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ブラックホール研究は何の役に立つのか?

ブラックホールとは何か(7)基礎科学研究の社会的意義

岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
概要・テキスト
2016年に重力波が検出されたことにより、超大質量ブラックホール形成のシナリオの立証に着々と近づいているなど、ブラックホール研究の展望は明るい。ではこうした基礎科学研究の社会的意義とは何か。(全8話中第7話)
時間:10:27
収録日:2018/10/31
追加日:2019/05/07
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●重力波の検出とブラックホールの形成


 話は変わりますが、2016年にあるイベントが巷をにぎわせました。重力波の検出です。重力波は、私の目が黒いうちは検出されないだろうとタカをくくっていましたが、いきなり検出されて驚きました。

 ここに挙げたのは2例です。両者とも、ブラックホールの合体に伴う重力波の放射であることが分かっています。この重力波のシグナルから、非常にきれいなモデルができており、これを解析することで、どのような質量のブラックホールが合体し、その結果どのような質量のブラックホールができたのか、というところまで計算できます。

 このブラックホールの合体がどこで起きたかということも分かっています。この2例は、かなり遠い宇宙にある銀河の中で起きた、ブラックホール合体イベントであると分かっています。これを観測したのは、「Advanced LIGO」という重力波観測装置です。現在のところ、重力波イベントは6例が観測されています。

 そしてその6例のうち、5つがブラックホールの合体に伴うものだと見なされています。この事実に、私たちは非常に興奮しています。なぜかというと、ブラックホールは合体するということが観測されてしまったからです。つまり、これは恒星質量ブラックホールが合体して中質量ブラックホールへとなっていくさまを見ているということです。

 言い換えれば、大枠として、恒星質量ブラックホールが合体して中質量ブラックホールになり、さらにその中質量ブラックホール同士が合体して超大質量ブラックホールになるという筋書きのうち、一部が完全に見えるようになったということです。それゆえ、ブラックホールの成長に関していえば、ここ数年で急激に研究が進んだといえます。


●野良ブラックホールが本当にブラックホールなのか確認するために


 これで終わりかというと、そんなことはありません。確かにここまでお話しした通り、銀河系(=天の川銀河)内のブラックホール候補天体として、野良ブラックホールがいくつか見つかり、ほとんど見えていなかったものが見え始めています。また、銀河中心部分で中質量ブラックホールの候補が発見されました。そして重力波も検出され、ブラックホールは合体成長した結果、銀河中心核の超大質量ブラックホール...
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