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脱サラして考えた「日本の農業の未来」

ビジネスとしての農産業~農業×ITベンチャー(1)農業総合研究所ができるまで

及川智正
株式会社農業総合研究所 代表取締役会長CEO
情報・テキスト
日本の農業従事者は年々減る一方で、高年齢化が進んでいる。食料自給率の著しい低下が国力を左右することは誰もが知っている。では誰が何をどうすればいいのか。農業×ITベンチャーで注目される株式会社農業総合研究所代表取締役社長の及川智正氏が「ビジネスとして魅力ある農産業の確立」について語る。(全5話中第1話)
時間:11:17
収録日:2018/01/26
追加日:2018/03/31
≪全文≫

●「農業総合研究所」という名前を付けた理由


 今日は、ビジネスとして魅力ある農産業の確立について、株式会社農業総合研究所代表取締役社長の及川智正がお話しさせていただきたいと思います。

 まず初めに簡単に会社の概要をご説明申し上げます。会社名を「株式会社農業総合研究所」と申します。

 いろいろな方から「何を研究している会社ですか」と、同じご質問をいただきます。申し訳ございませんが、実は研究はしていません。では、なぜ「研究所」という名前を付けたのか。私は、起業家の社長が一番初めにやらないといけない仕事はおそらく会社名を決めるところだと思います。

 まず、会社名を見ただけで、どの業界で仕事をしている会社かが一目で分かるようにしたかったので、漢字2文字で「農業」を入れたいと考えました。もう一つ強調したかったのが、農業は作るだけが仕事ではないということです。野菜、果物、花、お米、これらを作るだけが仕事ではなく、食べるまでをコーディネートすることが農業の仕事、使命ではないかと思ったのです。

 そこで、作るところから食べるまで、全てをコーディネートできるような農業の総合研究所をやりたいという気持ちを込め、「農業総合研究所」という名前で事業を行うことにしたのです。


●農業ベンチャーで初めて上場した農業総合研究所


 創業が2007年ですので、まる10年たちました。代表が私で、ただ今43歳、ちょうど厄の明けた年齢です。また、珍しいのかもしれませんが、和歌山県和歌山市に本社を構えています。

 さて、8月31日を「野菜の日」と呼んでいますが、この日をわれわれは決算日としました。2017年の8月31日で売上高が約17億円という規模になっています。また、「流通総額」と呼んでいる数字は70億円になります。流通総額とは、末端のスーパーマーケットさんで野菜や果物が売れた金額を指します。弊社は、70億円分の野菜と果物を流通させて、手数料だけを売上に計上しています。この手数料17億円=粗利益という会計方法を取っているわけです。いわゆる「プラットフォーム業」として、楽天などと似たような会計になります。全国に150名ほど社員がおりまして、そのうち90名が正社員です。和歌山県の他に東京の品川と新大阪に営業所を構えて商売をさせてもらっています。

 そして、少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、野菜や果物を集める拠点を「集荷場」と呼んでいます。現在、弊社は全国に集荷場を72拠点構えています。一番北は北海道の芽室、一番南は沖縄県の石垣島で、この拠点を通じて毎日野菜や果物を集める仕事をしているのです。

 72拠点には、登録いただいている農家さんが現在約7200名います。この農家さんと拠点を活用して、国内外約1100店舗のスーパーマーケットさんの中に、われわれのコーナーを構え、毎日野菜や果物を供給するのが、仕事の中身です。

 ちょうど2年ほど前の平成28年6月16日に、東証マザーズに上場しました。非常に狭い業界ではありますが、「農業ベンチャー」というくくりの中では初の上場企業が農業総合研究所といわれています。

 農業総合研究所を一言でいうとどんな会社かといいますと、「農業×ITベンチャー企業」です。ITを駆使して、クリエイティブに新しい農産物流通プラットフォームを創造し続ける会社が農業総合研究所なのです。


●大学時代にレポートした「日本の農業の未来」


 ここまでの話を聞かれて、「あれ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。「本社が和歌山県にある会社なのに、言葉が関西っぽくない。東京っぽい、関東っぽいぞ」と。その通りで、実は私、東京生まれ、埼玉育ちです。そんな私がなぜ和歌山県でこの会社をやっているのか、簡単にご説明したいと思います。

 私は東京農業大学の農業経済学科出身です。卒論では、当時のデータを使って、日本の農業が将来どうなるかを調べる研究に取り組みました。そうすると、10年後、50年後、100年後、今とまったく同じ傾向が続くことが分かったのです。つまり、農業をやる方はどんどん減っていく。平均年齢はどんどん上がっていく。耕作放棄地が増えて、食料自給率が右肩下がりに下がっていく、というデータが出てきました。お恥ずかしい話ですが、大学時代、それほど勉強しなかった私が少し調べてみただけで、日本の農業には、悪い未来しか見えてこなかったのです。

 皆さんの多くはきっと「農業は日本の国の礎となる産業だ」と思われていることでしょう。私も、その通りだと思っています。礎となる産業が衰退していくのは良くないことですから、社会に出たら、農業もしくは食糧関係の仕事に就こうと考えました。ところが、大学を出たのがちょうどバブルのはじけた年で、思い通りの環境には恵まれません...
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