●相互に関係性を持つ二面的、多面的市場モデル
それではプラットフォームビジネスと呼ばれるものの理論的な構造について、経済学的な理解を踏まえつつお話ししたいと思います。
プラットフォームビジネスについては、二面的市場モデル、あるいは多面的市場モデルを用いて理解するのが、最近の経済学の傾向になっています。この二面的市場モデル、あるいは多面的市場モデルは、一つの企業が二面、つまり二つの市場、あるいは多面、つまり複数の市場に直面して、それぞれの市場に財やサービスを提供しているビジネスモデルを指します。このようにいうと、多くの企業がさまざまな製品やサービスを提供しているので、一つの製品に一つの市場が成立しているとすれば、複数の市場を相手にしているという面はほとんどの企業について当てはまるといえるのかもしれません。
ただし、経済学で二面的市場モデルというときには、その二つの市場がある種の関係性を持っているところに着目します。単に複数の市場を相手にしているというわけではなく、これからお話しするような関係性を持っている複数の市場を相手にしているときには複数(多面的)市場モデル、あるいは二面を相手にしているときには二面的市場モデルというわけです。
●市場をまたいで規模の経済性を持つショッピングモール
その関係性というのは、規模の経済性が相互に連携性を持っている市場についてのことです。規模の経済性は、そこで利用者が増えてくると利便性が高まってますます利用者が増える、あるいはそこで(製品が)たくさん作られるとますますコストが下がって安く作れるようになる、という構造を持つことで、通常は一つの財、または一つのサービスについて成り立つものを考えます。しかし、場合によると別の市場で利用者が拡大している、あるいは別の市場でサービスが拡大していることが、こちら側の市場の利便性を高めたり利用者を拡大することがあります。
例えば、ショッピングモールのようなものを考えてみます。ショッピングモールの場合、お店がたくさん集まっていることが出店を便利にするという面もあるかもしれませんが、どちらかというとそこに来るお客さんの利便性を高めます。逆に、お客さんがたくさんショッピングモールに集まってくると、その事自体が出店を考えている事業者にとって大きなメリットになります。つまり、ショッピングモールはお客さんを集める、お客さんに接している市場と出店を促す出店者に対するサービスを提供しているという、広い意味で二つの市場に直面しているわけです。この二つの市場は連携している、つまり関係性を持っているわけです。
お店が増えると利用者が増え、利用者が増えるとお店が増えるという意味で二つのことが、市場をまたいで規模の経済性を持っているというところに、ショッピングモールの大きな特徴があります。
●新聞、テレビも二面的市場モデル
これが二面的市場、あるいは多面的市場モデルといわれているものの大きな特徴です。ですからショッピングモールのようなものは、ある意味でこの二面的市場モデルの典型ということになりますが、実はこのショッピングモールのような特徴を持った市場、あるいはビジネスモデルは世の中にかなりたくさんあります。
例えば、新聞、あるいはテレビも二面的市場の一つだろうといわれています。新聞は読者を相手にしているだけではなく、広告主も相手にしている市場です。読者が増えれば広告が増えるという特徴を持っています。逆に広告が増えると読者が増えるかどうかは、やや疑問ではあります。そういう意味ではショッピングモールとは少し違って、読者から広告という側面だけに規模の経済性が働いているのかもしれません。逆にあまり広告が増えてしまうと、読者が減ってしまうという意味では、負の外部性が働いている可能性もあります。
テレビも似たような構造を持っていて、視聴率が高まる、見る人が増えると広告主が増えて広告収入が増える。逆に広告主が増えると、場合によってはCMが多くなってしまうので、これも新聞と同じで必ずしも視聴者を増やすというわけにはいかないでしょう。いずれにしても二つの市場を相手にしていて相互に関係しているという意味では、ショッピングモールと似たような性質を持っています。
●プラットフォームビジネスの構造的特徴
そして、今日の主題であるプラットフォームビジネスは、実はこの二面的市場、あるいは多面的市場の構造をうまく利用したビジネスモデルであるといえます。なぜでしょうか。そのプラットフォーム事業を利用する消費者、利用者が増えると、そのプラットフォーム上にサービスや製品を提供しようとする人が増える。そのプラットフォーム上にサービスや製品を提供する事業者が増えれば、さまざ...