●災害地の被害状況調査に、ドローンが活用されている
今度は、私たちの研究室でこれまでに行ってきた、いくつかの活用事例をご紹介しましょう。これは、東京大学とブルーイノベーションが共同で、海岸線の砂の浸食状況をモニターする実験を行ったものです。海岸の様子や波の発生状況を、定期的に、安価に空撮することができました。
また、山の中での植生観察にも、空撮が利用できるのではないかと、実験を行っています。この実験は、東京大学と広島県、三菱電機によって、10年にわたって行われました。上空から精密な写真を撮影することによって、自然再生事業が行われた、広島県八幡湿原での植生の変化を、定期的に観察したものです。
同じような機体ですが、東京大学とブルーイノベーション、早稲田大学は、2011年東日本大震災の際に、津波の被害のあった千葉県の飯岡海岸で、被害状況の調査を行いました。小型のドローンを正確に飛行させることによって、こうした災害状況のモニタリングをいち早く行うことができます。現在、災害地の被害状況調査にドローンが活用されているということは、よくご存じでしょう。
第1回の講話でご覧いただいたAEDの搬送は、ドローンの、物を運ぶという機能の実験でした。さらに2017年3月に、私たちは、国土交通省とブルーイノベーションとともに、長野県伊那市で、道の駅から高齢者の専門住宅まで、物を運ぶという実験を行いました。まだ実証実験の段階ですが、技術と制度を整備することによって、特に物の運搬が困難な被災地や離島、過疎地の物流に、ドローンが貢献するのではないかと期待されています。
●安全上の理由から、ドローンの規制が強まっている
しかし、ドローンの活用については、2015年4月、首相官邸の屋上でドローンが発見されたため、安全上の理由から規制を導入しなければいけないという動きが出てきました。2015年9月には、航空法が改正され、同年12月から施行されています。ドローンが飛行できる空域と、その飛ばし方について規定がなされました。さらに、2016年4月には、国会議事堂などの重要な施設の周辺において、小型無人機の飛行を禁止する法律もできました。
ただ、このように規制が強まる一方、安倍晋三総理は、ドローンによる配送を3年以内に実現すると、2015年11月に明言しています。これを受けて同年12月には、ドローン活用を検討する官民協議会が立ち上がりました。
それでは、現状の航空法は、どのようにドローンの利用法を規制しているのでしょうか。まず、空域に関する規制があります。通常の飛行機が飛行する、高度150メートル以上の空域A、飛行場周りの空域B、そして人口集中地域の空域Cという、3つの空域では、国土交通大臣の許可を得なければ、ドローンを飛行させることはできません。A、B、C以外の空域では、基本的には飛行が可能です。
次に、自由に飛ばせる空域においても、飛ばし方についてルールが決められています。夜間の飛行、見えない場所での飛行、人や物から30メートル以内に近寄った飛行、そして、イベント上空での飛行は、国土交通大臣の承認を得なければいけません。さらに、危険物資の輸送や、農薬散布のような物資投下に関しても、承認が必要になります。
●旅客機とドローンがニアミスを起こしている
実際に、無人航空機がどのぐらい事故を起こしているかというデータは、まだ把握されていません。ただ、アメリカの軍用機については、データがすでに発表されています。2005年では、アメリカの軍用機に占める無人偵察機の割合は5パーセントでしたが、2012年には31パーセントと、その利用は増えました。無人偵察機の事故率は、エンジンが1つの戦闘機F-16と同程度だと言われています。アメリカ軍はこれをもって、無人機だから特別に危ないわけではないと主張しているようですが、やはり無人機も飛行機です。墜落するリスクがあることは確かです。
さらに重大なことは、旅客機とドローンがニアミスを起こしているということです。2014年にはフロリダ空港で、2016年にはロンドンの空港で、ドローンがニアミス、もしくは衝突したという報告があります。また2017年1月、日本でも、新潟県警のヘリとドローンがニアミスを起こしたと報じられました。
ドローンが落下し、死者が出たというニュースはまだありませんが、けが人が出たという報道はあります。2014年、オーストラリアでトライアスロンの選手がドローンと接触し、けがをしました。また同年11月、日本国内のマラソン大会でドローンが落下し、スタッフがけがを負っています。2017年2月には、建設現場で空撮をしていたドローンが、電波障害のため、離陸地点に自動的に着陸する際、クレーンに引っかかって落下し、作業員が負傷したと報じられました。
ドローンの事故報告はま...