●天の川にある謎の物体の正体は?
銀河系(=天の川銀河)ですが、電波で見ると天の川は上の画像のように見えます。可視光で見た場合と比べると、大きく様相が異なります。確かに天の川は輝いて見えるのですが、可視光で見えたときに比べ、さらにはっきり映ります。可視光の場合、ガスやちりなどが集積した場所が黒い筋のようにあり、星の光を隠すため、見え方が異なるのです。
電波で見た場合、こうしたものは全くありません。なぜかというと、電波は透過能がとても高く、銀河系(=天の川銀河)を透けて見せているからです。ここでお見せしたのは、周波数408メガヘルツの電波写真です。
この天の川自体はとても興味深い対象なのですが、それ以外、例えばここ天の川の上部分に、ひょうたん形をしたものがあります。
拡大してみると、得も言われぬ形をしたものであることが分かります。
今、私は慶應大学の日吉キャンパスにいるのですが、ここから富士山を見たときに比べて、このひょうたん形は富士山よりも大きく見えます。
ここに満月の大きさとの比較もありますが、ひょうたん形はそれよりもはるかに大きいのです。これは何なのでしょうか。
さらに中心部分を拡大してみると、その中心には何やらまばゆく輝いている点状のものがあり、その点状のものから両側に細く吹き出ているものがあるということが分かります。
この部分を可視光の写真で見てみると、資料内の右画像のようなものであることが分かります。これは実は、「NGC5128」という1300万光年かなたにある楕円銀河です。そして、その中心核はとても明るく輝いており、中心核の両側から電波のジェットが出ています。
こうしたものを「活動銀河中心核」といいます。電波ジェットは電波でまばゆく輝くため、ご覧いただいている天体は「ケンタウルスA」とも呼ばれます。これはケンタウルス座において、電波で最も明るい天体という意味です。
このケンタウルスAは、活動銀河中心核を持つ楕円銀河であり、電波ジェットを持っています。その電波ジェットが、日吉から見た富士山よりも大きく見える、それくらい長大なものなのです。これは何なのでしょうか。
●中心には超大質量ブラックホールを持っている
現在の理解では、これは活動銀河中心核という範疇の天体であり、中心に超大質量ブラックホールを擁する天体であると理解されています。この超大質量ブラックホールとは、太陽の数百万倍から数百億倍もの質量を持ったブラックホールのことです。このように巨大なブラックホールにガスが落ち込む際、そのガスの重力エネルギーが解放されます。
重力エネルギーとは位置エネルギーのことです。例えば、地球上で物を落とすと壊れますが、これは重力エネルギー解放の結果です。ブラックホールにガスを落とすと、落ちる過程でガスの粒子同士がぶつかって、ガスは加熱されます。加熱されて高温になったガスは熱放射を行います。それによって光っているものが、このような活動銀河中心核と呼ばれる天体であると考えられています。
●角運動量と降着円盤
ブラックホールに物質を落として重力エネルギーが解放される場合、その明るさは簡単な式で書くことができます。画面に示したものがその式です。12分の1×効率×M(ドット)×c2という式です。
Mのドットとは、単位時間当たりに、ブラックホールにどれだけの質量を落とし込んでいるかという「質量降着率」を表しています。ですから、この値が大きければ大きいほど、活動銀河中心核はまばゆく輝くことになる、つまり明るくなるのです。
この活動銀河中心核に物質を落とし込む状況を考えてみましょう。物質は、ブラックホールに対して完全に対称に分布しているわけではないので、落ち込むときには常に若干のアンバランスさがあります。そうすると、この若干のアンバランスさが落ち込む際の回転運動を生みます。
これを「角運動量」というのですが、その角運動量が邪魔をするため、重力中心に物を落とし込むのは実は困難なのです。そのため、落ち込む際にガスは円盤の形を成します。これを「降着円盤」といいます。この降着円盤でガスは温められ、強烈な放射を行います。
画面左下の図はその模式図です。こうした降着円盤が発達することで、重力エネルギーが効率的に解放されるのです。
そして、降着円盤の中で物質がさら...