●銀河系の形は薄い円盤状であり、太陽系は中心から離れた位置にある
「現在の宇宙の姿」をテーマにした講義の第3回です。今回は、「天の川と銀河系」というお話をします。
第2回目で説明しましたように、われわれの太陽は銀河系と呼ばれるたくさんの星の集団の中にあります。この銀河系の姿を最新の観測データで表したものが、上のスライドの左側の図になります。
銀河系を横から見ると、全体としては薄い円盤のような形をしています。例えていえば、目玉焼きを2枚作って、底面を貼り合わせたものを想像しても良いでしょう。銀河系を正面から見ると、円盤内にきれいな渦巻き模様が見えて、中心には棒のような構造があります。太陽系は、中心から少し離れた渦巻き腕の中にあります。真横から見ると、太陽は円盤の中で中心からかなり離れた位置にあります。
●光を遮る星間物質と、太陽系からの星の見え方
スライド右側の中央の写真は、銀河系と同じような集団(NGC 891)を真横から見たものです。黒い中心の帯がくっきりと見えています。黄色く見えているところは、無数の星が輝いているところです。黒い帯は、濃い塵(ちり・ダスト)とガスが集まっているところです。星と星との間の空間にはガスが満ちていて、そのガスの中にダストがあります。このダストとガスを合わせて、「星間物質」と呼びます。宇宙にある塵(ちり)、ダストというものは、家庭の塵とかほこりとはちょっと違います。イメージとしては、蒸気機関車の煙突から出る黒煙を想像していただくのが良いかと思います。この黒煙の中には、ススという固体の微粒子がたくさん混じっています。それに類した状況になっていると考えてください。
銀河系とダストの関係は、スライド右上に写真を載せている、「どら焼き」をイメージしていただくと分かりやすいと思います。このどら焼きの餡(あん)が、黒いダストを含むガスになります。この餡(あん)の中にも星はあるのですが、ダストに遮られて光が届かないので、黒く見えているわけです。
これを、もう少し模式的に説明してみます。スライド右下の図を見てください。円盤の中に星がたくさんあり、太陽系が左の端近くにあります。銀河系の中には星が無数にあるわけですが、太陽系から円盤の赤道面(銀河面)の方向を見ると、ダストがあるので遠くまで見通せません。どら焼きでいえば、餡(あん)に遮られている状況です。
ところが、赤道面からちょっと上の方向を見れば、ダストによる遮光が弱まるため、星がたくさん見えるということになります。しかし、さらにもうちょっと上を見ると、星の分布領域から外れますので、また星はあまり見えなくなります。円盤から垂直な方向を見ると、星は非常に少なくなるのですが、ダストの影響も少なくなるため、銀河系の外側の宇宙が見えるわけです。
●天の川は、銀河系を内側から真横に見た姿である
最近は、この銀河系のことを、「天の川銀河」と呼ぶことも多いです。それはなぜでしょうか。上のスライドは、今まで説明してきた銀河系を、天球面と合わせたイメージで描いた鳥瞰図になります。円盤の中心から離れた渦巻き腕の中にある太陽系からこのように銀河面に近い方向をみると、そこから見えるたくさんの星が天球面に投影されて、天の川になっているわけです。また、銀河面にぴったり沿った方向を見ると、ダストで遮られて星が見えないので、それが天の川の中心の黒い帯として表れるわけです。
この銀河系には、1000億個の桁の恒星があるということが分かっています。さらに星の他にも、ガスとダストからなる星間物質もあるわけです。このように見ると、天の川というのは、銀河系の円盤に沿った方向を見てたくさんの星が空(天球面)に投影された姿、つまり銀河系を内側から真横に見た姿なのです。銀河系のことを天の川銀河とも呼ぶのはこのためです。
●銀河系の天体を見てみる
天の川銀河は、1000億個の桁の星と星間物質からできていてる、さまざまな天体があります。星の集まりである星団(球状星団・散開星団)、輝くガスが集まった星雲、ダストとガスが濃く密集した暗黒星雲というような天体があります。これらの天体は銀河系の中にある天体ですから、空の上でいえば、上の図に示す青色破線の楕円形の中です。このようなところを望遠鏡で詳しく見ると、天体がよく見えてくるわけです。これから、銀河系のさまざまな美しい天体のうち、典型的なものを見ていきます。
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最初は、清少納言が「枕草子」の中で「星はすばる」と愛でた...