幕末・維新史を学ぶ~英傑たちの決断
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条約勅許問題…井伊直弼の「無勅許調印」の背景とは?
幕末・維新史を学ぶ~英傑たちの決断(2)孝明天皇と井伊直弼
落合弘樹(明治大学文学部教授)
通商条約締結をめぐる政局では、孝明天皇の条約拒絶と井伊直弼の動きがポイントとなる。大老として幕政を握った井伊は、将軍継嗣問題で対立する一橋派を弾圧するが、桜田門外の変で命を落とす。(全6話中第2話)
時間:12分45秒
収録日:2018年8月20日
追加日:2018年11月1日
≪全文≫

●通商条約締結に向けた幕府の動き


 今回は、孝明天皇と大老・井伊直弼というテーマでお話しします。幕府がアメリカとの間で和親条約を締結し、その結果、アメリカの船が下田と函館に来るようになりました。それから後に長崎が加わります。また、ロシアとも同じような条約を結びます。しかし、アメリカにとって和親条約は、あくまで第1ラウンドにすぎません。第2ラウンドは通商条約、つまり貿易をすることがアメリカの本来の目的だったのです。

 そういった中で、アメリカはタウンゼント・ハリスという人物を、公使として日本に派遣します。彼の使命は、日本に通商条約を結ばせることでした。ハリスは粘り強く幕府の担当者と交渉したのですが、それに対応したのが、佐倉藩の殿様であった堀田正睦でした。堀田正睦は、勇退した阿部正弘に代わって老中の首座についていたのですが、非常に開明的な人物でした。また、非常に深い海外の知識を持っていた人物で、彼の下についていた藩士の中には、順天堂大学の基礎をつくった佐藤泰然などがいました。それ故、通商条約を結ぶことは、これはやむを得ないという考え方を持っていたわけです。

 そこで、堀田老中も阿部老中の方針を引き継いで、政治については本来、幕府が単独で決めるべきという考えもある中、大名に諮ったわけです。しかし、そこではいろいろな意見が出て、堀田老中は完全にまとめきることができませんでした。そこで、堀田老中は京都に上がって天皇の許可を求めようとしたのです。


●将軍継嗣問題における一橋派と幕閣主導派の対立


 また、この通商条約の問題と並んで当時の日本国内で横たわっていた問題が、次の将軍候補を誰にするかという、将軍継嗣問題でした。当時、13代将軍である徳川家定は、非常に病弱でした。島津家出身の篤姫と結婚したのですが、なかなか子どもに恵まれませんでした。跡継ぎが決まらないまま将軍が死んでしまうと、幕府にとっては非常な緊急事態になります。

 そこで、早いうちに次の将軍を決めようという議論が出てくるわけです。仮に従来の決め方を踏襲するならば、今の将軍に子どもがいない場合、一番血筋が近い人から選ぶことになります。そうすると、家定から見て一番近い血筋は、紀州藩主だった慶福という人物でした。しかしながら、今や日本は未曾有の国難に直面しています。そういった段階では、徳川一門の中で一番賢...

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