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サッカー型と野球型の入れ替えが組織のポイント

LINE流イノベーティブ思考術(2)ソフトと組織

森川亮
C Channel株式会社 代表取締役(元LINE株式会社代表取締役社長)
情報・テキスト
「日本でも独自のイノベーションを起こせる可能性はまだまだ数多く見つけられる」とLINE株式会社代表取締役社長CEO森川亮氏は語る。何が日本企業の強みなのか。イノベーションを起こせる組織はどのようにつくっていけばよいのか。議論は深まっていく。(全5話中第2話目)
時間:17:57
収録日:2014/05/14
追加日:2014/06/19
≪全文≫

●既存分野の境界でイノベーションが起きている


―― 森川さんは、最終的にいつも、顧客を見ればよいのだ、顧客が一番大事なのだという原点に辿り着かれます。個人的にはその点が本当にすばらしいと思います。

森川 会社も人も、社会に新しい価値を提供し続けなければ生き残れません。そのためには、今、世間にはどのような価値が存在するかをきちんと理解して、その上で常に世の中の半歩先、一歩先を提案しなければなりません。しかし、今の日本の古い企業組織では、多くの人が社会よりも上層部を見て、組織のヒエラルキーの中でどのように生きていくかを考えてばかりいます。同様に、学問の世界には学会という古い組織があって、その中で皆が上下関係を意識していますし、官僚も同じ仕組みです。このようなヒエラルキーの塊の中から新しいものを生み出すのはなかなか難しいでしょう。新しいことに挑戦するとラインから外れてしまい、再び戻ることができません。多くの人がそのリスクを取れないまま、組織にしがみつき前例を踏襲してしまうのです。そのような組織の仕組みや考え方を壊す必要があります。

―― 今、元駐タイ大使の岡崎久彦さんが国会議員を集めて勉強会を開いていまして、ここ何回かはイスラム史がご専門の山内昌之先生をゲストに呼び、日本史の講義をしていただいています。昨日が2回目で、北畠親房『神皇正統記』を扱いました。ちなみに1回目は『吾妻鏡』、次回は『徳川実紀』です。岡崎さんがすごいのは、あえて日本史の先生ではなく、ロシア帝国とオスマントルコに挟まれたイスラムの世界からものを見ている人に日本史の講義をお願いしているところです。山内先生は、日本文化の見方が普通の人とは全然違います。あの講義を見て、外交官だった人のやり方はさすが画期的だと思いました。おそらく日本史専攻の人にお話しいただいても、あれほど面白くはならないと思います。まず古代史の人は古代、中世史の人は中世、近代史の人は近代のことしか話さないでしょうから。それだとつまらない。しかし、彼らは少しでも自分の領域をはみだしてしまうと弾かれてしまいますから、なかなか領域外のことは話してくれません。

森川 最近、イノベーションが数多く生まれているのは、学際的な領域です。例えば、私たちに近いところでは、生物・化学・バイオテクノロジーなどの領域と、ロボットやコンピューター、特にビッグデータが結びつくところに大きな可能性があります。ですから、大学なら横断的な学部や組織をつくり、会社ならテレビ事業部とコンピューター事業部といった異なるカンパニーを融合して、既存の領域の境界をまたぐ形で組織をつくることが重要だと思います。個人もおそらく、技術だけではなく、テクノロジーとアート、運動と音楽など、まったく異質なものを組み合わせることで新しい発見ができるのではないでしょうか。

●日本人は本来、「ソフト」に強い人々だ


―― 以前、日本企業が海外で成功するために大事なのは、デザインやマーケティングだとお話しされていました。このことは、今の話とつながるように思うのですが。

森川 もちろん技術は大事ですが、日本の場合は技術一辺倒の人も多く、技術さえ優れていれば理解ある人々は皆買ってくれる、技術が分からない人は買わなくてもよいと考える風潮が多少あるように思います。そのように考える人を否定するつもりはありません。ただ、日本人は、本質的には技術が価値に置き換わる「ソフト」の領域に強い人々だと思います。例えば、日本人がサービス業や飲食業を得意とするのは、細やかなヒューマンタッチのサービスを理解し、実行できる人が多いからでしょう。これはまだ機械が再現できない高度な領域ですから、活かさない手はないのではないでしょうか。

―― もともと持っている強みをもっと活かしたほうがよいということですか。

森川 そうです。強みを尖らせるのです。おそらくサービス業においては、日本以上の国はないのではないかと思います。この点は、世界中の人が認めてくれるはずです。しかし、テクノロジーに関していえば、もちろん特定分野では日本に分があるのですが、一方でアメリカも強いですし、最近は中国も著しく伸びています。ですから、ソフトやサービスという強みにフォーカスして、そこに技術を組み合わせて新しい価値をつくっていくべきです。そうすれば、日本でも独自のイノベーションを起こせる可能性はまだまだ数多く見つけられるはずです。

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