●富士山の噴火は3種類あり得る
3回目の今回は、富士山が噴火するのかどうかというお話をします。
結論からいうと、綺麗な格好をしている富士山ですが、これは将来的には必ず噴火をします。明確にいつ噴火するとは言えませんが、そう遠くない将来、必ず噴火します。
富士山が噴火する場合、基本的にはマグマ噴火なのですが、いろいろなタイプの噴火が考えられます。まず、一番左の写真のように、マグマのしぶきを数百メートルぐらいまで噴き上げて小山をつくり、その小山の麓から溶岩流がドロドロと流れ出すというタイプの噴火があり得ます。次に真ん中の写真のように、非常に爆発的な噴火が発生する可能性もあります。これは1980年に発生したアメリカのセント・へレンズ山の写真ですが、これと同じような非常に爆発的な噴火もあり得るわけで、そうなると噴煙を数万メートルまで噴き上げる可能性もあります。最後に一番右の写真ですが、富士山でも火砕流が出たことが地質調査で確認されています。このように、いろいろなタイプの噴火が起こり得ると考えています。
●最近までの3200年間における富士山の噴火を調査
富士山が何回くらい噴火したかということを、最近までの3200年間にわたって数えた調査があります。この図で横軸に書いてあるのは、噴出物の量です。ですから、右に行くほど噴火の規模が大きくなります。縦軸の方は同じ規模の噴火が起こった回数です。
図の一番右の「貞観」というところを見ると、これが歴史上最大の噴火になり、この規模の噴火は一回しか起こっていません。少し左に行ったところに「700」と書いてありますが、この宝永の噴火における噴出物の量が7億立方メートルです。この規模の噴火もまた、一回だけということになります。
この図から全部で何回の噴火があったのかを見てみると、100回あります。3200年間に100回の噴火があったということは、平均で約30年に1回噴火をしていることになります。それが、1707年の宝永の噴火以来、300年間も噴火をしていないのです。つまり、平均的な休止期間の10倍の期間がたっているということです。そういう意味でも、富士山はいつ噴火してもおかしくないということになります。
それから、この図の左の方を見ると、2000万立方メートル以下の噴火が圧倒的に多く、八割方がここに集中していることが分かります。このことから考えますと、統計的には次の噴火は小規模噴火、つまり2000万立方メートル以下の噴火になる可能性が高いといえます。
●休止期間が長いと爆発的な噴火になりやすい
次の図を見てください。この図は、世界中の火山で噴火の前にどれくらい休んでいたかという、噴火の休止期間を横軸に取っています。縦軸の方は、第2話で説明した火山爆発指数(VEI)です。これは、ゼロから上に行くほど大きな噴火ということになります。縦軸の一番上は、火山爆発指数6以上の噴火を全部まとめています。
これを見てすぐに分かることは、VEI 5以上の噴火は噴火の前に大体100年以上あるいは1000年ほど休んでいるということです。逆に規模の小さい噴火にはさまざまな休止期間のものがあります。ですから、大規模で爆発的な噴火の場合、その前の間隔が長いということがこの図からいえます。また、長く休んで噴火すると大規模で爆発的になりやすいということが考えられます。
ですから、富士山の噴火は確率的に小規模噴火になる可能性が高いのですが、300年ほど休んでいることを考えると、次の噴火は大規模で爆発的なものになる可能性もあると思っておいた方がいいということになります。
●宝永噴火では1万メートル以上の高さまで噴煙が上った
富士山の火山爆発指数5の噴火の例として、300年ほど前(1707年)の宝永噴火を見てみます。宝永噴火は、山頂からの噴火ではなく、絵のように突然山腹に穴が開いて、爆発的な噴火が始まりました。
この噴火は16日間続きました。その時に毎日どのくらい高く噴煙が立ち上ったかというと、実際には誰も観測してはいないのですが、それを残された堆積物から推定したのがこの図になります。最初の噴火は12月16日にあったのですが、高さ2万キロメートル以上まで噴煙が立ち上りました。
この時の噴火は元旦の未明まで続いたのですが、実際に噴煙が高く上がったのは、12月30日までの約2週間です。この間、1日ぐらい休むことはあっても、ほぼ連続的に噴煙が1万メートル以上まで立ち上りました。高さ1万メートル...