世界を変えた「フラッシュメモリ」
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非常識な発想に基づく開発は、非常に合理的だった
世界を変えた「フラッシュメモリ」(4)貫いた「非常識」
佐々木健一(NHKエデュケーショナル 特集文化部 特集事務局 シニアプロデューサー)
NAND型フラッシュメモリの開発には、さまざまな障壁があった。それを乗り越えられたのは、舛岡富士雄氏が当時の常識からすれば全く「非常識」な考えを持ち、その信念を貫き続けたからだ。また、そこには社内の重要な支援者の存在もあった。(全5話中第4話)
時間:15分55秒
収録日:2018年10月19日
追加日:2019年1月11日
≪全文≫

●就活生の前で「非常識」な大見栄を切る


 今回は、舛岡富士雄さんが貫いた「非常識」についてお話ししたいと思います。

 まず、フラッシュメモリ開発の歩みを、もう一度おさらいします。舛岡さんの開発チームは、1980年にフラッシュメモリの基本特許を出願しました。84年には、最初のフラッシュメモリである並列のNOR型フラッシュメモリを発表します。まだ、舛岡さんが事業部に勤めていた時代でした。87年には、NAND型の直列フラッシュメモリの特許を出願します。これは、総合研究所時代へ舞い戻った時でした。そして90年に、NAND型の試作品デバイスが完成します。こうした流れで開発が進んでいきました。

 元部下の作井康司さんによると、ようやく試作品ができた頃、就職活動で東芝を訪ねてきた大学生に、舛岡さんは次のような話をしていたそうです。

「君ら、ジョギングしながら音楽を聞きたいか? 今、開発しているNAND型フラッシュメモリを使えば、耳掛けイヤホンタイプで音楽が聴けるようになる」

 当時の携帯用テープレコーダーやCDプレーヤーは、走りながら聞くと音飛びしたり、サイズも大きいものばかりでした。しかし、舛岡さんは、携帯デジタル音楽プレーヤーが存在しない時代にその登場について語っていたのです。「こういう時代が来るぞ」と夢を語り、就活生をこの世界へ引き込もうとしていたのです。

 しかし、この時のNAND型フラッシュメモリの試作品は、容量が4メガほどで、音楽でいえば1曲入るかどうかという状態でした。

 ところが、舛岡さんの大言壮語はそこで終わりません。さらに、すごい話を就活生にしていたのです。それは、「NAND型フラッシュメモリが将来、ハードディスクと置き換わる!」というものでした。

 この発言がいかに「非常識」か、ピンとこない人もいると思うので後ほど解説しますが、それを横で聞いた作井さんは、「あ~、言っちゃった。ジョギングしながら音楽を聴ける話までで止めておけば良いのに、そこまで言ってしまったよ」と思ったそうです。


●「フラッシュメモリがハードディスクに取って代わる」とは?


 少し当時の状況をご説明します。スライドの「メモリヒエラルキー」というのは、半導体業界で有名なグラフです。縦軸はデータをやりとりする際の速度...

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