幕末・維新史を学ぶ~英傑たちの決断
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
廃藩置県…急進的な中央集権化を新政府が断行できた理由
幕末・維新史を学ぶ~英傑たちの決断(5)廃藩置県の断行
落合弘樹(明治大学文学部史学地理学科専任教授/博士(文学))
版籍奉還や各藩への財政改革要求などを経て断行された廃藩置県。落合弘樹氏によれば、それが明治初期の中央集権化のポイントだという。その背景には、西郷隆盛というカリスマ的存在があった。(全6話中第5話)
時間:13分15秒
収録日:2018年8月20日
追加日:2018年11月1日
≪全文≫

●明治初期の郡県制と封建制の併存~中央集権化への障壁~


 今回は、廃藩置県についてお話ししたいと思います。

 徳川幕府が崩壊し、江戸が東京に改められて、天皇は東京にうつるわけです。政府の中枢はそういう形で固められていきます。しかし逆に、地方の状況は非常に複雑になっていました。

 この当時の地方は、府・藩・県に分けられていました。まず、かつての三都である東京・京都・大坂は、府に位置付けられました。大阪府と京都府は今でも府として残っています。東京は、昭和の初めに、東京府と東京市を一体化して、東京都になります。次に、かつての徳川家の直轄地である天領、それから旗本たちが持っていた土地は、県にまとめられます。こういった府や県には、東京から長官が派遣されて、政府が直接に統治するいわゆる直轄府県が成立するわけです。

 しかしながら、かつての大名領は、藩という形を取るため、藩は引き続き大名とその家臣たちが治めていました。これはつまり、中央から長官が派遣される郡県制と、地元の有力者が統治を委託される封建制が、併存していたことを意味します。封建・郡県とは、中国の古代の政治体制を指す言葉です。こういったように、集権化が推進される一方で、大名の権限が依然として強く残っていました。こういった状況を改善しない限り、天皇の下に権力を集中することができないのです。


●藩の段階的な解体~版籍奉還と各藩への改革要求~


 そこで、この府・藩・県を一体化して、政府が全国津々浦々に政令を浸透させるためには、藩の廃止が絶対に必要だったのです。しかし、藩というと、これは旧大名家つまり200年以上の主従関係に基づく強固な組織でした。それだけでなく、軍隊まで持っていますから、それを簡単に解体するのは非常に難しい。したがって、段階的な解体が図られるのです。

 どういう形を取ったかというと、まず版籍奉還という措置です。これは、日本の君主は天皇であり、全ての日本人あるいは全ての日本領土は天皇の下に属する。これを大名たちが私することはおかしいという論理に基づいて、土地と人民を天皇に大名たちが返上するわけです。その代わり、かつての大名は、知藩事という形で地方長官に位置付けられ、藩士たちは、知事の下で執務を執るお役人になりました。こうして、大名およびその家臣は、天皇の臣下という形に位置付けられることになっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
戦国合戦の真実(1)兵の動員はこうして行なわれた
戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
中村彰彦
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(6)東條内閣で行われた行政改革
悲惨な末路につながった東條英機内閣での兼職と省庁再編
片山杜秀
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾