●ブラックホールの定義
それではここで、先ほどから話に挙がっている、「ブラックホールとは何か」についてお話ししたいと思います。
ブラックホールとは何なのでしょうか。少しインターネットで調べてみると、いろいろな答えが出てきます。例えばウィキペディアでは、「極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体である。」と書かれています。デジタル大辞泉では、「強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することが出来ない天体。」とあります。百科事典マイペディアでは、「重力が強いため、光を含めいかなるものもそこから脱出できない面(<事象の地平面>と呼ぶ)が存在する天体。」とあります。
微妙な違いはありますが、どれも同じようなことを言っています。つまり、あまりに重いために、光すら出てこられなくなった天体のことを、「ブラックホール」と呼んでいるのです。
●ブラックホールはどうやってできるのか
ではブラックホールはどうやってできるのでしょうか。このことは恒星の一生に関する理解の枠内で説明されています。恒星とは、自分自身の核燃料を燃やしながらエネルギーを生成して光っている天体のことです。これは「星間分子雲」と呼ばれるところで生まれます。分子雲は、分子の形をしているガスが濃密になっている領域です。
その濃密な領域の中で、重力が勝って収縮を始め、それが星になるといわれています。星の形態をなしたものは、最初は「原始星」と呼ばれます。原始星の段階ではまだ質量の降着、収縮は止まっていません。
原始星の中心で核反応に火がつき、質量降着が止まったところで星は「主系列星」と呼ばれるものになります。この段階が一番長いのですが、主系列星は、中心のガスを核反応で燃やしながら、軽い元素をどんどん重元素へと合成して進化していきます。
そして、この進化が進むと、中心での核燃料を使い果たします。そうすると、なかなか燃えにくくなっていきます。水素がヘリウムになり、ヘリウムが炭素になり、重くなればなるほど核反応や重合する反応に必要な温度が高くなっていきます。
そのため、燃えない状態のコアが残ります。その結果、コアと外層部によって構成されるものになります。そのうち、外層部は膨張します。これを「赤色巨星」といいます。赤色巨星にもいろいろありますが、赤くて膨張した星です。
その赤色巨星がとても重い星だった場合、最後に大爆発を起こします。「超新星爆発」というものです。このとき、何が起きるかというと、中心のコアが鉄のコアになります。鉄は、それ以上、核融合反応で燃えません。燃えないというのは、中でエネルギーを発することができないということです。エネルギーを発することができないため、中で圧力を保つことができないのです。
そして外側には膨大なガスがあります。このため、中心にある鉄のコアはつぶれざるを得ません。これがぐっとつぶれた後、中で中性子のコアが残る場合があります。それを「中性子星」といいます。
しかし、つぶしたところに中性子のコアが残らない場合もあります。これは星の質量が非常に重い場合に相当するのですが、その場合、できるコアも重く、そのコアが中性子だけでは支えきれません。
その場合はもはや、現在私たちが理解している物理では、その星は支えることができず、完全につぶれるしかありません。これが、ブラックホールになると考えられています。大体太陽の30倍以上の質量を持った星が、進化の最終段階にブラックホールを残すと考えられています。
●ブラックホール候補天体:はくちょう座X-1
このブラックホールの候補天体として、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、「はくちょう座X-1」という天体が非常に有名です。はくちょう座X-1は、はくちょう座の周辺にあります。
実は、はくちょう座X-1と呼ばれる前は「HDE226868」という、とてもマイナーな星の一つで、変光星として知られていました。しかし、X線で観測すると、異常に明るい天体であるということが分かったのです。
どうしてこの変光星が強烈なX線を放つのか、当然問題になりました。与えられた答えは次のようなものです。
すなわち、普通の星とまた別のコンパクトな重力源からなる近接連星系である、と考えられたのです。距離は太陽系から6100光年にあるもので、連星系の片方はとてもコンパクトです。
主星からガスが落ち込んでおり、コンパクトな重力源の周りにできた降着円盤でガスが加熱されています。重力エネルギー解放に...