敗者の戦後~毛利家と吉川家
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
関ケ原の合戦後の吉川広家の美談が残るのは吉川家側のみ
敗者の戦後~毛利家と吉川家(1)毛利家、吉川家それぞれの関ケ原後
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
関ケ原の戦いにおける「敗者の戦後」に焦点を当てたシリーズレクチャー。歴史の解釈には往々にして色付けがされるが、勝者だけでなく敗者も自らの正当化のためにそのような行為に及ぶものだと語る山内昌之氏。関ケ原の戦い後、敗者でありながら政治的に生き残った毛利家と、その一員であった吉川家を例に、敗者の戦後について論じる。(全2話中第1話)
時間:13分58秒
収録日:2018年12月26日
追加日:2019年2月18日
≪全文≫

●毛利家に見る「敗者の戦後」


 歴史というものは、しばしば露骨に改ざんされます。そして、その解釈に色が付けられるということが、往々にしてあります。しかし、歴史を露骨に改ざんせずとも、その解釈に潤色を加えるのは勝者だけとはかぎりません。時に敗者も、自らの政治選択や軍事的敗北について弁解するために、歴史を修正することがあります。

 例えば、私が『文藝春秋』に連載中の「将軍の世紀」との関連でいえば、関ケ原の戦いの後、敗者はどうなったのかという大変興味深い問いを、私は持っています。関ケ原の戦い後も敗者という形で残りながら、しかし、政治的に生き残った勢力の一つとして毛利家があります。毛利の一員を構成した吉川広家は、戦争中に関ケ原における主将であった毛利秀元を参戦させることなく、また、大坂城に立てこもっていた主人の毛利輝元を、徳川と対決させることなく戦場からひき、そして、大坂城から退去させた最大の功労者でした。

 この「功労者」とは、徳川家康から見てのことであり、石田三成や豊臣秀頼といった西側の人間たちからすれば、ある意味で非常に悪質な裏切者であったと言うことができるかもしれません。


●徳川からの恩賞を毛利本家に譲った吉川広家


 吉川広家は自らの恩賞として、徳川家康から長州藩(今の山口県)の領国である長門と周防を与えられたにもかかわらず、この二つの自分に対する恩賞を改易寸前の毛利本家に譲ったという話が伝えられています。これは誠に美談というべきものです。『寛政重修諸家譜』という江戸時代後期の史料に記載されているところによると、慶長5(1600)年10月3日に家康は毛利輝元の所領を全て召し上げ、関ケ原の恩賞として広家に防長二州を与えると伝えました。

 すると、この『寛政重修諸家譜』における広家の言葉を借りると、「広家ひとり上賞をかうぶらんは、宗家を捨て一身の栄をむさぼるに似たり。義にをいて安んじがたし」と述べたとあります。そして、この二国二州を輝元父子に賜うように懇願したというのです。このように史料にあります。

 すると家康は、「十日ふたたび広家をめされ、広家一己の栄をむさぼらず、ひとへに宗家をたてんことを願ふ、貞信の志深く感じおぼしめすところなり」、すなわち10月10日に広家を再び呼んで、「広家は自分一人の栄誉栄華をむさぼらず、ひたすら毛利宗家をたてることを願ってい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
歌舞伎の魅力とサバイバル術…市川團十郎の歴史から考える
堀口茉純
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
これから必要な人材と人材教育とは?(2)AI時代に必要とされる能力
AI時代に必要なのは「問いを立てる能力」…いかに育成するか
柳川範之
高市政権の進むべき道…可能性と課題(4)外交力と防衛力の強化へ
求められる「能動的サイバー防御」、問われる本物の外交力
島田晴雄
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編(2)『唯信鈔文意』と方便法身
阿弥陀仏は無限の光だ…親鸞の『唯信鈔文意』の教えとは?
賴住光子
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(4)「適用拡大」で貧困老人をなくす
日本の転勤はおかしい…非人間的な制度の最たるものだ
出口治明