●年間1000億人が自家用車以外の手段で移動している
今回は、自動運転の技術にまつわるこれからのビジネスについて、その可能性を検討したいと思います。
2018年の時点における自動車の市場規模としては、新車が年間1億台ほど生産されています。その中で最も大きいシェアを持つ自動車会社は、そのうちの10パーセントほどのシェアとなります。つまり、毎年1000万台ほど新車を生産しているということです。つまり、毎年1000万台前後で、販売台数1位をめぐって非常に有名な自動車会社同士が争いを繰り広げているのです。
では、こうした自動車の市場がこれからどのように変化していくのでしょうか。ここで面白いのは、必ずしも自動車を何台売るといった世界ではなくなるということです。つまり、シリーズの最初の方で解説をしたように、自動車を個人が所有する時代から利用する時代へ進んでいくとすると、何台売れたという競争よりも、何人が乗ったかという競争の方が市場での価値が高くなってくるということです。
正確な数字は分からないですが、現在の世界において自分の車ではない何かで移動している人の年間の人数を見てみます。ここでは、1人の人間が毎日タクシーに乗ったときには、この1人の人間を365人とカウントしますが、そうすると1000億人ほどになります(上表:世界のモビリティ利用者数参照)。この人たちが利用しているのは、電車かもしれませんし、バスかもしませんし、タクシーかもしれません。あるいは、カーシェアかもしれません。いずれにしても正確な数字を把握することは難しいのですが、1000億人ほどいるとすると、自動車の販売台数と比べるとかなり大きい数字です。
この1000億人という数字は、自動運転の自動車市場でビジネスを考える場合において、必ず把握しておくべき数字です。現在は、1億台の新車が毎年生産されていて、1000億人が自分の車ではない何かで移動している時代なのです。
●モビリティ革命によって自動車販売市場が縮小する
以上のような現在の状態から、自動運転の実用化によって自動車を個人で所有するのではなく利用するようになったとします。これはよく「モビリティ革命」と呼ばれていますが、その場合、どのような市場の移り変わりが考えられるでしょうか。
先の表は、何かの根拠があって出した数字ではな...