亡くなった方々を鎮魂し追悼するという場合、あるいは被災地において様々な被災者にお見舞いするという場合、天皇...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦