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地球がブラックホールに吸い込まれることはあり得るか?

ブラックホールとは何か(8)質疑応答編

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
情報・テキスト
地球がブラックホールに飲み込まれることはほとんどあり得ない。しかし、ブラックホールが近づいてきた際、人類は間接的にしかそれに気付くことができないだろう。今回は、シリーズ講義収録後に行った岡朋治氏への質疑応答編である。(全8話中第8話)
時間:05:51
収録日:2018/10/31
追加日:2019/05/14
ジャンル:
キーワード:
≪全文≫

●地球がブラックホールに飲み込まれることはまずあり得ない


―― 地球がブラックホールに吸い込まれることはあり得ないのでしょうか。

岡 ブラックホールに地球が吸い込まれるかというご懸念に関しては、「まず大丈夫だ」と答えられると思います。というのは、今のところ、地球のすぐそばにブラックホールはないからです。

 またブラックホールがあったからといって、必ずしも吸い込まれるとは限りません。例えば、太陽は地球を引き寄せていますが、吸い込むことはありません。地球は太陽の周りを回っていますが、これはケプラー運動として非常に安定しています。地球はその軌道での運動をずっと続けているのですが、ブラックホールの周りも同様なのです。

 そのため、地球がよほど真正面からブラックホールに迫らない限り、ブラックホールに吸い込まれることはありません。向こうからやってきた場合は危ないかもしれませんが、それほど密度は高くないため、その可能性は非常に低いのです。

 偶然当たる確率も、おそらく計算することはできますが、少しだけ「かする」程度であれば、全然問題ありません。問題になるのは、ブラックホールの半径の3倍よりも内側に入ってしまった場合です。そこから内側に入ってしまうと、吸い込まれてしまいます。逆にいえば、そこに入らなければ大丈夫です。

 ブラックホールの半径は「シュワルツシルト半径」といわれており、ブラックホールの質量に比例します。例えば、銀河系(=天の川銀河)の中心核にある、いて座A*のブラックホールは400万太陽質量であり、そのシュワルツシルト半径は約0.1天文単位であるとされています。太陽から地球の間の10分の1ほどです。

 地球が400万太陽質量のブラックホールに吸い込まれるとすれば、この3倍(0.3天文単位)よりも内側に入ってしまったケースです。ただ、まずないでしょう。


●ブラックホールが星を吸い込むと、輝きを放つのか


―― ブラックホールが星を吸い込んだ際、輝きを放つのですか。

岡 輝くことは十分考えられます。ただ、そのときにどうやってその重力エネルギーを解放するかというのが問題です。いて座A*に落ちていく雲の例で分かったのは、これが非常に難しいということです。雲が落ちていくことで輝くだろうと思っていたら、全く何も起きなかったからです。

 今の理解では輝いて欲しいというところですが、何とも言えないですね。


●野良ブラックホールに吸い込まれそうなら間接的に観測できるかも


―― 野良ブラックホールが近づいてきても、人類はそれに気付かず、ある日吸い込まれているという可能性もあるのでしょうか。

岡 ありますね。「あっ」みたいな感じで、あると思います。しかし、ブラックホールの中に入った人はいるのかもしれませんが、出てきていないので、どうなっているのかは誰も知りません。出てくることができて、「こうでしたよ」と言ってくれる人がいれば良いのですが、今のところいません。

 ただ、何か間接的な方法で「変なものが近づいているぞ」ということが分かれば、吸い込まれている状況を認識できるかもしれません。例えば、「最近、火星の軌道、ゆがんでいない?」とか、間接的な証拠で何かが来ていることが分かれば、ひょっとしたら対処のしようがあるのかもしれません。対処のしようといっても、逃げるぐらいしかありませんが。どうやって逃げましょうかね(笑)。


●ブラックホールに近づくと、外よりも時間の流れが遅くなる


―― ブラックホールに入ると時間が遅くなり、スローモーションのようになるという話を聞いたことがありますが、本当でしょうか。

岡 そうですね。一般相対論の式をそのまま信じるとそうなります。しかし、ブラックホールについていえば、そのあたりがとても難しい問題になります。

 ブラックホールに近づけば近づくほど、時間の流れが遅くなるのは確かです。しかしそれは、ブラックホールから離れたところに比べての話です。そのため、そこにいる本人は多分感じないでしょう。ただその間に、外の世界でものすごく時間が進んでいることになります。

 確か映画の『インターステラー』でもありましたよね。ブラックホールに近づいて、少し作業して帰ると、地球ではもう何100年もたっているというような状況です。ただ、ブラックホールの中は、難しいですね、想像もつきません。


●地球が最後を迎えるのは、太陽が赤色巨星化する50億年後


―― 地球が最後を迎えたらどうなるのでしょうか。

岡 「地球が最後を迎える」というのは、「地球が崩壊することがある」ということですかね。地球自体は安定しているので、それだけで崩壊することはありません。

 ただ、外的要因で崩壊することはあり得ます。例えば、ブラックホールが降ってくるというようなこと...
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