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フラッシュメモリの歴史は「非常識なアイデア」から

世界を変えた「フラッシュメモリ」(2)誕生秘話・発明編

佐々木健一
NHKエデュケーショナル シニアプロデューサー(TVディレクター
概要・テキスト
フラッシュメモリは、意外にも「性能を悪く」して生まれたものだった。当時の業界からすれば、あまりに“非常識”な発想で、受けいれられるものではなかった。しかし、その発想をきっかけに、メモリ業界に革命を起こしていくこととなる。(全5話中第2話)
≪全文≫

●フラッシュメモリは、「性能を悪く」したものだった


 今回から、「フラッシュメモリ誕生秘話」を2回に分けてお届けします。まずは「発明編」です。

 フラッシュメモリは、具体的に何がすごかったのでしょうか。舛岡富士雄さんは、次のように語りました。

「性能を悪くしたのです」

 かなり疑問ですよね。なぜ「性能が悪い」ことが「すごい」のでしょうか。これは、フラッシュメモリを理解する上で、非常に重要なポイントです。

 私は文系ですので、また例え話でこのことを分かりやすくご説明します。まず、メモリ(記憶領域)というものが従来、どのような形のものだったかをご紹介します。


●従来のメモリと「フラッシュメモリ」の違い


 フラッシュメモリが登場する以前のメモリの構造は、土地や不動産に例えると、碁盤の目のようになっているのが普通でした。縦横に“◯丁目◯番地”という表示板があるようなイメージです。それが、一つ一つの回路、部品に付いている感じです。

 どこか一箇所を書き換えたい時は、特定の“番地”を指定して書き換えを行います。つまり、「書き換えたいところだけを書き換えられる」のです。これは、すごく便利ですよね。

 一方、舛岡さんはまず、1980年に「フラッシュメモリ」の原理的なアイデアを思い付きます。このフラッシュメモリの“概念”を思い付いたことが非常にすごいことなのですが、その内容は次のようなものでした。

 これは、従来の碁盤目状のメモリの形です。

 それに対して舛岡さんが考えたのは、先ほどのように碁盤目状に細かく分かれたものではなく、地域単位、つまり、それぞれが“小さな町”のようになっている構造です。細かな縦横の番地でなく、ブロック単位で土地が区切られている、ざっくりした大きな区分けです。

 この場合、書き換えはどのように行われるのでしょうか。書き換えたい場所がある場合、まず、その“町”を丸ごと他の場所へ一旦コピーします。そこでコピーした先のデータの書き換えが行われます。

 コピー元の、もともとあった地域(町...
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