不便益システムデザインの魅力と可能性
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「のらカフェ」は「不便益×食」から生まれたアイデア
不便益システムデザインの魅力と可能性(7)不便益の意義と発想方法
川上浩司(京都先端科学大学教授)
「不便益」という考え方は近年、大きな注目を集めている。日本で唯一のインダストリアルデザイナーの全国組織である日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)では、2017年から連続して学生コンペのテーマに不便益を設定している。「おそうじカレンダー」や今では町でよく見かける「のらカフェ」などが提案されているが、そこでは美しさや機能性だけではなく、不便益という視点を取り入れることが必要とされているのだ。(全7話中第7話)
時間:9分40秒
収録日:2020年12月8日
追加日:2021年6月4日
≪全文≫

●近年、注目を集めている「不便益デザイン」


 このように私は、学生たちなどとさまざまな場所でデザインワークショップをして新しいアイデアを考えたりしています。

 実は、日本インダストリアルデザイナー協会という日本で唯一の工業デザイナーの全国組織が、関西ブロックで学生コンペをやっており、そこのテーマにもこの不便益を取りあげてもらっています。

 つまり、工業デザイナーのように新しい物事を編み出して、それを世に問うことを生業にしている人たちが、将来を担う学生にぜひ知っておいてほしい概念の1つとして、不便益に注目してくれたというわけです。その結果、2017年のテーマは「不便益なデザイン」でした。


●「おそうじカレンダー」と「ReminDoor(リマインドア)」


 その時に出たデザインを少しだけご紹介すると、例えばこの左の「おそうじカレンダー」です。

 ぱっと見で分かっていただけると思うのですが、左側にあるのは、コロコロです。普通のコロコロは一面べったりと糊が印刷してありますけれども、この「おそうじカレンダー」は部分的に糊が印刷されていません。そうすると、掃除をするときにその糊がついたところはゴミで汚れますが、ついていないところは白く浮き上がります。そこに、その日の日にちが浮き上がるというものです。

 これは何が不便かというと、掃除を毎日しなくてはいけません。掃除を忘れると日にちがずれてしまうからです。さらに、1日に掃除を2回してはいけません。2回以上すると、日にちがずれるからです。それから、「今日は何日だったかな」と思い出そうとすると、普通はスマホか何かをカチッとポケットから取り出せば今日の日付が分かりますけれども、これは掃除をしないと何日だったか分かりません。そのような不便なデザインになっています。

 しかし、スマホなどでパチっとポケットから取り出して今日は何日か確認しても、「ふんふん」とそのときには覚えた気になって、10分もすると「あれ?何日だったかな」と忘れてしまうことがあると思います。なぜなら、それは簡単すぎるからです。この「おそうじカレンダー」は「今日は何日だったかな」ということを確認しようと思ったら、お掃除しなくてはいけません。このちょっとした労働で、「何日だった...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
億万長者への道(1)お米屋さんから不動産業界へ
「背広を着てビジネスがしたい」との思いから宅建取得
高橋誠一
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子