世界を変えた「フラッシュメモリ」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
非常識な発想に基づく開発は、非常に合理的だった
世界を変えた「フラッシュメモリ」(4)貫いた「非常識」
佐々木健一(NHKエデュケーショナル シニアプロデューサー(TVディレクター/ノンフィクション作家))
NAND型フラッシュメモリの開発には、さまざまな障壁があった。それを乗り越えられたのは、舛岡富士雄氏が当時の常識からすれば全く「非常識」な考えを持ち、その信念を貫き続けたからだ。また、そこには社内の重要な支援者の存在もあった。(全5話中第4話)
時間:15分55秒
収録日:2018年10月19日
追加日:2019年1月11日
≪全文≫

●就活生の前で「非常識」な大見栄を切る


 今回は、舛岡富士雄さんが貫いた「非常識」についてお話ししたいと思います。

 まず、フラッシュメモリ開発の歩みを、もう一度おさらいします。舛岡さんの開発チームは、1980年にフラッシュメモリの基本特許を出願しました。84年には、最初のフラッシュメモリである並列のNOR型フラッシュメモリを発表します。まだ、舛岡さんが事業部に勤めていた時代でした。87年には、NAND型の直列フラッシュメモリの特許を出願します。これは、総合研究所時代へ舞い戻った時でした。そして90年に、NAND型の試作品デバイスが完成します。こうした流れで開発が進んでいきました。

 元部下の作井康司さんによると、ようやく試作品ができた頃、就職活動で東芝を訪ねてきた大学生に、舛岡さんは次のような話をしていたそうです。

「君ら、ジョギングしながら音楽を聞きたいか? 今、開発しているNAND型フラッシュメモリを使えば、耳掛けイヤホンタイプで音楽が聴けるようになる」

 当時の携帯用テープレコーダーやCDプレーヤーは、走りながら聞くと音飛びしたり、サイズも大きいものばかりでした。しかし、舛岡さんは、携帯デジタル音楽プレーヤーが存在しない時代にその登場について語っていたのです。「こういう時代が来るぞ」と夢を語り、就活生をこの世界へ引き込もうとしていたのです。

 しかし、この時のNAND型フラッシュメモリの試作品は、容量が4メガほどで、音楽でいえば1曲入るかどうかという状態でした。

 ところが、舛岡さんの大言壮語はそこで終わりません。さらに、すごい話を就活生にしていたのです。それは、「NAND型フラッシュメモリが将来、ハードディスクと置き換わる!」というものでした。

 この発言がいかに「非常識」か、ピンとこない人もいると思うので後ほど解説しますが、それを横で聞いた作井さんは、「あ~、言っちゃった。ジョギングしながら音楽を聴ける話までで止めておけば良いのに、そこまで言ってしまったよ」と思ったそうです。


●「フラッシュメモリがハードディスクに取って代わる」とは?


 少し当時の状況をご説明します。スライドの「メモリヒエラルキー」というのは、半導体業界で有名なグラフです。縦軸はデータをやりとりする際の速度...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新