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世界から農業が衰退しない仕組みを作りたい

ビジネスとしての農産業~農業×ITベンチャー(5)農業の未来のため

及川智正
株式会社農業総合研究所 代表取締役会長CEO
情報・テキスト
株式会社農業総合研究所代表取締役社長の及川智正氏が事業展開の広がりを通して、農業の未来について語る。今、農業総合研究所はさまざまな企業、機関と業務提携をして可能性を広げている。その背景には、関係者の多くが「農業はもうからない」と考えている現実と、このままでは農業そのものが衰退してしまうという危機感がある、と及川氏は言う。(全5話中第5話)
時間:07:00
収録日:2018/01/26
追加日:2018/04/25
≪全文≫

●企業や行政との提携で可能性を広げる


 われわれが運営しているのは現在72拠点で、そこで野菜や果物を集めています。ただ、この72拠点全てを直営ではやっておりません。直営が22拠点で、残りの50拠点は集荷場ということで地元に根づいた会社さんに野菜や果物を集める仕事をお願いしています。どんな会社にお願いをしているかといいますと、例えば和歌山県に近い兵庫県には神姫バスというバス会社さんがいるのですが、その会社が地方で空いている倉庫を借りてわれわれの代わりに地元の農家さんの野菜や果物を集めています。そこにわれわれが販路と物流とITのプラットフォームを提供するということをやらせてもらっています。

 その他、淡路島ではパソナさん、奈良県では近鉄の子会社の近畿配送サービスさんにお願いをしています。また、茨城県では鴻池運輸さん、長野県では佐川急便さん、秋田県では地方卸売市場さんにお願いしています。

 面白いところでは、愛媛県と高知県は日本郵便(JP)さんと業務提携をしているので、郵便局を集荷拠点にして農家さんが郵便局に野菜や果物を持ち込むスタイルでやっています。さらに面白いところでは、実は愛知県と岡山県はJAさんと業務提携をしています。JAさんに野菜や果物を持っていくとJAさんの市場にも出すこともできるし、JAさんの道の駅で売ることもできます。そして、われわれにも出荷できます。つまり1カ所になれば、いろいろな選択肢を持つことができるという仕組みなのです。この仕組みを、全国のJAさんとも業務提携をして広げさせていただいています。

 その他の仕事として、コンサルティング業も少し行っています。今いろいろな企業さんから農業に参入したいが参入の仕方が分からないという声があるので、われわれがサポートに入って参入方法や、生産、流通、販売の部分に関わるお手伝いをしています。

 あとは行政ですね。国や都道府県、あるいは市町村などと一緒になって地方創生という切り口でいろいろな農業のコーディネートをしています。さらに、全国の地銀さんと業務提携をして、その地元の農業を活性化するという仕事をやらせてもらっています。


また、海外への輸出もたくさんしています。今、経産省のクールジャパン機構と一緒に世界市場という子会社を作って、香港向けに輸出が簡単にできるプラットフォームを開発しています。また、JALさんとの業務提携で空いている貨物の部分を活用できるため、国内外の物流に使わせてもらったりしています。

 ということで、われわれだけではできない部分はいろいろなところと業務提携をして、農業ビジネスをどんどんどんどん新しく開発、開拓していっているのです。


●「世界から農業が衰退しない仕組み」作りを使命に


 農業総合研究所はいろいろなことをやる会社です。ただ、農業をトータルグランドデザインすることが農業総合研究所の使命ではないかと思っています。われわれのビジョンは「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」ということです。私自身、自分で農業をやりました。その中でJAさんにも行って市場さんにも行って仲卸さんにも行って、そして自分で八百屋さんもやりました。今、スーパーマーケットさんとお取引をすると皆さんから同じような声を聞きます。それは「野菜や果物はもうからない。農業はもうからない」という声です。

 資本主義の世の中で、「もうからない」というのはどういうことか。おそらく農業は「ありがとう」をあまり言われていない産業なのではないでしょうか。本当に「ありがとう」を言われていないのであれば、衰退していくべきではあるのですが、そうではありません。農業は日本だけでなく世界の人々の心と胃袋を満たす産業だと私は思っています。よって、未来において、日本から、そして世界から農業が衰退しない仕組みを作っていきたいと思って立ち上げた会社が農業総合研究所なのです。

 その中ではいろいろな農業があってもいいと思います。家庭菜園、自給自足、有機栽培など、いろいろあってもいいと思うのですが、先ほど言ったわれわれのビジョンを達成させるために、ミッションとしてわれわれの会社ではビジネスに特化していこうと考えています。ビジネスとして魅力ある農産業を確立することによって日本から、世界から農業が衰退しない仕組みを作っていきたいのです。


●「情熱」を合言葉にプラットフォーム業を極めたい


 農業総合研究所ではこれから本当に時代を先駆けるスピード感を持って、リスクを恐れずチャレンジ精神を持って、...
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