●ルール作りの前に、緊急に整備しなければならないこと
ドローンの飛行のためのルール作りについて、説明します。有人の航空機に関しては、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)が、ルールを定めています。以下のように、附属書の1~19条の中で、詳細なルールが決められており、これを各国が批准しています。
Annex1:飛行の免許
Annex2:航空規則
Annex3:国際航空のための気象業務
Annex4:航空図
Annex5:単位
Annex6:運航
Annex7:国籍、登録
Annex8:航空機の耐空性
Annex9:出入国簡易化
Annex10:通信
Annex11: 運航管理
Annex12:事故の際の捜索、および救難
Annex13:事故調査
Annex14:空港施設
Annex15:航空情報
Annex16:環境保護(騒音、大気汚染など)
Annex17:セキュリティー
Annex18:危険物輸送
Annex19:安全管理(セーフティー・マネジメント・システム)
無人の航空機についても、同様のルールをこれから作っていく必要があります。しかし、すでにドローンの利用は始まっています。安全のために、とりわけ緊急に検討・整備しなければならないことがあります。第1に、ドローンの操縦技術や、航空に関する知識、安全管理の知識を、広く普及させなければならないでしょう。私たちが作ったJUIDA(日本UAS産業振興協議会)という団体では、無人航空機のライセンスを発行しています。
第2に、ドローンでは無線が利用されるため、無線の利用者間で、調整が必要になります。遠くまで飛ばすためには、より出力の高い無線が必要になり、2016年8月には、総務省によって新たな無線の利用が認められることになりました。JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)という組織が、利用者間の調整を担うことになっています。
第3に、有人機と無人機の衝突防止が緊急の課題です。日本では有人のヘリコプターが、さまざまな業務で使われています。ヘリは低い高度を飛ぶ場合があるため、有人機と無人機の衝突防止が課題です。最後に第4の課題として、ドローンの基準作りも求められるでしょう。ドローンの基本的な性能がすぐに分かるような、標準を作る必要があります。
●JUIDAはドローンのライセンス認定を行っている
JUIDA(日本UAS産業振興協議会)は、ドローン産業を振興させるための非営利団体として、2014年7月に発足しました。私が理事長を務めています。2017年5月には、会員数が2,200人になりました。これまでの活動としては、安全ガイドラインの策定や、無人機専用飛行場の設置、また、本格的な国際展示会の開催が挙げられます。最近では、利用者にドローンのライセンスを認定するという活動を、積極的に行っています。
ライセンス取得のためには、航空の知識を学ぶ座学に加えて、実際に機体を操縦する技能が求められます。また、一定の技能を持って安全に飛ばす能力があることを認定する、安全運行管理者証明書というライセンスも作っています。
この図は、2017年5月10日時点で、全国の約80校がJUIDAライセンス校として認定され、人材育成に当たっているという状況を示しています。国のライセンスではなく、さまざまな民間団体が、こうしたスクールを開設しているのです。
また、人材育成に関して、若い人の教育も非常に重要になるでしょう。例えば、その一環として、日本航空宇宙学会は飛行ロボットコンテストを主催しています。そこでは、自作の無人小型飛行機を使った競技が行われます。若い学生たちの活動を支援するという目的で、毎年開催され、2017年には第13回大会が開かれる予定です。
●ドローンのさらなる自律化が求められる
長期的課題という意味では、今後、ドローンのさらなる自律化が求められるでしょう。「自律」を英語では「autonomous」と言います。これは「自動」を意味するautomaticとは、意味が異なります。国語辞典によると、「自動」とは、他から力を借りずに自分で動くということです。この意味での自動操縦や自動運転は、現在でもすでに、かなり普及しつつあります。例えば、ドローンが決められた地点へと自ら飛んでいくということは、人の力を借りないでミッションを遂行できるという意味で、自動飛行です。あるいは自動車でも、高速道路を一定の速度で自動運転する機能が、すでに実用化されています。
こうした自動の実用化に加え、さらに自律化が求められるのです。「自律」とは、自分で自分の行いを規制すること、外からの力に頼らずに、自らの規範に従って行動するということを意味します。これは、より高度な自動化だといえるでしょう。
例えば、「自動」飛行しているときに、途中で急に障害物が現れた場合、通常の自動飛行では追突してしまう可能性があります。しかし、障害物を検知し、自分で避けることができれば、これは「自律」飛行です。自動車でいえば、決...